ロラタジンの絶対禁忌は、本剤の成分に対する過敏症の既往歴がある患者です。これには、ロラタジンだけでなく、その活性代謝物であるデスロラタジンに対する過敏症も含まれます。
過敏症の症状として以下が報告されています。
特に注意すべき点は、ロラタジンとデスロラタジン(デザレックス)は構造的に関連があるため、一方に過敏症がある場合は他方も禁忌となることです。臨床現場では、抗ヒスタミン薬の使用歴を詳細に聴取し、過去のアレルギー反応について十分な問診を行うことが重要です。
重篤な副作用として、ショック、アナフィラキシー、てんかん、痙攣、肝機能障害が報告されており、これらの症状が現れた場合は直ちに投与を中止し、適切な処置を行う必要があります。
肝機能障害患者では、ロラタジンの血漿中濃度が上昇するおそれがあります。これは、ロラタジンが主に肝臓で代謝されるためです。
肝機能障害の程度別対応。
肝機能障害患者におけるロラタジンおよび活性代謝物DCL(descarboethoxyloratadine)の半減期は、それぞれ平均24.1時間および37.1時間と延長することが報告されています。正常な肝機能を有する患者と比較して、薬物の蓄積リスクが高まるため、定期的な肝機能検査と臨床症状の観察が不可欠です。
また、肝機能障害患者では、併用薬との相互作用にも特に注意が必要です。CYP3A4やCYP2D6を阻害する薬剤との併用により、ロラタジンの血漿中濃度がさらに上昇する可能性があります。
腎機能障害患者では、ロラタジンおよび活性代謝物DCLの血漿中濃度が上昇するおそれがあります。これは、ロラタジンとその代謝物が主に腎臓から排泄されるためです。
腎機能障害の程度に応じた投与調整。
透析患者への投与については、ロラタジンは血液透析によってほとんど除去されないため、透析のタイミングに関係なく投与スケジュールを調整する必要があります。
腎機能障害患者では、薬物の蓄積により副作用のリスクが高まるため、以下の症状に特に注意が必要です。
定期的な腎機能検査(血清クレアチニン、BUN、クレアチニンクリアランス)の実施と、患者の臨床症状の綿密な観察が重要です。
てんかんの既往歴がある患者に対しては、十分な問診を行い、慎重な投与判断が必要です。ロラタジン投与により発作が現れたとの報告があるためです。
てんかん患者への投与時の注意点。
特に注意すべき患者群。
ロラタジンによる痙攣誘発の機序は完全には解明されていませんが、中枢神経系への直接的な影響や、他の薬剤との相互作用による可能性が考えられています。
投与中は以下の観察項目に注意。
万が一発作が起こった場合は、直ちに投与を中止し、適切な抗てんかん薬による治療を行う必要があります。
妊娠・授乳期におけるロラタジンの使用については、従来の添付文書記載以外にも考慮すべき独自の視点があります。
妊娠期の特殊な考慮事項:
妊婦または妊娠している可能性のある女性には、投与しないことが望ましいとされています。動物試験では催奇形性は認められていませんが、ラットで胎児への移行が報告されています。
しかし、臨床現場では以下の独自の判断要素も重要です。
授乳期の独自の管理戦略:
ロラタジンは母乳中に移行することが動物実験で報告されています。しかし、実際の臨床では以下の柔軟な対応も考慮されます。
妊娠・授乳期の代替治療選択肢:
これらの独自の視点は、画一的な禁忌判断ではなく、個々の患者の状況に応じた柔軟な治療選択を可能にします。特に、母体の生命に関わる重篤なアレルギー症状がある場合は、胎児・乳児への潜在的リスクと母体への治療効果を総合的に評価する必要があります。
妊娠・授乳期の患者には、十分なインフォームドコンセントを得た上で、定期的な経過観察と、必要に応じた産科・小児科との連携が重要です。