尿路結石 症状と原因から予防対策まで

尿路結石の症状や原因、形成メカニズムから予防法まで医療従事者向けに詳しく解説。激しい痛みを引き起こすこの疾患について、あなたはどれだけ知っていますか?

尿路結石の症状と原因

尿路結石の基本情報
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発症率

男性は女性の約2.5倍の発症率。年間罹患率は増加傾向にあり、男性は118人/10万人(1995年)。

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主な症状

側腹部から背中にかけての激痛(疝痛発作)、血尿、吐き気・嘔吐、頻尿など。

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主な原因

動物性たんぱく質の過剰摂取、水分不足、シュウ酸の摂り過ぎ、代謝異常など。

尿路結石の基礎知識と発症メカニズム

尿路結石とは、腎臓から尿道までの尿路にできる石のような固い塊のことです。腎臓で作られた尿が尿道から排出される際に通る道(腎臓・尿管・膀胱・尿道)のどこかに結石が形成されると、尿の流れを妨げ、様々な症状を引き起こします。結石ができる場所によって、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石と呼び名が変わります。

 

尿路結石の95%は上部尿路結石(腎臓と尿管)であり、特に30~60歳代の壮年男性と閉経後の女性に高頻度で見られます。男女比はおよそ2.5:1で、男性の罹患率が高いのは、男性ホルモンが結石の成分となるシュウ酸を増やすことが一因と考えられています。

 

結石の形成メカニズムは主に以下のプロセスで進みます。

  1. 腎臓の遠位尿細管から集合管、乳頭上皮において、シュウ酸カルシウムやリン酸カルシウムなどが尿中で飽和状態になる
  2. 結晶が析出し、結晶核が形成される
  3. 結晶核の表面に晶質(シュウ酸、リン酸、カルシウム)が付着して結晶が成長・凝集
  4. 凝集塊をもとに結石が形成される

微小な結晶や結石は通常、無症状のうちに尿中に排泄されますが、これらにさらに晶質や有機物が付着して腎杯内で成長すると、排出時に血尿や疼痛などの症状を引き起こします。

 

特殊なケースとして、腎結石が腎臓内で増大し鋳型状となった「サンゴ状結石」や、尿管内の同一部位に長期間位置して尿管との癒着が強くなった「嵌頓(かんとん)結石」があります。これらは治療が困難なケースが多いため、早期発見と適切な対応が重要です。

 

尿路結石の主な症状と痛みの特徴

尿路結石の最も特徴的な症状は、突然発症する激しい痛み(疝痛発作)です。この痛みは、結石が尿路を移動する際に尿路の内壁を傷つけたり、尿路を閉塞させて内圧が上昇することで引き起こされます。

 

結石の大きさや位置によって症状は異なりますが、主な症状は以下の通りです。

  • 疝痛発作:腰背部から側腹部、下腹部にかけての激しい痛み。通常3~4時間持続し、夜間や早朝に発生することが多い。痛みが強すぎて失神することもある。
  • 血尿:肉眼で確認できる血尿や、顕微鏡でのみ確認できる顕微鏡的血尿がある。
  • 吐き気・嘔吐:激しい痛みに伴って発生することが多い。
  • 排尿障害:頻尿、排尿痛、残尿感、尿流途絶など。特に下部尿管や膀胱に結石がある場合に多い。
  • 発熱:尿路感染を併発した場合、38~40度の高熱を伴うことがある。

注目すべき点として、腎結石は無症状で経過することが多く、検診などで偶然発見されることもあります。また、腰部の鈍痛のみを自覚したり、結石周囲の細菌感染のために膿尿や細菌尿のみを認めるケースもあります。

 

結石の大きさと症状の関係も重要です。一般的に直径5mm未満の小さな結石は自然排石の可能性が高く、一過性の症状で済むことが多いですが、5mm以上の結石では自然排石が難しく、持続的な症状を引き起こす傾向があります。特に10mm以上の結石では、積極的な治療が必要となるケースがほとんどです。

 

疼痛の特徴として、結石の位置が移動すると痛みの場所も変化することが挙げられます。上部尿管の結石では腰背部痛が、中部尿管では側腹部痛が、下部尿管では下腹部や会陰部の痛みが主症状となります。

 

尿路結石の種類と形成要因

尿路結石は成分によって複数の種類に分類され、それぞれ形成要因が異なります。主な結石の種類と形成要因について詳しく見ていきましょう。

 

1. シュウ酸カルシウム結石(最も一般的)
全尿路結石の約70~80%を占める最も一般的な結石です。

 

