三角筋は肩関節を覆う三角形の大型筋で、前部線維・中部線維・後部線維の3つの部分に分けられます。前部線維は鎖骨外側1/3から起始し、肩関節の屈曲・内旋・水平内転に作用します。中部線維は肩峰から起始し、主に肩関節の外転運動を担当します。後部線維は肩甲棘から起始し、肩関節の伸展・外旋・水平外転に関与します。
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すべての線維は上腕骨の三角筋粗面に停止し、腋窩神経(C5、C6)の支配を受けています。日常生活では物を持ち上げる、腕を伸ばして物を取る、後ろに手を回すといった動作で働きます。三角筋は上半身を代表する大きな筋肉であり、筋肉量が多いため鍛えると基礎代謝が上がり太りにくい体質になります。
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三角筋の筋力が衰えると、上腕二頭筋が過剰に働くようになり、肩甲骨の動きが不安定になって肩関節の動きが悪くなる場合があります。また、姿勢の悪化や肩・首の不調、五十肩や巻き肩などの原因にもなります。
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三角筋前部線維のストレッチは、腕を後方に引く動作で効果的に伸張できます。台を使った方法では、左膝を立てて床にしゃがみ、40cm程度の台を身体の右側に置きます。右肘を曲げ、右肩を後ろに引いて台の上に右手を置き、身体を軽く前傾させることで右肩の前部を伸ばします。呼吸しながら20~30秒程度キープし、反対側も同様に行います。
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座位で行う方法では、両膝を立てて床に座り、両手のひらをお尻から30cmほど離して床につき、手の指先をお尻方向に向けます。肩を後ろに引き、三角筋の前面を心地よく伸ばしながら呼吸を続け、30秒ほどキープします。この方法は場所を選ばず、デスクワークの合間にも実施できる利点があります。
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前部線維のストレッチは、長時間のパソコン作業や前傾姿勢が続く作業従事者に特に有効です。手を机や柱に置いて実施する変法もあり、臨床場面での指導に活用できます。
参考)肩の前のストレッチ
三角筋中部と後部線維のストレッチには、腕をクロスさせる方法が効果的です。椅子に座って背筋を伸ばし、右腕を左腕で抱えてクロスさせます。クロスさせた腕で手前に引き込み、肩の筋肉を伸ばしながら呼吸を続け、20~30秒程度キープします。この動作により、三角筋中部と後部が同時に伸張されます。
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床で行う後部線維特化型のストレッチでは、四つ這いの姿勢から左腕を内側へ伸ばし、胸を床に沈めて胸を左腕に近づけます。左腕の肩の後ろの筋肉を伸ばしながら呼吸を続け、20~30秒程度キープした後、右腕も同様に行います。この方法は後部線維を重点的に伸ばすことができ、肩の後面の緊張が強い患者に適しています。
横方向のストレッチでは、座位または立位で腕を横に上げる動作を取り入れ、中部線維の伸張を促します。肩甲骨の動きと連動させることで、より効果的なストレッチが実現できます。
参考)肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)|疾患別治療・リハビリテーショ…
三角筋のストレッチは肩の凝りをほぐし、肩関節周囲の血行を改善します。肩こりや首こりなどの慢性症状の改善・予防に効果的であり、定期的な実施により症状の軽減が期待できます。肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)の患者に対しても、炎症期を過ぎた段階でのストレッチは可動域改善に有効です。
参考)【健康コラム】肩こり頭痛改善 href="https://tatikawa-treatment.com/column/19364/" target="_blank">https://tatikawa-treatment.com/column/19364/amp; 呼吸がしやすくなる<肩甲骨…
三角筋症候群は筋筋膜性疼痛症候群の一種で、運動などの外力や過度の使用によって起こります。この疾患では三角筋に特有の圧痛を認め、圧痛点から腕に放散する痛みを訴えます。治療は急性期には患部の安静と消炎鎮痛剤を用い、慢性期には理学療法を組み合わせます。
参考)https://www.ikeda-c.jp/byouki/deltoid_syndrome.html
肩関節周囲炎発症後の筋力低下に対しては、ストレッチと筋力訓練を組み合わせることが重要です。三角筋は肩を挙げる動作に大きく作用し、特に横に90度挙げた状態での外転運動が有効です。肩甲骨安定化エクササイズと併用することで、頸部痛や肩痛の改善効果が報告されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4000422/
ストレッチを実施する際は、呼吸を止めずに腹式呼吸を意識的に繰り返すことが重要です。腹式呼吸によって自律神経のバランスが整うと、硬直した筋肉もリラックス状態になってほぐしやすくなります。鼻から深く息を吸い、口から息を吐き出して脱力するのがポイントです。
勢いよく伸ばしたり、反動を使って動かしたりすると、硬直した筋肉が急に伸ばされて筋断裂を招く可能性があります。呼吸のリズムに合わせてゆっくり伸ばすことで、安全かつ効果的なストレッチが実現できます。痛みを感じない程度の気持ちよさを大切にし、特に肩こりや痛み、だるさが出ている場合は注意が必要です。
ストレッチのポーズをとって約30秒キープし、痛気持ちいいを目安に筋肉を伸ばします。硬い部位を優先的に伸ばすことで、効果的にストレッチが行えるようになります。ストレッチ中に気分や体調が悪くなったらすぐに中止し、ストレッチ後に症状が悪化したら以後控えるべきです。1種目あたり1~3セットを目安に、できる限り毎日おこなうことが推奨されますが、やりすぎには注意が必要です。
三角筋のストレッチを効果的に行うためには、肩甲骨周囲筋との連動性を理解することが重要です。肩甲骨安定化エクササイズは、上部僧帽筋への直接的なトレーニングを最小限にしながら、下部僧帽筋と前鋸筋を鍛える方法として有効です。肩甲骨機能訓練により、頸部・肩部の慢性疼痛が改善されることが報告されています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10983729/
肩関節の動きには、肩甲胸郭関節に作用する肩甲帯周囲筋が重要な役割を果たします。土台である肩甲骨周囲筋が安定していることで、肩関節がしっかり機能します。背面の僧帽筋や菱形筋、前面の前鋸筋などをそれぞれ訓練する必要があります。
肩峰下滑液包のモビライゼーションでは、三角筋をずらすことでその下の肩峰下滑液包に滑動が起こります。三角筋下滑液包は上腕骨と三角筋の間の滑動性を保障し、痛みの最盛期には水腫が存在する患者がいます。これらの解剖学的関係を理解することで、より効果的な治療アプローチが可能になります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjrmc/54/11/54_877/_pdf
肩甲骨安定化に基づく運動療法の効果に関する研究(英語論文)
肩甲骨安定化エクササイズが肩峰下インピンジメント症候群患者の痛み、姿勢、柔軟性、肩の可動性に与える効果を検証した無作為化臨床試験の論文です。
慢性頸部痛に対する肩甲骨治療の効果(英語論文)
慢性頸部痛患者に対する肩甲骨を標的とした治療の効果を評価したシステマティックレビューとメタアナリシスの論文です。

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