アミノインデックスがんリスクスクリーニング(AICS)は、血液中のアミノ酸濃度バランスを統計学的に解析する検査法です。この検査は味の素株式会社が開発し、健康な人とがん患者のアミノ酸濃度の違いに着目しています。
参考)https://mmah.jp/checkup/aics.html
人体の約20%を占めるタンパク質は約20種類のアミノ酸から構成され、血液中のアミノ酸濃度は健康時には一定に保たれています。しかし、がんが発生するとアミノ酸バランスに特徴的な変化が現れ、がんの種類によって変化パターンに違いが見られます。
参考)https://matsuzawa-clinic.com/special/special14
検査対象となるがん種
・男性(5種):胃がん、肺がん、大腸がん、膵臓がん、前立腺がん
参考)https://www.nakanoin.or.jp/blood-tests/
・女性(6種):胃がん、肺がん、大腸がん、膵臓がん、乳がん、子宮がん・卵巣がん
検査結果は0.0~10.0の数値(AICS値)で表示され、ランクA(0.0-4.9)、ランクB(5.0-7.9)、ランクC(8.0-10.0)の3段階で評価されます。
アミノインデックスの最大の特徴は、がんに罹患した早期の段階からアミノ酸バランスの変化が検出できることです。従来の腫瘍マーカーがある程度がんが大きくならないと数値が高くならないのに対し、AICSは初期がんの段階でも変化が表れる可能性があります。
参考)https://aminoindex.jp/medical/faq/
早期がんでの感度比較データ
味の素株式会社の公式データによると、ステージⅠおよびⅡの胃がん、肺がん、大腸がん、乳がんにおいて、アミノインデックスの感度が一般的な腫瘍マーカーより高い結果を示しています。
参考)https://maj.emergency.co.jp/others_others/cat165/1898
具体的な検出率として、胃がんではランクCの方の99人に1人が実際に胃がんであったという結果が報告されており、ランクが上がるほどがんである可能性が高くなることが確認されています。
腫瘍マーカーは、がん細胞が産生する特異的な蛋白質やホルモンを測定し、間接的にがんの存在を検出する検査です。がん細胞が増殖するほど陽性になりやすくなる特徴があります。
主要な腫瘍マーカーの種類と特徴
・PSA:前立腺がんの早期発見に特に有用
・CEA:大腸がん、胃がんなどで上昇
・CA125:卵巣がんで特異性が高い
・AFP:肝細胞がんの診断に重要
腫瘍マーカーの最大の限界は、早期がんでは上昇しないことが多く、むしろ治療後の再発監視や治療効果判定に主に使用される点です。前立腺がんのPSAを除くと、早期発見には役立たないことが多いとされています。
参考)https://ohkado-heart-clinic.com/medical/aics/
腫瘍マーカー検査の診断精度には構造的な限界が存在します。がんがある程度大きくならないと検出できないため、早期発見のためのスクリーニング検査としての有用性は限定的です。
腫瘍マーカーの偽陽性・偽陰性
・良性疾患でも上昇する可能性(炎症性疾患、肝疾患など)
・初期がんでは正常値を示すことが多い
・がん種によって特異性に大きな差がある
また、腫瘍マーカーは単独での診断確定はできず、画像診断や病理検査と組み合わせて総合的に判断する必要があります。このため、スクリーニング目的での使用には慎重な検討が必要とされています。
アミノインデックスの高い検出精度の秘密は、スーパーコンピュータを使用した高度な統計解析にあります。味の素株式会社では大量の臨床データを基に、アミノ酸濃度バランスと疾患の関連性を統計学的に解析し、特定の疾患に関連するアミノ酸パターンを特定しました。
統計学的解析の特徴
・多変量解析による複数のアミノ酸濃度の同時評価
・がん種別の特異的パターンの識別
・健常者との判別精度の最適化
この統計学的アプローチにより、単一の腫瘍マーカーでは捉えきれない、がんに伴う全身のアミノ酸代謝変化を包括的に評価できます。血液中のアミノ酸濃度は疾患に応じて特徴的な変化を示すため、がんの種類によってそれぞれ異なる変化パターンが確認されています。
さらに、一度の採血で複数の疾患リスクを同時に評価できるため、効率的ながんスクリーニングが可能となります。この包括的なアプローチが、従来の腫瘍マーカーを上回る検出精度を実現している要因と考えられます。