形成要因。

  • 高シュウ酸食品の過剰摂取(ホウレンソウ、タケノコ、サツマイモ、紅茶、緑茶、チョコレートなど)
  • 動物性タンパク質・脂肪の過剰摂取(尿中シュウ酸濃度を上昇させる)
  • 水分摂取不足
  • 遺伝的要因

2. リン酸カルシウム結石
形成要因。

  • アルカリ尿(尿のpHが高い状態)
  • 副甲状腺機能亢進症などによる高カルシウム血症
  • 尿路感染症

3. 尿酸結石
形成要因。

  • プリン体を多く含む食品の過剰摂取(ビール、肉類、魚の干物、シイタケなど)
  • 酸性尿
  • 痛風高尿酸血症
  • 過度の運動や無酸素性運動(尿酸値上昇の原因となる)

4. リン酸マグネシウムアンモニウム結石(感染結石)
形成要因。

  • 尿路感染症(特に尿素分解酵素を持つ細菌による感染)
  • アルカリ尿
  • 尿路の通過障害

5. シスチン結石
形成要因。

  • シスチン尿症(遺伝性疾患)
  • 酸性尿

結石形成を促進する全般的な要因として以下も重要です。

  • 代謝異常:高カルシウム尿症、高シュウ酸尿症、高尿酸尿症、低クエン酸尿症、低マグネシウム尿症などの代謝異常は結石形成の重要なリスク因子です。
  • 尿路の通過障害や変形:水腎症、前立腺肥大症、神経因性膀胱などがあると尿流が停滞し、結石が形成されやすくなります。
  • 長期臥床:尿流停滞と骨吸収の促進が結石形成につながります。
  • 薬剤:一部の薬剤(緑内障治療薬アセタゾラミド、活性型ビタミンD、尿酸排泄促進剤、AIDS治療薬インジナビルなど)が結石形成を促進することがあります。

興味深いことに、近年では肥満や高血圧、糖尿病などのメタボリックシンドロームと尿路結石の関連性が報告されています。これは食生活の欧米化に伴い、日本でも尿路結石患者が増加している一因と考えられています。

 

尿路結石の診断方法と最新検査技術

尿路結石の診断には、患者の症状や病歴の聴取に加えて、いくつかの検査方法が用いられます。それぞれの検査の特徴と有用性について説明します。

 

画像診断法

  1. 単純CT検査(非造影CT)

    尿路結石の標準的な診断方法として広く用いられています。感度・特異度ともに非常に高く(95%以上)、ほぼすべての結石を検出できます。また結石の密度、内部構造、皮膚からの距離などを測定でき、治療方針の決定にも有用です。

     

    欠点としては放射線被曝量が多いことや、腎機能や尿路の形態に関する情報が十分得られないことが挙げられます。

     

  2. 低線量CT(Low-dose CT)

    通常のCTより被曝量を減少させた検査法です。3mm以上の尿路結石については通常のCTと同様の診断率が得られます。若年患者や妊娠可能年齢の女性、繰り返し検査が必要な患者に特に有用です。

     

  3. 超音波検査

    放射線被曝がなく、無侵襲な検査法です。腎臓、上部尿管、膀胱近傍の結石を識別でき、上部尿路の閉塞による水腎・水尿管の程度を診断するのに有用です。5mm以上の結石では感度・特異度ともに95%以上ですが、すべての部位の結石を同定できるわけではありません。

     

    スクリーニングや妊婦、小児の検査に適しています。

     

  4. 腹部単純X線(KUB: Kidney, Ureter, Bladder)

    結石の経過観察に用いられる基本的な検査です。レントゲン透過性の有無で結石の成分についても鑑別できますが、感度・特異度はCTや超音波より低めです。

     

  5. 静脈性尿路造影(IVU: Intravenous Urography)

    造影剤を静脈注射して尿路の形態や機能を評価します。上部尿路の通過障害や尿路奇形などの診断が可能で、治療計画の策定に有用です。ただし造影剤アレルギーのリスクがあります。

     

尿検査・血液検査

  • 尿検査:血尿の有無、pH、結晶成分の検出、細菌感染の確認などを行います。
  • 血液検査:カルシウム、リン、尿酸値などの測定で代謝異常の評価を行います。

最新の診断技術

  • デュアルエネルギーCT:結石の組成分析が可能で、治療方針の決定に役立ちます。
  • MR Urography:放射線被曝やヨード造影剤を使用せずに尿路の評価が可能です。
  • 内視鏡的検査:経尿道的に内視鏡を挿入して直接結石を観察する方法で、同時に治療も行えます。

