尿道カテーテルの交換頻度は、使用されている材質によって大きく異なります。シリコン製カテーテルは生体適合性に優れ、表面が滑らかで細菌の付着や結石形成が少ないため、4週間(約1ヶ月)ごとの交換が一般的です。一方、ラテックス製カテーテルは材質の特性上、浮遊物や結石が付着しやすく、2週間ごとの交換が推奨されています。シリコン製カテーテルはラテックス製に比べて高価ですが、長期留置において合併症の発生率が低く、患者の負担軽減にもつながります。
参考)尿道カテーテル留置が長期になる 場合、定期的な交換が必要?
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材質の選択は、留置期間だけでなく患者のアレルギー歴も考慮する必要があります。ラテックスアレルギーのある患者には必ずシリコン製カテーテルを使用し、アレルギー反応による合併症を回避します。カテーテルの表面コーティングにも種類があり、親水性コーティングやシルバーコーティングを施したものは、細菌の増殖を抑制する効果が高く、感染リスクの高い患者に適しています。youtube
参考)膀胱カテーテル挿入 - 03. 泌尿器疾患 - MSDマニュ…
医療機関によっては、完全閉鎖式カテーテルと半閉鎖式カテーテルで交換頻度を区別しており、完全閉鎖式は4週間、半閉鎖式は2週間を原則としているところもあります。ただし、これらはあくまで目安であり、患者個々の状態に応じた柔軟な対応が求められます。
参考)https://www2.huhp.hokudai.ac.jp/~ict-w/kansen/3.02_nyoudouryuuticatheter.pdf
カテーテルの定期的な交換よりも重要なのが、閉塞や機能不全が生じた際の適切な交換判断です。カテーテル閉塞の主な原因は、尿中の成分が結晶化して形成される尿砂や結石、血液凝固塊、膿などです。閉塞の兆候としては、尿流出の減少または停止、膀胱の膨満感、カテーテル周囲からの尿漏れなどが挙げられます。
参考)バルーンカテーテルから尿漏れしているとき、どうしたらいい?
閉塞が疑われる場合は、まずカテーテルの屈曲や採尿バッグの位置異常がないかを確認します。物理的な問題がない場合は、カテーテル内部の閉塞を疑い、速やかに交換を検討する必要があります。特に尿路感染症を繰り返している患者や、尿中に浮遊物が多い患者では、閉塞しやすい傾向があり、場合によっては1週間ごとの交換が必要になることもあります。
参考)https://www.kansensho.or.jp/sisetunai/kosyu/pdf/q037.pdf
カテーテル閉塞の予防として、十分な水分摂取による尿量確保と、カテーテルと採尿バッグの適切な位置管理が重要です。採尿バッグは常に膀胱より低い位置に保ち、尿の逆流を防ぐことで細菌の侵入リスクを軽減します。膀胱洗浄は閉鎖式システムを破綻させる行為であり、経尿道的手術後など特別な場合を除いて推奨されません。
参考)https://www.info-cdcwatch.jp/views/pdf/CDC_guideline2009.pdf
長期的に尿道カテーテルを留置している患者では、感染予防が最も重要な管理目標となります。カテーテル関連尿路感染(CAUTI)は、留置期間が長くなるほど発生リスクが上昇し、留置後30日で細菌尿のリスクが顕著に高まります。しかし、興味深いことに、定期的な頻回交換によって感染を予防できるというエビデンスは存在しません。
参考)在宅での膀胱留置カテーテル管理のポイント:トラブル回避と訪問…
むしろ、感染予防には閉鎖式ドレナージシステムの維持が最も効果的です。カテーテルと採尿バッグの接続部を不必要に開放することは、細菌侵入の経路を作ることになるため避けるべきです。採尿バッグから尿を排出する際も、先端が床や回収容器に触れないよう細心の注意を払い、無菌操作を徹底します。
外尿道口周囲の消毒は、細菌尿の発生予防に効果がないことが明らかになっています。日常的な入浴やシャワー時の通常の洗浄で十分であり、過度な消毒は皮膚トラブルを招く可能性があります。カテーテル交換は、流出不良、尿漏れ、閉塞、著しい混濁などの症状が現れた場合に実施するのが原則です。
CDC「カテーテル関連尿路感染予防ガイドライン2009」:感染予防の標準的な指針と勧告が詳細に記載されています
