無菌操作とは、滅菌された物品に微生物が付着しないように、滅菌状態を保ちながら物品を取り扱う手技のことです。この技術は縫合などの創傷処置、手術、出産、注射、気管吸引、カテーテル挿入のほか、骨髄穿刺や腰椎穿刺といった身体に針を挿入するような検査の際に行われます。
参考)無菌操作|目的、操作の手順、注意点など
無菌操作の主な目的は、患者を感染から守ることです。本来無菌状態の部位に菌が侵入すると、感染リスクが急激に高まり、侵入した菌が血流や組織に広がれば重篤な合併症や全身感染症が引き起こされる可能性があります。
参考)無菌操作ちゃんと理解していますか?感染予防のための重要なポイ…
医療現場では、以下のような場面で無菌操作が必須となります:
参考)無菌操作はなぜ必要?目的を徹底解説 - しごとレトリバーガイ…
無菌操作を行う際には、滅菌されたガウンや手袋を着用し、清潔区域と汚染区域を厳密に区別することが重要です。滅菌手袋を装着したら、周囲への接触を防ぐため手を腰から上の全面・指先を上に保持する必要があります。
参考)【看護師向け】滅菌操作の基本と注意点:清潔区域・汚染区域の徹…
滅菌操作とは、対象物に存在する全ての微生物を、有害であるか無害であるかに関わらず殺滅または除去するプロセスです。日本薬局方では、滅菌後の微生物の数を滅菌前と比較して100万分の1以下に減らす水準が求められています。
参考)滅菌とは?除菌・殺菌・抗菌との違いや方法の種類、運用のポイン…
医療現場で用いられる代表的な滅菌方法には以下のものがあります:
参考)分子生物学実験の基本 滅菌操作をマスターしよう - M-hu…
滅菌操作は、高圧蒸気を用いるため適用範囲が幅広く滅菌力が高いというメリットがありますが、湿度・温度・耐圧などに制限がある器具や容器には使用できないというデメリットもあります。プラスチック素材の場合は、素材によってオートクレーブの可否が異なるため注意が必要です。
無菌操作と滅菌操作は、医療現場で実施されるタイミングと目的が大きく異なります。滅菌操作は器具や物品を使用する「前」に行われる準備段階のプロセスであり、無菌操作は滅菌済みの器具や物品を患者に使用する「際」に行われる手技です。
滅菌操作が適用される主な場面:
無菌操作が適用される主な場面:
参考)無菌操作の基礎の基礎 - ナースハッピーライフ
中心静脈カテーテル挿入時には、挿入部位の周囲を広く消毒することが感染予防に必須の手順となっています。術者にとって消毒された部位が広いほど操作がしやすくなり、感染リスクも低減します。
参考)挿入部位の周囲を広く消毒するのはなぜ?|中心静脈栄養法
無菌操作を成功させるためには、清潔区域と汚染区域の明確な区別が不可欠です。この区別を理解していないと、せっかく滅菌された器具も容易に汚染されてしまいます。
参考)無菌操作の看護技術|目的や2つの方法・手順、注意点
清潔・汚染の定義:
無菌操作全てに共通する注意点として、以下のポイントを押さえる必要があります:
滅菌手袋装着時の特別な注意点としては、滅菌手袋の折り返し部分は不潔であるとみなすことが重要です。また、滅菌ガウン装着後の滅菌手袋の装着時には、ガウンの袖口を手袋の中に入れて隙間をなくす必要があります。
参考)ガウンテクニック手順の基本から応用まで|滅菌ガウンの正しい着…
手袋がガウンの袖を5cm以上覆うように重ね、動作時のずれを防止することで、空気の流入や汚染を阻止できます。手首を動かしても隙間ができない、手袋がずれ落ちない、ガウンの袖が見えないという3点をチェックすることが推奨されています。
無菌操作と滅菌操作は個別のスキルではなく、連携して機能することで最大の感染予防効果を発揮します。医療従事者は両者の違いを理解した上で、臨床場面に応じた適切な対応を取る必要があります。
マキシマルバリアプリコーション(MBP)の実践例:
参考)https://www.matsuyoshi.co.jp/assets/pdf/manual/man_00310247.pdf
中心静脈カテーテル挿入時には、高度無菌遮断予防策としてMBPが適用されます。この方法では、キャップ、マスク、滅菌ガウン、大きな滅菌ドレープを揃えたセットが使用されます。
参考)滅菌MBPキット|医療・介護施設向け製品|イワツキ株式会社
手順としては、まずパックを開封する前にカテーテル挿入部および周囲皮膚の消毒を行い、その後マスクとキャップを装着します。次にアルコール製剤で衛生学的に手指衛生を行った後、介助者が清潔操作に注意しながらガウンを術者に渡します。
感染リスクが高い部位での対策:
| 部位 | リスクの理由 | 主な処置 | 感染時の影響 |
|---|---|---|---|
| 血管内 | 血流に直接アクセス | 静脈注射、中心静脈カテーテル | 敗血症、血流感染 |
| 尿路 | 細菌が繁殖しやすい | 導尿、膀胱留置カテーテル | 尿路感染症 |
| 呼吸器 | 肺への直接影響 | 気管内挿管、吸引 | 肺炎、呼吸器感染 |
| 手術部位 | 組織が露出 | 外科手術、創傷処置 | 手術部位感染 |
これらの高リスク部位での処置時には、滅菌操作で準備した器具を無菌操作で取り扱うという二段階の感染予防戦略が必須です。無菌操作が不十分で骨髄炎へ進展した報告では、術後2週間以内に下顎骨の疼痛・腫脹が増悪し、再入院率が12.5%に達したという事例もあります。
参考)歯根端切除術のリスクと合併症:知っておくべき5つのポイント
手指衛生のタイミングも重要で、「清潔/無菌操作の前」という瞬間には必ず手袋を使用する前であっても手指消毒を実施する必要があります。手袋を装着して清潔/無菌操作を行う場合は、手袋着用直前に手指衛生を実施し、処置・ケアの開始前に患者周囲環境や物品へ触れないようにすることが求められます。
参考)http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/shushi_support_all.pdf
無菌操作においては「迷ったら不潔とみなす」という原則を徹底し、汚染が疑われる場合には即座に作業を中断し、指導者に報告した上で手袋・ガウンの再装着を行うことが安全な医療提供につながります。
参考)看護師2年目のための無菌操作|その手順、合ってる?不安が自信…
参考リンク。
無菌操作の目的と手順に関する詳細情報 - ナース専科
中心静脈カテーテル挿入時の無菌的操作とリスク管理 - 看護roo!
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