目薬なのに2歳未満の乳幼児に点眼すると、呼吸が止まることがあります。
参考)ブリモニジン酒石酸塩点眼液0.1%「TS」の効能・副作用|ケ…
ブリモニジン酒石酸塩は、アドレナリンα2受容体作動薬として日本で最初に承認された緑内障治療点眼薬です。 作用点は毛様体とぶどう膜強膜流出路の2か所で、房水産生の抑制と流出促進を同時に行います。つまり「蛇口を絞りながら排水口も広げる」二段構えの眼圧降下機序です。
参考)ブリモニジン酒石酸塩(アイファガンⓇ)の特徴を教えてください…
ウサギを用いた試験では、0.3%溶液を1回点眼後1時間で、房水産生が点眼前比で最大43.9%抑制されました。 高眼圧症患者を対象にしたフルオロフォトメトリー法での試験でも、産生抑制とぶどう膜強膜流出路経由の流出促進が確認されています(外国人データ)。
参考)https://image.packageinsert.jp/pdf.php?mode=1amp;yjcode=1319761Q1040
適応は「他の緑内障治療薬が効果不十分または使用できない場合の緑内障・高眼圧症」に限られます。 第一選択薬ではなく、プロスタグランジン(PG)製剤やβ遮断薬との併用・代替として位置づけられる薬剤です。これが基本です。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=69274
用法は通常1回1滴・1日2回点眼で、比較的シンプルな投与スケジュールです。 点眼後は涙道閉塞(鼻涙管圧迫)を行うと全身吸収を軽減できるため、患者指導の際に必ず伝えたい手技のひとつです。
参考:ブリモニジン酒石酸塩点眼液添付文書(参天製薬)
参天製薬 ブリモニジン酒石酸塩点眼液0.1%「SEC」 添付文書・患者向け説明資料
医療従事者が最も注意すべき禁忌は「低出生体重児・新生児・乳児・2歳未満の幼児」への投与です。 眼科の点眼薬と聞くと全身影響を軽視しがちですが、この薬は点眼後に全身吸収されます。これは要注意です。
参考)ブリモニジン酒石酸塩点眼液0.1%「SEC」 - 添付文書
海外の市販後報告では、乳児にブリモニジン酒石酸塩点眼液を投与したところ、無呼吸・徐脈・昏睡・低血圧・低体温・筋緊張低下・嗜眠・蒼白・呼吸抑制・傾眠といった多彩な重篤症状が現れたと複数報告されています。 「目薬だから安全」という先入観が最も危険です。
乳幼児では成人に比べて体表面積あたりの薬物吸収量が相対的に多く、かつ血液脳関門が未熟なため中枢神経系への移行が起こりやすい。これが絶対禁忌の根拠です。
小児科病棟や産科・NICUで勤務する看護師が、眼科的な理由でこの薬を処方された患者を受け持つ場面も考えられます。処方を見た時点で年齢確認を必ず行うことが、インシデント防止の第一歩です。
参考:厚生労働省 医薬安発0611第1号(ブリモニジン含有製剤の安全情報)
厚生労働省 医薬品・医療機器等安全性情報 ブリモニジン酒石酸塩関連通知
副作用は眼局所のものだけでなく、全身に及びます。全身吸収によるα2作動作用が原因です。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=69289
眼局所の主な副作用(発現率の高いもの)
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全身性の副作用
特に循環器系の副作用は、抗不整脈薬やβ遮断薬を服用している患者で増強するリスクがあります。入院患者の内服薬との相互作用チェックは欠かせません。
PG製剤との併用群ではアレルギー性結膜炎が23.7%(59例中14例)に達し、副作用全体の発現率は52.5%と高水準でした。 併用時は特に眼局所のアレルギー症状に注意が必要です。
参考)ブリモニジン酒石酸塩点眼液0.1%「日新」の効能・副作用|ケ…
参考:KEGG MEDICUSのブリモニジン酒石酸塩詳細情報
KEGG MEDICUS:ブリモニジン酒石酸塩の薬効・副作用データ
処方箋や指示書に記載がなくても、点眼後の鼻涙管圧迫(涙嚢部を1〜2分間圧迫)を患者に指導することで全身吸収を大幅に軽減できます。 眠気・めまいの副作用を抑えるためにも、この手技の指導は必須です。
参考)https://www.santen.co.jp/medical-channel/di/guide/DH015_brimonidine.pdf?open-cms=true
点眼前後の確認ポイントをまとめると以下の通りです。
眠気・めまいは「軽い」と言われがちですが、高齢患者では転倒リスクに直結します。転倒防止の観点からも、点眼後しばらくは安静にするよう声かけが重要です。これは見落とされがちな視点です。
また、緑内障患者は視野欠損を自覚しにくく、薬効への実感が乏しいため、自己判断での中断リスクが高い。定期的な眼圧測定と服薬アドヒアランスの確認をルーチンに組み込む体制が求められます。
参考:くすりのしおり(RAD-AR)ブリモニジン酒石酸塩点眼液
くすりのしおり:ブリモニジン酒石酸塩点眼液0.1%「日点」の患者向け情報
ブリモニジン酒石酸塩は緑内障治療薬としての顔だけでなく、近年は充血除去目薬の有効成分としても注目されています。 2024年9月、日本で初めて充血除去成分として承認されたことは、医療現場でもまだ広く知られていない事実です。
参考)使い続けると効かなくなる?目薬で充血を解消させる方法を専門家…
従来の充血除去薬(ナファゾリン等のα1/非選択性α受容体作動薬)は、動脈を含む血管を広く収縮させるためリバウンド充血が問題でした。 ブリモニジン酒石酸塩は主に静脈および細動脈を選択的に収縮させるため、細胞への酸素・栄養供給に関わる動脈への影響が少なく、リバウンド充血が起こりにくいと考えられています。
つまり充血除去用途での使用は「動脈への影響を最小化した新しい機序」という点が特徴です。
ただし、OTC製品としての充血除去目薬と処方薬の緑内障治療薬では濃度・用法が異なります。医療従事者として患者が両方を使用していないか、または自己判断でOTC品を購入していないか確認することが実際のリスク管理につながります。
また、眼型酒さ(オキュラーロザセア)による慢性的な目の充血に対し、自由診療でブリモニジン点眼液0.1%を処方するクリニックも増えています。 美容医療との接点が生まれている薬剤であることも、現代の医療従事者として知っておきたい背景知識です。
参考)ブリモニジン点眼液0.1%(アイファガン)目の充血に|肌のク…
参考:biteki.com 千寿製薬によるブリモニジン酒石酸塩の充血除去作用の解説
使い続けると効かなくなる?充血目薬の新成分ブリモニジン酒石酸塩を専門家が解説
参考:厚生労働省 医薬品・医療機器等安全性情報(MID-NET調査結果)
厚労省PMDAによるブリモニジン酒石酸塩含有医薬品のMID-NET調査報告