トラフェルミン副作用と医療従事者が知るべき安全性情報

トラフェルミンの副作用について医療従事者が知っておくべき重要な情報をまとめました。肉芽組織過剰増生や皮膚反応から全身への影響まで、適切な使用のための注意点とは?

トラフェルミン副作用について

トラフェルミンの主な副作用
⚠️
投与部位の副作用

刺激感・疼痛、過剰肉芽組織、滲出液の増多

🧬
細胞増殖促進作用

血管新生作用により組織再生を促進

🔬
全身への影響

肝機能値の上昇、腎機能への影響

トラフェルミン投与部位に生じる一般的な副作用

トラフェルミンの投与部位における最も頻繁な副作用として、刺激感・疼痛が挙げられます 。これは薬剤の細胞増殖促進作用によるもので、投与後に患者が感じる軽微な症状として報告されています。また、発赤や過剰肉芽組織の形成、滲出液の増多も投与部位における代表的な副作用として知られています 。
参考)https://www.gifu-upharm.jp/di/mdoc/pinsert/2g/p2653842306.pdf

 

特に注意すべきは、過剰肉芽組織の形成です。トラフェルミンは線維芽細胞等に対する細胞増殖促進作用及び血管新生作用を示すため、時として正常範囲を超えた肉芽組織の増生が起こる可能性があります 。このような症状が現れた場合には、経過を慎重に観察しながら使用を継続するか、症状が強い場合には投与を中止する必要があります 。
参考)https://www.gifu-upharm.jp/di/mdoc/rmp/2g/r2928012102.pdf

 

さらに、投与部位近傍の組織の過剰増生についても重要な潜在的リスクとして認識されています。製造販売後の報告では、投与部位近傍の歯槽粘膜及び頬粘膜等において硬結、肥厚、腫瘤等の症例が報告されており 、特に歯科用のリグロス使用時には投与部位から薬剤が流れ込むことによる副作用に注意が必要です。

トラフェルミン使用における皮膚反応と過敏症

皮膚反応として最も基本的な副作用は発赤であり、これは投与後の一般的な反応として認められています 。より重篤な皮膚反応としては、発疹、接触皮膚炎、そう痒感、腫脹が頻度不明ながら報告されています 。
過敏症については、トラフェルミンの成分に対して過敏症の既往歴のある患者には禁忌とされており 、アレルギー反応のリスクが存在します。リグロス使用時においても、含まれる成分に対してアレルギー反応を示す患者がいることが報告されており 、一般的にアレルギー反応は塗布後数十分以内に症状が出現します。
参考)https://blanc-dental.jp/column/periodontalrecovery/

 

接触皮膚炎の発症メカニズムは、トラフェルミンが外来性のタンパク質であることに関連しており、皮膚の免疫系が異物として認識することで炎症反応が生じる可能性があります 。このため、使用前に患者の既往歴を十分に確認し、必要に応じてパッチテスト等の検査を実施することが推奨されます。

トラフェルミン投与による全身への影響と肝腎機能

トラフェルミンは外用薬として使用されますが、全身への影響も報告されています。肝機能に関しては、AST上昇が2.1%(2/94例)、ALT上昇が1.1%(1/94例)の頻度で認められており 、これらは臨床検査値異常変動として主要な副作用となっています。
腎機能への影響については、動物実験において大量反復皮下投与時に腎臓の炎症性病変並びに尿蛋白及び尿中N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(NAG)の上昇が観察されています 。ヒトにおいても、リグロス使用時に尿中アルブミン陽性、尿中NAG上昇、尿中β2ミクログロブリン上昇などの腎機能関連の検査値異常が報告されています 。
血清中濃度測定において、皮膚潰瘍患者に本剤を1日1回15日間投与した際の血中移行は認められなかったものの(定量限界:10pg/mL) 、局所的な高濃度での使用により全身への影響が完全に排除されるわけではありません。このため、全身疾患のある患者への使用時には、十分な対診を行った上で使用の可否を判断することが重要です 。

トラフェルミン使用時の悪性腫瘍リスクと禁忌事項

トラフェルミンの最も重要な禁忌として、投与部位に悪性腫瘍のある患者又はその既往歴のある患者への使用があります 。これは、トラフェルミンが細胞増殖促進作用を有するため、悪性腫瘍の増殖を促進する可能性があるためです 。
参考)https://www.pmda.go.jp/RMP/www/620095/57234d9a-a821-445a-b0f6-84c4142b1dfb/620095_1329713X1025_006RMP.pdf

 

動物実験においては、in vitro試験で一部のヒト腫瘍細胞の増殖促進作用が認められており、in vivo試験では一部のげっ歯類及びヒト腫瘍細胞の増殖促進作用、高転移能を有するマウスメラノーマ細胞の転移促進作用が報告されています 。
投与部位以外に悪性腫瘍のある患者又はその既往歴のある患者についても慎重投与の対象となっており、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ、患者の状態を十分に観察しながら使用することが推奨されています 。また、その際には使用開始に当たり患者又はそれに代わり得る適切な者に本剤の有効性及び危険性について十分に説明する必要があります。
悪性腫瘍による難治性潰瘍の可能性のある患者については、事前に生検等により投与部位に悪性腫瘍のないことを確認することが必須とされており 、使用開始前の十分な検査と評価が求められます。

トラフェルミンの医療従事者向け安全管理と注意点

医療従事者がトラフェルミンを安全に使用するためには、まず使用開始前の問診等を必ず行い、悪性腫瘍又はその既往について十分に考慮することが重要です 。潰瘍の改善に伴って形成される新生肉芽は、刺激により新生血管が損傷し出血するおそれがあるため、ガーゼの交換等の処置は十分注意して行う必要があります 。
使用期間についても重要な管理項目であり、本剤を約4週間投与しても潰瘍の大きさ(面積、深さ)又は症状(肉芽形成、肉芽の色調、表皮形成等)の改善傾向が認められない場合は外科的療法等を考慮することが推奨されています 。長期にわたって漫然と投与することは避け、定期的な評価と治療方針の見直しが必要です。
トラフェルミンには抗菌作用がないため、潰瘍面を清拭し、消毒又は洗浄した後に噴霧し、感染があらわれた場合には抗生物質を投与するなどの適切な処置を行い経過を観察することが必要です 。また、必要に応じて壊死組織を除去することも重要な管理のポイントです。
特に美容医療分野での不適切使用による副作用として、フィブラストスプレーを体内に注射することによりしこりが形成され、溶かすことができない注入剤として問題となる事例が報告されています 。医療従事者は薬剤の副作用や細かな成分を十分に理解し、適応外使用を避けることが患者の安全確保において不可欠です。
参考)https://biyouhifuko.com/news/column/3576/