プレドニゾロンは合成糖質コルチコイドとして、細胞内のグルココルチコイド受容体(GR)と結合することで薬理効果を発揮します 。この受容体結合後、活性化された複合体が細胞核内に移行し、炎症性遺伝子の転写を抑制する一方で、抗炎症タンパク質の産生を促進します 。[1][2][3][4]
効果の発現時間は比較的早く、投与後30分程度で効果が現れることがあります 。プレドニゾロンの抗炎症作用は、ヒドロコルチゾンの3~5倍の強力さを持ちながら、ナトリウム貯留作用は相対的に弱いという特徴があります 。
参考)ステロイド内服薬「プレドニン(プレドニゾロン)」 - 巣鴨千…
プレドニゾロンは幅広い疾患に対して治療効果を示します。主な適応症には、関節リウマチなどの膠原病、ネフローゼ症候群、重症感染症、悪性リンパ腫、皮膚炎、気管支喘息、白血病などがあります 。特に自己免疫疾患において、免疫系の過剰な反応を抑制することで症状の改善を図ります。[7][8]
気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの呼吸器疾患では、気道の炎症を効果的に抑制し、急性増悪時の対応にも使用されます 。川崎病の急性期治療では、通常1日2mg/kg(最大60mg)を3回に分割して経口投与されます 。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00010794.pdf
通常、成人に対してはプレドニゾロンとして1日5~60mgを1~4回に分割して経口投与します 。投与量と投与回数は、治療対象疾患の重症度と患者の状態により決定されます 。[10][9]
投与方法には、1日1回投与(多くは朝投与)または隔日投与があり、分割投与と比較して副作用は軽減されますが、効果も減弱する傾向があります 。重症例では、医師の判断により高用量のプレドニゾロンが選択される場合があり、病院内で数日間の静脈内点滴投与(1日量30mg/kg以内、最大1g/day)が行われることもあります 。
参考)https://www.printo.it/pediatric-rheumatology/JP/info/pdf/15/4/%E8%96%AC%E7%89%A9%E7%99%82%E6%B3%95
ステロイド治療では、効果が認められた場合の減量スケジュールが重要です。一般的に、初期効果が確認できた4~7日後にプレドニゾロン換算で10mg/日または20%程度の減量を行い、その後は回復の程度に合わせて3~7日ごとに10mg/日程度ずつ減量していきます 。[11]
長期使用時の副作用対策として、定期的なモニタリングが必要です。プレドニゾロン5mg/日未満でも白内障のリスクが増加し、5~7.5mg/日から鼻出血や体重増加、7.5mg/日以上で抑うつや緑内障、血圧上昇の発症頻度が増加します 。また、プレドニゾロン10mg/日以上の投与では、結核のスクリーニング検査(TST やIGRA)の反応を抑制する可能性があるため、治療前に実施することが推奨されます 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsrcm/39/2/39_145/_pdf/-char/ja
プレドニゾロン治療において見落とされがちな重要な点として、薬剤の投与タイミングと生体リズムの関係があります。内因性ステロイドは日内変動を示すため、副作用軽減の目的で、朝に多く、夕方は少量または投与なしといった処方パターンを考慮することが推奨されます 。[13]
感染症予防の観点では、プレドニゾロン20mg/日以上を4週間以上使用する場合、ニューモシスチス肺炎の発症リスクが高まるため、ST合剤による予防投与の検討が必要です 。さらに、プレドニゾロン5mg/日未満でも心血管イベントのリスク(HR=1.74)や入院を要する感染症リスク(adjusted HR=1.29)が増加することが近年報告されており、少量使用時でも慎重な経過観察が求められます 。
参考)https://www.msdconnect.jp/wp-content/uploads/sites/5/2025/09/irae-steroid-management.pdf