関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1542201930

下痢といえば代謝性アシドーシス、という整理は日常診療ではほぼ正しいです。腸液からHCO3-を失う場面が多いからです。つまり例外が重要です。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1542201930
その例外が、Clを多く失う下痢です。日本内科学会雑誌では、代謝性アルカローシスの発症因子として「Clの多い腸液の喪失(下痢)」が明記され、代表的原因として先天性Cl下痢症や絨毛性腺腫が挙げられています。これは見逃せません。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1542201930
臨床で大事なのは、下痢の有無だけではなく、何を失っている下痢かを見ることです。HCO3-喪失優位ならアシドーシス、Cl喪失優位ならアルカローシスに傾きます。結論は組成で決まるです。
関連)https://xn--udruk51uy4d9ovrfkg1bb58e.biz/archives/1436
まず押さえたいのは先天性クロール下痢症です。回腸末端と結腸のCl-/HCO3-交換輸送障害により、Clを大量に便中へ失い、低クロール血症と代謝性アルカローシスをきたします。便中Cl高値も特徴です。
関連)https://jsog-k.jp/journal/journal_detail.asp?id=17774
しかもこの疾患は、出生直後からの水様下痢、母体の羊水過多、低K血症までつながります。稀な病気ですが、下痢なのにアルカローシスという組み合わせを説明できる、ほぼ教科書的な例外です。意外ですね。
関連)https://jsog-k.jp/journal/journal_detail.asp?id=17774
もう1つは大腸の絨毛性腺腫です。McKittrick-Wheelock症候群では慢性の分泌性下痢と電解質異常、腎機能障害を伴い、報告では腫瘍が3〜4cm超の大きな絨毛性腺腫であることが多いとされています。大腸腫瘍も原因です。
関連)http://medcraveonline.com/GHOA/GHOA-06-00200
なお、絨毛性腺腫は代謝性アシドーシスで語られる報告が多い一方、10〜20%でCl分泌優位となり代謝性アルカローシスを起こすとされます。慢性下痢に低K血症、腎前性AKIが重なる症例では、整腸薬だけで様子を見るのは危険です。つまり腫瘍検索です。
関連)https://atenaeditora.com.br/catalogo/dowload-post/76414
この部分の参考リンクです。先天性クロール下痢症の病態、便中Cl高値、胎児期からの特徴が整理されています。
関連)代謝性アルカローシスの治療 (medicina 34巻5号)…
https://www.jspghan.org/idi/chapter2/2-12.html
たとえば、嘔吐や胃液吸引、長期の利尿薬使用後などでは尿中Cl低値となりやすく、0.9%NaClで改善する群に入ります。逆に、ミネラルコルチコイド過剰、持続する腎性Cl喪失、一部の利尿薬投与直後では尿中Cl高値で、NaClだけでは補正しにくいです。
下痢がある患者でも、この枠組みはそのまま使えます。下痢だから消化管由来と短絡せず、血圧、体液量、K、Mg、尿Cl、薬剤歴を並べると、鑑別の抜けが減ります。これで整理できます。
医療現場では、血液ガスだけで満足しがちです。しかし代謝性アルカローシスは、発症因子だけでなく維持因子があるから持続します。Cl欠乏、K欠乏、細胞外液量減少、アルドステロン作用のどれが続いているか、そこまで見て初めて治療設計になります。
関連)代謝性アルカローシスの治療 (medicina 34巻5号)…
この部分の参考リンクです。代謝性アルカローシスの分類、尿中Cl、維持因子、鑑別アルゴリズムがまとまっています。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1542201930
Cl反応性なら、基本はCl補充と体液量補正です。0.9%NaClでClを補い、必要に応じてKClを追加するのが王道です。Cl補充が原則です。
関連)https://nakano-ichou.com/blog/201111-4457/
ここで見落としやすいのがK補正です。日本内科学会雑誌でも、輸液で利尿がつくと尿中K排泄が増え、K補充しないとアルカローシス補正により多くのClが必要になると説明されています。Kも同時補正が条件です。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1542201930
一方で、分泌性下痢の原因が絨毛性腺腫なら、輸液だけでは根本解決になりません。慢性下痢、低K血症、腎機能障害の三徴があるなら、大腸内視鏡で病変確認まで進むほうが、時間と再入院のロスを減らせます。これは使えそうです。
関連)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23592821/
先天性クロール下痢症でも同じです。NaClだけでなく、K補充、便電解質の確認、必要時は遺伝学的評価まで含めて追うと、反復する脱水や発育障害の回避につながります。あなたが小児や若年者の難治性下痢を診る場面では、便中Clをメモしておく、それだけでも診断の近道になります。
関連)代謝性アルカローシスの治療 (medicina 34巻5号)…
現場で本当に多い落とし穴は、「下痢だからアシドーシスのはず」と病態を先回りしてしまうことです。その先入観のまま補液を始めると、尿Clや便電解質を採る前の貴重な時間を失います。先入観は禁物です。
関連)https://xn--udruk51uy4d9ovrfkg1bb58e.biz/archives/1436
しかも代謝性アルカローシスは、入院患者の酸塩基異常の約半数を占めるとされる一方、見逃されている可能性が高いとされています。つまり「珍しいから考えなくていい」病態ではありません。痛いですね。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1542201930
医療従事者向けにあえて言うなら、下痢患者の初療では「便の性状」と同じ重みで「失っている電解質」を考えるべきです。慢性水様便、低K、低Cl、腎前性AKI、代謝性アルカローシスが並んだら、感染性腸炎より先にCl喪失性病態や腫瘍性分泌を想起したほうが安全です。つまり順番が大事です。
関連)http://medcraveonline.com/GHOA/GHOA-06-00200
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