タンパク質を構成するアミノ酸何種類ある

ヒトの体をつくるタンパク質は何種類のアミノ酸から構成されているのでしょうか。必須アミノ酸と非必須アミノ酸の違い、それぞれの種類と機能について詳しく解説します。あなたは正確な知識を身につけられているでしょうか?

タンパク質を構成するアミノ酸種類

タンパク質を構成するアミノ酸
🧬
基本構成

ヒトの体を構成するタンパク質は20種類のアミノ酸からできています

必須アミノ酸

体内で合成できない9種類のアミノ酸で食事から摂取が必要

🔄
非必須アミノ酸

体内で合成可能な11種類のアミノ酸で生体機能に重要な役割

タンパク質アミノ酸の基本構造と分類

タンパク質を構成するアミノ酸は、カルボキシ基(-COOH)とアミノ基(-NH2)、そして側鎖(R)から構成される化学式RCH(NH2)COOHで表される有機化合物です。自然界には約500種類ものアミノ酸が発見されていますが、私たちのカラダのタンパク質を構成しているのはわずか20種類です。
参考)https://www.rikelab.jp/glossary/4761.html

 

この20種類のアミノ酸は以下のように分類されます。
構造による分類

  • 疎水性アミノ酸:非極性側鎖を持つ9種類(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、トリプトファン、プロリン、メチオニン)
  • 親水性アミノ酸:極性側鎖を持つ11種類(セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、チロシンシステインアルギニン、リシン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸)

化学的性質による分類

  • 塩基性アミノ酸:アルギニン、リシン、ヒスチジン
  • 酸性アミノ酸:グルタミン酸、アスパラギン酸
  • 中性アミノ酸:残りの15種類

アミノ酸同士はペプチド結合(-CO-NH-)によって結合し、一方のアミノ酸のカルボキシ基ともう一方のアミノ酸のアミノ基から水分子が取れることで形成されます。この結合によってポリペプチドが作られ、タンパク質の基本構造となります。

タンパク質構成必須アミノ酸の種類と特徴

必須アミノ酸(不可欠アミノ酸)は、動物の体内で十分な量を合成することができないため、栄養として食物から摂取する必要があるアミノ酸です。必須アミノ酸は全部で9種類あります:
参考)https://d-aminoacidlabo.com/column/column_02/

 

必須アミノ酸リスト

  1. 🔹 ヒスチジン(His):成長期に特に重要で、血管拡張作用を持つヒスタミンの前駆体
  2. 🔹 イソロイシン(Ile):筋肉タンパク質の主要成分で、エネルギー代謝に関与
  3. 🔹 ロイシン(Leu):筋肉タンパク質合成を促進し、血糖値を調節
  4. 🔹 リシン(Lys):コラーゲンの構成成分で、カルシウム吸収を促進
  5. 🔹 メチオニン(Met):硫黄を含むアミノ酸で、解毒作用や脂質代謝に関与
  6. 🔹 フェニルアラニン(Phe):チロシンやドーパミンの前駆体で、神経伝達物質の材料
  7. 🔹 トレオニン(Thr):成長促進と脂肪肝の予防に関与
  8. 🔹 トリプトファン(Trp):セロトニンやメラトニンの前駆体で、睡眠や精神安定に重要
  9. 🔹 バリン(Val):筋肉タンパク質の構成成分で、エネルギー源として利用

    参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%BF%E3%83%B3%E3%83%91%E3%82%AF%E8%B3%AA%E3%82%92%E6%A7%8B%E6%88%90%E3%81%99%E3%82%8B%E3%82%A2%E3%83%9F%E3%83%8E%E9%85%B8

     

これらの必須アミノ酸は、食事から摂取しなければならないため、バランスの良い食事が重要です。特に、肉類、魚類、卵、乳製品、大豆製品などの完全タンパク質を含む食品から効率的に摂取できます。

 

興味深い点として、必須アミノ酸の必要量は年齢や生理状態によって変化し、成長期の子供や妊娠中の女性では特に多くの必須アミノ酸が必要とされます。

 

タンパク質構成非必須アミノ酸の機能と役割

非必須アミノ酸(可欠アミノ酸)は体内で合成可能な11種類のアミノ酸ですが、「非必須」という呼称は誤解を与えやすく、実際には生命活動にとって極めて重要な役割を担っています。体内で合成能力が進化の過程で保存されたのは、これらのアミノ酸がそれほど重要だからと考えられています。
参考)https://www.ajinomoto.co.jp/amino/about/aminoacids/

 