診断の進め方としては、まず疝痛発作や血尿などの典型的な症状がある場合、単純CTまたは超音波検査で結石の有無を確認します。結石が確認された場合は、サイズ、位置、数、閉塞の程度を評価し、治療方針を決定します。

 

また、再発予防のためには、排出された結石の成分分析を行うことが重要です。これにより、結石形成の原因となる代謝異常や生活習慣を特定し、適切な予防策を講じることができます。

 

尿路結石の予防法と慢性腎臓病との関連性

尿路結石は再発率が高い疾患であり、5年以内の再発率は約45%に達します。そのため、初回発症後の適切な予防策が非常に重要です。また、近年の研究で尿路結石と慢性腎臓病(CKD)との関連性が明らかになってきており、この観点からも予防の意義は大きいといえます。

 

基本的な予防法

  1. 十分な水分摂取

    水分摂取量の不足は結石形成の最も重要なリスク因子の一つです。水分摂取量が少ないと尿量も減少し、尿中の結晶成分が濃縮されて結石が形成されやすくなります。

     

    推奨される水分摂取量は、食事を除いて1日2リットル以上です。特に、汗をかいた後や暑い季節、運動後の水分補給が重要です。水分摂取の目安として、「無色または淡黄色の尿が出るように飲む」ことが推奨されています。

     

  2. 食事療法
    • 動物性たんぱく質・脂肪の適正化:過剰摂取は尿中のシュウ酸・尿酸を増やし、結晶形成を促進します。
    • シュウ酸摂取の調整:ホウレンソウ、タケノコ、紅茶、コーヒー、チョコレート、ココアなどシュウ酸を多く含む食品の過剰摂取を避けます。野菜に含まれるシュウ酸はゆでることで減少させることができます。
    • カルシウム摂取の適正化:以前はカルシウム制限が推奨されていましたが、現在はカルシウムがシュウ酸の腸管からの吸収を抑制することが分かっています。1日600~800mgのカルシウム摂取が推奨されています。
    • クエン酸の摂取:クエン酸はカルシウムの結晶化を抑制する効果があります。柑橘類などの果物や野菜に多く含まれますが、シュウ酸も同時に摂りすぎないように注意が必要です。
    • 塩分制限:高塩分食はカルシウムの尿中排泄を増加させるため、塩分摂取の制限も重要です。
  3. 生活習慣の改善
    • 適度な運動:肥満は尿路結石のリスク因子であり、適度な運動による体重管理が重要です。ただし、過度な運動や無酸素性運動は特に尿酸結石のリスクを高める可能性があるので注意が必要です。
    • メタボリックシンドロームの管理:肥満、高血圧、糖尿病などの管理も結石予防につながります。
    • 就寝タイミングの調整:夕食後すぐに就寝すると、夜間の尿濃縮と結石形成のリスクが高まります。

尿路結石と慢性腎臓病(CKD)の関連性
近年の研究で、尿路結石とCKDに双方向の関連性があることが明らかになってきました。尿路結石患者はCKD発症リスクが1.5~2倍高く、特に複数回の結石イベントを経験した患者や、感染結石や閉塞を伴う結石を持つ患者ではリスクがさらに高まります。

 

尿路結石がCKDに至るメカニズム

  • 結石による物理的な腎障害
  • 繰り返す尿路感染
  • 閉塞性腎症による腎機能低下
  • 結石治療(特にESWLや外科的治療)による腎実質へのダメージ
  • 両疾患に共通する代謝異常(高カルシウム尿症など)

などが考えられています。

 

逆に、CKDも尿路結石のリスク因子となります。CKDでは。

  • 尿中クエン酸の減少
  • アンモニア排泄の低下による尿pHの変化
  • ネフロン数減少による尿組成の変化

などが結石形成を促進する可能性があります。

 

このような相互関連から、尿路結石患者の管理においては腎機能のモニタリングが重要であり、CKD患者では尿路結石の予防と早期発見に注意を払う必要があります。

 

医療従事者は、尿路結石患者に対して適切な生活指導を行うとともに、定期的な腎機能評価を行い、CKDの早期発見と進行予防に努めることが重要です。

 

次の論文では、尿路結石とCKDの関連性について詳しく述べられています。
エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018
以上のように、尿路結石の予防は単に結石の再発を防ぐだけでなく、CKDなどの腎疾患予防という観点からも非常に重要です。適切な水分摂取、バランスの取れた食事、健康的な生活習慣の維持が、結石予防の基本となります。