デキストラン40は膠質浸透圧に基づく独特の作用機序により、血漿量の持続的な増加効果を発揮する 。本剤はデキストラン40の有する膠質浸透圧に基づく水分保持機能により、血漿量を効果的に増加させる 。コロイドによる血中滞留時間の持続により、血漿増量効果が長時間にわたって維持される点が特徴的である 。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00013512
血漿膠質浸透圧を維持することにより循環血漿量を確保し、循環血液量を安定的に増加させる機能を有している 。動物実験において、脱血成犬に本剤を投与した結果、血圧、心拍数、股動脈血流量の改善維持効果が認められ、循環動態の安定化に寄与することが確認されている 。
参考)https://www.carenet.com/drugs/category/blood-substitutes/3319505A2020
イヌを用いた出血性ショックモデルでは、本剤投与後6時間まで循環血液量が脱血前血液量の95%以上を維持し、優れた循環血液量の回復維持効果が実証されている 。
参考)https://www.carenet.com/drugs/materials/pdf/180079_3319554A4043_1_05.pdf
低分子デキストランは赤血球表面の負電荷を増強し、特異的な赤血球凝集解離作用を発揮する 。ヒト赤血球を用いたin vitro試験において、デキストラン40は赤血球表面の負電荷を増強し、強力な赤血球凝集解離作用を示すことが明らかになっている 。
動物実験では、ウサギの肝臓に形成した血管内赤血球凝集を効果的に解離し、末梢血流を劇的に改善することが実証されている 。デキストラン40の血中濃度が1.5g/dL以上の場合、赤血球凝集阻止効果をもたらし、末梢血流の改善効果を示すことが確認されている 。
赤血球凝集現象は臨床的に外傷をはじめとする種々のショック状態において見られ、凝集により末梢組織の血流が阻害されて組織壊死を引き起こす可能性がある 。通常の代用血漿の注入や輸血によって循環血液量を増やし血圧を回復させても、末梢循環は改善されないが、低分子デキストランによりこの問題を効果的に解決できる 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/iryo1946/21/1/21_1_18/_pdf/-char/ja
デキストラン40は術後ショック患者の血液粘度を顕著に低下させ、血流動態の改善に重要な役割を果たす 。血液粘度低下作用は日本薬局方デキストラン70注射液及び乳酸リンゲル液よりも優れた効果を示すことが証明されている 。
低分子デキストランの投与により、ヘマトクリット値が低下し、全血粘度も低下傾向を示す重要な効果が認められる 。血小板凝集においても、AA凝集が低下し、ADP凝集も低下傾向があり、血小板停滞率にも低下傾向が確認されている 。
参考)https://niigata-u.repo.nii.ac.jp/record/24905/files/100(1)_10-13.pdf
💡 興味深いことに、低分子デキストランは赤血球の血管凝集を防止し、解離してショックによって障害された末梢循環を改善する二重の利点を有している 。高ずり速度領域では、赤血球がずり応力によって変形して流動抵抗を減らすため、血液の粘度がさらに低下する現象も観察されている 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsma1939/27/2/27_2_139/_pdf/-char/ja
デキストランは血栓症の予防および治療において優れた効果を発揮し、線溶系を活性化させて血栓予防、溶解作用を示す 。通電法により両大腿動脈血栓を作成したヒツジを用いた試験において、デキストラン40は血栓予防および溶解効果を示すことが実証されている 。
参考)https://www.shirasagi-hp.or.jp/goda/fmly/pdf/files/597.pdf
静脈血栓症において、低分子デキストランは循環を改善させ、浮腫を減退させる効果を発揮する 。急性疼痛白股腫の際に特に著効が認められ、デクマロールやヘパリンに反応しなかった症例にも効果を示している 。
⚠️ ただし、リンパ停滞による浮腫は低分子デキストラン治療により増大する可能性があることを認識しておく必要がある 。低分子デキストランは腎臓、肝臓の血流を増加させ、肝・腎機能を改善させるため、急性腎不全患者の治療としても有効性が報告されている 。
デキストラン使用において最も注意すべき重篤な副作用として、ショック、急性腎障害、過敏症が挙げられる 。血圧降下、脈拍異常、呼吸抑制等が現れた場合には、直ちに投与を中止し、適切な処置を行う必要がある 。
参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=3319554A4043
デキストランには止血機構障害作用があることが知られており、その機序は血小板の粘着能や凝集能の抑制、血小板コーティング作用によるものと考えられている 。大量投与または連用により出血時間延長、出血傾向が生じる可能性があり、慎重な監視が必要である 。
禁忌事項として、うっ血性心不全患者では循環血液量の増加により症状が悪化するおそれがあるため投与してはならない 。低張性脱水症患者においても、水分量を増加させることになり症状が悪化する危険性がある 。
参考)https://meds.qlifepro.com/detail/3319536A3022/%E4%BD%8E%E5%88%86%E5%AD%90%E3%83%87%E3%82%AD%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%B3%EF%BC%AC%E6%B3%A8
🚨 特に重要な注意点として、アミノ糖系抗生物質(カナマイシン、ゲンタマイシン等)との併用により腎毒性が増強される可能性があり、脱水条件が加わると腎毒性がより増強されるため、乏尿など腎に異常が認められた場合には投与を中止し、持続的血液濾過透析法、血漿交換、血液透析等の適切な処置を行うことが必要である 。
参考)https://hokuto.app/medicine/X3NBx6RLwbKxwRXVYjyq
低分子デキストランは腎臓から排泄されることから、頻回長期間の投与は尿細管上皮細胞内への低分子デキストランの蓄積を増加させる可能性があり、これらの要因に脱水、腎障害性薬剤の併用などが加わると腎毒性がより増強される危険性がある 。
参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=3319536A3022