タンパク質を構成するアミノ酸は、カルボキシ基(-COOH)とアミノ基(-NH2)、そして側鎖(R)から構成される化学式RCH(NH2)COOHで表される有機化合物です。自然界には約500種類ものアミノ酸が発見されていますが、私たちのカラダのタンパク質を構成しているのはわずか20種類です。
参考)https://www.rikelab.jp/glossary/4761.html
この20種類のアミノ酸は以下のように分類されます。
構造による分類
化学的性質による分類
アミノ酸同士はペプチド結合(-CO-NH-)によって結合し、一方のアミノ酸のカルボキシ基ともう一方のアミノ酸のアミノ基から水分子が取れることで形成されます。この結合によってポリペプチドが作られ、タンパク質の基本構造となります。
必須アミノ酸(不可欠アミノ酸)は、動物の体内で十分な量を合成することができないため、栄養として食物から摂取する必要があるアミノ酸です。必須アミノ酸は全部で9種類あります:
参考)https://d-aminoacidlabo.com/column/column_02/
必須アミノ酸リスト
これらの必須アミノ酸は、食事から摂取しなければならないため、バランスの良い食事が重要です。特に、肉類、魚類、卵、乳製品、大豆製品などの完全タンパク質を含む食品から効率的に摂取できます。
興味深い点として、必須アミノ酸の必要量は年齢や生理状態によって変化し、成長期の子供や妊娠中の女性では特に多くの必須アミノ酸が必要とされます。
非必須アミノ酸(可欠アミノ酸)は体内で合成可能な11種類のアミノ酸ですが、「非必須」という呼称は誤解を与えやすく、実際には生命活動にとって極めて重要な役割を担っています。体内で合成能力が進化の過程で保存されたのは、これらのアミノ酸がそれほど重要だからと考えられています。
参考)https://www.ajinomoto.co.jp/amino/about/aminoacids/
非必須アミノ酸とその主要機能
参考)https://www.orthomolecular.jp/nutrition/amino2/
特に注目すべきは、システインがタンパク質の立体構造を保つのに重要な役割を持つことです。システインは硫黄を含むアミノ酸で、2つのシステイン間でジスルフィド結合を形成し、タンパク質の三次構造を安定化させます。
また、アスパラギンはタンパク質表面で水や他の極性アミノ酸と結合する性質があり、タンパク質の水溶性や安定性に寄与します。
20種類のアミノ酸の組み合わせと配列によって、ヒトでは約10万種類ものタンパク質が合成されています。この驚異的な多様性は、アミノ酸の配列順序がDNAおよびRNAによって厳密に制御されていることで実現されています。
タンパク質の構造階層
アミノ酸配列のわずかな変化でも、タンパク質の機能に大きな影響を与えることがあります。例えば、鎌状赤血球症では、ヘモグロビンβ鎖の6番目のグルタミン酸がバリンに置き換わることで、赤血球が変形し酸素運搬能力が低下します。
遊離アミノ酸の重要性
体内には、タンパク質に組み込まれていない遊離アミノ酸も存在し、これらは血液や細胞内でばらばらの状態で重要な生理機能を担っています。遊離アミノ酸は以下のような役割を果たします:
食品に含まれる必須アミノ酸の質を評価する指標として「アミノ酸スコア」があります。これは、食品タンパク質中の必須アミノ酸組成をFAO/WHO/UNU(国連食糧農業機関/世界保健機関/国際連合大学)が定めた理想的なアミノ酸パターンと比較して算出されます。
アミノ酸スコアの計算方法
各必須アミノ酸について(食品中の含有量÷基準値)×100を計算し、最も低い値がその食品のアミノ酸スコアとなります。最も不足しているアミノ酸は「制限アミノ酸」と呼ばれます。
主要食品のアミノ酸スコア
植物性食品は一般的に特定のアミノ酸が不足しがちですが、異なる植物性食品を組み合わせることで補完できます。例えば、米(リシン不足)と豆類(メチオニン不足)を組み合わせることで、必須アミノ酸のバランスが改善されます。
医療従事者が知っておくべき臨床的意義
栄養療法や疾患管理において、アミノ酸の知識は不可欠です。
これらの知識を基に、患者個々の状態に応じた栄養管理や治療方針の決定に活用することができます。