カテーテル交換時の適切な手順と注意点を守ることは、合併症予防に直結します。交換前には必ず患者への十分な説明を行い、同意を得た上で、患者の羞恥心に配慮したプライバシー保護環境を整えます。手指衛生を徹底し、滅菌手袋を装着して無菌操作で実施することが基本です。
参考)膀胱留置カテーテルとは|利用する目的や種類・手順・注意点を解…
挿入前にはバルーンの機能確認を必ず行い、蒸留水を注入して異常がないことを確認します。確認後はシリンジに蒸留水を戻し、カテーテルに潤滑剤を塗布してから挿入します。男性の場合は尿道口から包皮に向かって同心円状に消毒し、女性の場合は前から後ろに向かって両側小陰唇、次に中央部の尿道口の順に消毒します。
参考)【図解】膀胱留置カテーテルの挿入手順~根拠がわかる看護技術
挿入中に異常な抵抗を感じた場合は、決して無理に押し進めてはいけません。尿道損傷や偽尿道形成のリスクがあるため、一旦抜去して医師に相談し、判断を仰ぐことが重要です。尿の流出を確認してからバルーンを膨らませ、正常に留置されていることを確認した後にカテーテルを固定します。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC2692169/
在宅療養中の患者において、カテーテル管理は訪問看護師や医師の重要な役割となります。在宅でのカテーテル交換は原則として医師が実施し、交換頻度は3~4週間に1回程度が目安ですが、患者の状態によって調整が必要です。尿路感染症のリスクが高い場合や、瘻管の詰まりや外れが起こりやすい場合は、交換頻度を短くする必要があります。
参考)訪問診療における尿道カテーテル href="https://fujicl.or.jp/home-visit-medical-care-urethral-catheter-management/" target="_blank">https://fujicl.or.jp/home-visit-medical-care-urethral-catheter-management/amp;#8211; 安全管理と緊…
カテーテルが抜けてしまった場合、放置すると穴が塞がってしまう可能性があるため、速やかな対応が求められます。抜けた際はガーゼを当てて、かかりつけの医療機関に連絡して受診することが推奨されます。一部の患者では、医療機関の指導のもとで家族や患者本人がカテーテルを挿入できるよう訓練を受けることもありますが、その場合も無菌操作の徹底が絶対条件です。
参考)膀胱ろうとは?在宅でのカテーテル交換時の注意点を解説
訪問看護師は、定期訪問時にカテーテルの固定状態、尿の性状、採尿バッグの管理状況、皮膚トラブルの有無などを綿密に観察します。尿の混濁や悪臭、浮遊物の増加、尿量の減少などの異常を早期に発見し、感染症の兆候があれば速やかに医師に報告して適切な処置を受けることが重要です。
訪問診療における尿道カテーテル管理:安全管理と緊急時対応の実践的な情報が掲載されています
カテーテル交換時期を判断する上で、合併症のサインを正確に見極めることが医療従事者には求められます。最も頻度の高い合併症は尿路感染症で、発熱、悪寒、尿の混濁、悪臭、血尿などの症状が現れます。尿路感染症による膀胱収縮や膿によるカテーテル閉塞は、カテーテル周囲からの尿漏れの主要な原因となります。
カテーテル周囲からの尿漏れが生じた場合、多くの医療従事者はカテーテルのサイズを大きくすることを考えがちですが、実際には尿漏れの原因の多くは感染や閉塞であり、サイズ変更では改善しません。むしろ、原因を究明してカテーテルを交換し、必要に応じて抗菌薬治療を開始することが正しい対応です。
意外に見落とされがちなのが、カテーテル自体の劣化や変色です。採尿バッグの著しい着色や悪臭がある場合、カテーテル内部でバイオフィルムが形成されている可能性が高く、交換の適応となります。バイオフィルムは細菌が集団で形成する保護層で、抗菌薬が効きにくく、感染症の原因となります。定期的な観察による早期発見が、重篤な合併症を防ぐ鍵となります。
参考)https://assets.cureus.com/uploads/review_article/pdf/112836/20221116-13398-1krcjv0.pdf