2025年5月に実施されたアデムパス錠の添付文書改訂は、厚生労働省医薬・生活衛生局安全対策課長通知に基づく重要な変更です。これまでアゾール系抗真菌剤であるイトラコナゾールとボリコナゾールは「禁忌」として位置付けられていましたが、今回の改訂により「併用注意」へと変更されました。
参考)https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2025/05/revision_202505_adempas.pdf
この改訂の背景には、以下の要因があります。
改訂により、これまで併用できなかった患者において、適切な用量調整と厳重な監視下での併用治療が可能となり、治療選択肢が大幅に拡大されました。
アデムパス(リオシグアト)の代謝経路について、今回の改訂では相互作用の発現機序がより詳細に記載されました。本剤は複数のチトクローム P450(CYP)分子種によって代謝されます:
主要代謝酵素の寄与
P-糖タンパク質の関与
改訂された添付文書では、P-糖タンパク質/乳癌耐性タンパク質(P-gp/BCRP)の関与についても言及されています。これらのトランスポーターは薬物の組織移行性に影響を与える重要な因子です。
イトラコナゾールとボリコナゾールは強力なCYP3A阻害剤として知られており、リオシグアトの血中濃度を上昇させる可能性があります。しかし、適切な用量調整により安全な併用が可能であることが示されています。
改訂された添付文書では、イトラコナゾールとボリコナゾール以外の併用注意薬剤についても、管理方法の統一化が図られました:
併用注意薬剤と措置方法
これらの薬剤では、従来「本剤の低用量からの開始」とされていた措置方法に加えて、「併用投与中の本剤の減量」に関する注意が追記されました。
実践的な管理ポイント
この統一された管理指針により、各併用薬剤に対する一貫したアプローチが可能となり、医療従事者にとってより実践的な指針が提供されています。
今回のアデムパス添付文書改訂は、単なる併用禁忌の解除以上の薬事的意義を持っています。2017年に実施された前回の重要な改訂では、特発性間質性肺炎に伴う症候性肺高血圧症患者での安全性懸念が追記されました。
参考)https://www.pmda.go.jp/files/000219268.pdf
過去の安全性課題
2017年の改訂では、特発性間質性肺炎患者を対象とした臨床試験において、リオシグアト群で重篤な有害事象および死亡が多かったことが報告され、間質性肺病変を伴う患者への注意喚起が強化されました。
現在の安全性評価の進展
参考)https://www.msdconnect.jp/products/adempas/
この安全性プロファイルの変遷は、医薬品の適正使用における「リスク最小化」から「リスク・ベネフィット最適化」へのパラダイムシフトを示しています。禁忌を注意に変更することで、適切な管理下での使用機会を拡大し、患者のQOL向上に貢献する可能性があります。
薬剤師の役割拡大
この改訂により、薬剤師には以下の責任が求められます。
2025年の改訂と同時に、アデムパス錠の情報提供体制も大幅に電子化されました。MSDconnectプラットフォームを通じた電子添文情報の提供により、医療従事者は最新の情報に迅速にアクセスできるようになっています。
電子化のメリット
添文ナビシステムの活用
改訂通知では、添文ナビシステムの利用が推奨されています。このシステムにより、医療従事者は:
情報格差解消への取り組み
電子化推進により、地域や施設規模による情報格差の解消が期待されています。特に。
この電子化推進は、医薬品の安全使用における「情報の民主化」を実現し、すべての医療従事者が等しく最新情報にアクセスできる環境を構築しています。また、医薬品インタビューフォーム(IF)も電子媒体で提供されており、添付文書を補完する詳細な情報が容易に入手できる体制が整備されています。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/medical_interview/IF00001131.pdf