非必須アミノ酸とその主要機能

  1. 🟢 アラニン(Ala):糖新生の主要な基質で、筋肉から肝臓への窒素輸送
  2. 🟢 アスパラギン酸(Asp):オキサロ酢酸から合成され、尿素サイクルに関与
  3. 🟢 アスパラギン(Asn):世界で初めて発見されたアミノ酸で、タンパク質の水素結合形成
  4. 🟢 グルタミン酸(Glu):興奮性神経伝達物質として脳内で重要な機能
  5. 🟢 セリン(Ser):リン脂質合成の材料で、細胞膜の構成要素
  6. 🟢 グリシン(Gly):最も小さなアミノ酸で、コラーゲンの主要成分
  7. 🟢 プロリン(Pro):コラーゲンの安定化に重要で、創傷治癒に関与
  8. 🟢 システイン(Cys):タンパク質の立体構造維持とタウリンの前駆体
  9. 🟢 チロシン(Tyr):ドーパミンやノルアドレナリンの前駆体
  10. 🟢 グルタミン(Gln):免疫細胞のエネルギー源として重要
  11. 🟢 アルギニン(Arg):一酸化窒素の前駆体で血管拡張作用

    参考)https://www.orthomolecular.jp/nutrition/amino2/

     

特に注目すべきは、システインがタンパク質の立体構造を保つのに重要な役割を持つことです。システインは硫黄を含むアミノ酸で、2つのシステイン間でジスルフィド結合を形成し、タンパク質の三次構造を安定化させます。
また、アスパラギンはタンパク質表面で水や他の極性アミノ酸と結合する性質があり、タンパク質の水溶性や安定性に寄与します。

タンパク質アミノ酸配列と機能的多様性

20種類のアミノ酸の組み合わせと配列によって、ヒトでは約10万種類ものタンパク質が合成されています。この驚異的な多様性は、アミノ酸の配列順序がDNAおよびRNAによって厳密に制御されていることで実現されています。
タンパク質の構造階層

  • 一次構造:アミノ酸の配列順序
  • 二次構造:αヘリックスやβシートなどの局所的な立体構造
  • 三次構造:ポリペプチド鎖全体の三次元的な折りたたみ
  • 四次構造:複数のポリペプチド鎖の会合体

アミノ酸配列のわずかな変化でも、タンパク質の機能に大きな影響を与えることがあります。例えば、鎌状赤血球症では、ヘモグロビンβ鎖の6番目のグルタミン酸がバリンに置き換わることで、赤血球が変形し酸素運搬能力が低下します。

 

遊離アミノ酸の重要性
体内には、タンパク質に組み込まれていない遊離アミノ酸も存在し、これらは血液や細胞内でばらばらの状態で重要な生理機能を担っています。遊離アミノ酸は以下のような役割を果たします:

  • エネルギー代謝の調節
  • 神経伝達物質の前駆体
  • 免疫機能の維持
  • 抗酸化作用
  • pH調節

タンパク質アミノ酸栄養評価とアミノ酸スコア

食品に含まれる必須アミノ酸の質を評価する指標として「アミノ酸スコア」があります。これは、食品タンパク質中の必須アミノ酸組成をFAO/WHO/UNU(国連食糧農業機関/世界保健機関/国際連合大学)が定めた理想的なアミノ酸パターンと比較して算出されます。
アミノ酸スコアの計算方法
各必須アミノ酸について(食品中の含有量÷基準値)×100を計算し、最も低い値がその食品のアミノ酸スコアとなります。最も不足しているアミノ酸は「制限アミノ酸」と呼ばれます。

 

主要食品のアミノ酸スコア

  • 🥩 動物性タンパク質(肉・魚・卵・乳製品):100点
  • 🌾 白米:65点(リシンが制限アミノ酸)
  • 🍞 小麦:44点(リシンが制限アミノ酸)
  • 🫘 大豆:100点(植物性で珍しく完全タンパク質)

植物性食品は一般的に特定のアミノ酸が不足しがちですが、異なる植物性食品を組み合わせることで補完できます。例えば、米(リシン不足)と豆類(メチオニン不足)を組み合わせることで、必須アミノ酸のバランスが改善されます。

 

医療従事者が知っておくべき臨床的意義
栄養療法や疾患管理において、アミノ酸の知識は不可欠です。

  • 腎疾患患者:タンパク質制限時も必須アミノ酸の確保が重要
  • 高齢者:筋肉量維持のためロイシンなど分岐鎖アミノ酸の摂取推奨
  • 外科患者:創傷治癒促進のためアルギニンやグルタミンの補給検討
  • 肝疾患患者:分岐鎖アミノ酸/芳香族アミノ酸比の管理が重要

これらの知識を基に、患者個々の状態に応じた栄養管理や治療方針の決定に活用することができます。