スタビライゼーションスプリントとナイトガードは、多くの歯科医院において同義として扱われている口腔内装置です。当院においても「名前と目的が違うだけで、作成方法も材料も、全く同じハードタイプのマウスピース」として位置づけられています。
参考)https://happiness-sika-clinic.com/blog/koukuu-syuuheki/naitoga-do-supurinnt/
これらの装置の主要な機能は以下の通りです。
「スタビライゼーション」という用語は、元来自動車業界で使用されている安定化を意味する言葉で、左右のバランスを均等に保つ機能を表現しています。歯科領域においても、左右の咬合力のバランスを均等に保つ装置として、この名称が採用されています。
参考)https://hoshina-dc.jp/blog/%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%82%BA%E3%83%A0%E3%81%AE%E6%B2%BB%E7%99%82%E2%91%A6/
ハードタイプのスタビライゼーションスプリントは、主にアクリルレジンによる重合または熱可塑性シートの圧接によって製作されます。医療現場では、患者の口腔内に装着した状態で精密な調整を行います。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/josm/6/2/6_129/_pdf
製作プロセス:
この製作方法により、患者の口腔内で全体の上下の歯が接触し、ギリギリと歯ぎしりをする際には3番目の歯(糸切り歯)が常に接触した状態でスムーズに動かすことができる装置が完成します。
参考)https://www.aobakai.com/staff-blog/?p=33156
材質選択の重要性:
睡眠時ブラキシズム(SB)は成人の5~10%に見られる高い有病率を示す睡眠障害です。スタビライゼーションスプリントによる治療効果については、複数の臨床研究で検証されています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/josm/7/2/7_88/_pdf/-char/ja
ブラキシズム軽減効果:
Journal of Oral Rehabilitationに掲載された研究では、スタビライゼーションスプリントと咬合に変化を与えないパラタルスプリントの両方がブラキシズム低減効果を有することが報告されています。ただし、「いずれの装置を用いても効果は長期間持続しない」という重要な知見も示されています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/ajps/11/3/11_187/_article/-char/ja/
短期的効果:
注意すべき点:
顎関節症患者においては、ハードタイプスタビライゼーションスプリントを装着した患者の6~26%に自覚的な症状悪化が報告されているため、慎重な経過観察が必要です。
睡眠関連ブラキシズムに対するナイトガードは「歯の摩耗や破折、あるいは舌痛等を予防する目的」で使用されますが、「有害事象を招く可能性もある」ため、定期的・定量的な経過観察が不可欠です。
臨床現場では、上顎型と下顎型のどちらを選択するかが重要な判断点となります。一般的には上顎に装着するタイプが標準的ですが、歯列の状態や治療の進行状況により下顎に用いられることもあります。
上顎型の特徴:
下顎型の選択基準:
しかし、「両者を比較した効果および副作用に関しては明らか」でないとされており、患者個別の口腔内状況を総合的に判断して選択する必要があります。
装着時の重要ポイント:
全ての歯が接触することが非常に重要で、「咬んだときに隙間があると、寝ている間に歯がそのスペースに向かって動いてしまい、歯並びに影響することがある」ため、精密な調整が求められます。
近年の臨床報告では、ナイトガードの長期使用による咬合変化のリスクが指摘されています。これは医療従事者として知っておくべき重要な情報です。
有害事象の具体例:
リスクファクター:
慢性的な円板転位の場合には、「すでに咬頭嵌合位が安定していることが多く、リポジショニングスプリントを用いて関節円板を復位することにより、臼歯部開咬が生じる危険性がある」という報告があります。
医療現場での対策:
観察項目 | 頻度 | 注意点 |
---|---|---|
咬合接触状態 | 月1回 | 全歯の均等接触確認 |
顎関節症状 | 装着2週間後 | 痛みや開口障害の有無 |
歯並び変化 | 3-6ヶ月毎 | 歯の移動や挺出の確認 |
装置の適合性 | 使用6ヶ月後 | 破損や変形の点検 |
安全性確保のための指針:
一般的な原発性(一次性)睡眠時ブラキシズムには「ハードタイプスタビライゼーションスプリントが最も安全性が高く、調整が容易で、確実な効果が得られる」とされていますが、定期的な経過観察により「adverse event についても十分に検討し、定期的・定量的に経過を観察する必要」があります。
患者への適切な説明と同意取得、そして継続的なフォローアップが、安全で効果的なナイトガード治療の実現には不可欠です 🔍。