プロポフォール使用時は専任の麻酔管理医が必須です。

内視鏡的粘膜切除術(EMR)では、一般的に意識下鎮静が選択されます。意識下鎮静とは、問いかけや触覚刺激に対して患者が意図的に反応できる状態を維持しながら、不安や苦痛を軽減する麻酔レベルです。これは全身麻酔とは異なり、自発呼吸が適切に維持され、気道確保の処置を必要としないという特徴があります。
関連)https://www.onaka-kenko.com/endoscopy/endoscopy-sedation.html
一方、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)のような侵襲度の高い治療では、深鎮静または全身麻酔相当の不動化が必要となります。深鎮静では繰り返しまたは痛みを伴う刺激に反応できるレベルまで意識が低下し、気道確保が必要になることがあります。
関連)https://www.jges.net/citizen/faq/general_06
治療時間もポイントです。
EMRの治療時間は通常10分~30分程度ですが、ESDでは60分以上かかることが多く、長時間の処置では患者の安静維持のために深い鎮静が選択されます。難しいケースでは手術室で全身麻酔下にESDを行うこともあります。
関連)https://toranomon.kkr.or.jp/cms/innovate/esd/
麻酔方法の選択基準
| 治療法 | 対象サイズ | 治療時間 | 推奨麻酔レベル | 気道管理 |
|---|---|---|---|---|
| EMR | 最大20mm程度 | 10~30分 | 意識下鎮静 | 不要 |
| ESD | 20mm以上 | 60分以上 | 深鎮静~全身麻酔 | 必要な場合あり |
プロポフォール(商品名:ディプリバン)は、全身麻酔で最も使用される鎮静剤ですが、近年は内視鏡診療でも使用機会が増えています。半減期が短く、覚醒が速やかであるという利点がありますが、鎮痛作用を持たないため、必要に応じて鎮痛剤を併用します。
関連)https://shikokugets.sakura.ne.jp/dai18shikokuendai.pdf
プロポフォール使用時の重要な注意点があります。添付文書には「本剤の使用に際しては、一般の全身麻酔剤と同様、麻酔開始より患者が完全に覚醒するまで、麻酔技術に熟練した医師が専任で患者の全身状態を注意深く監視する」ことが明記されています。
つまり専任の監視が必須です。
高齢者や基礎疾患を持つ患者では、プロポフォールの減量が必要です。これは呼吸抑制や循環動態への影響を最小限に抑えるためです。過去の内視鏡検査で痛みが強かった方、検査への不安が強い方、腹部手術歴があり癒着の恐れがある方などには、鎮静剤に加えて鎮痛剤を併用することがあります。
関連)https://www.8chobori-naishikyo.clinic/column/20250912
局所麻酔との併用も一般的です。上部消化管内視鏡では、のど(喉)や鼻の感覚を一時的に麻痺させる局所麻酔を行い、大腸内視鏡では肛門からの挿入時の違和感を軽減するために使用されます。
関連)https://www.onaka-kenko.com/endoscopy/endoscopy-sedation.html
必要以上に麻酔を強くすると意識レベルを維持しづらくなるため、安全性を考慮した慎重な調整が行われます。静脈麻酔を用いて眠った状態で行うケースでは、患者の年齢、体重、全身状態に応じた投与量の個別化が重要です。
関連)https://naishikyo.or.jp/endoscopy/endoscopic-surgery/
日本消化器内視鏡学会「内視鏡検査で鎮静薬を使用することのよい点と悪い点」
鎮静レベルの定義と安全管理の基準について詳細に記載されています。
大腸の内視鏡治療における代表的な合併症は穿孔と出血です。穿孔率は、EMRで0~0.8%、ESDで2~10.7%と報告されており、ESDの方が高い傾向にあります。穿孔は消化管の壁に穴が開いてしまう重篤な合併症で、頻度は1%未満ですが、発生した場合は腹膜炎を起こす可能性があり緊急対応が必要です。
関連)https://naishikyo.or.jp/endoscopy/emr-endoscopic-mucosal-resection/
後出血率はEMRで1~1.8%、ESDで0.7~7.1%と報告されています。別の報告では、EMRに伴う術後出血が0.97~1.93%、消化管穿孔が0.02~0.08%という数値もあります。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.19020/J05332.2015380063
リスク因子を把握しましょう。
出血リスクが特に高いのは以下の患者群です:
関連)http://syoukaki-oita.com/treatment/t_result02.php
抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)の内服は出血の重要なリスク因子です。抗血栓薬を中止することが望ましいですが、休薬による血栓塞栓症(脳梗塞、心筋梗塞、肺塞栓など)の危険が高い場合は、内服を継続したまま治療を行うこともあります。
関連)https://toranomon.kkr.or.jp/cms/departments/esophageal-cancer/endoscope.html
合併症予防のために、医療機関では様々な対策を講じています。粘膜下層への十分な液体注入による安全な切離層の確保、太い血管が見える場合の予防的な止血処置などが代表例です。治療中に穿孔をきたした場合は、クリップによる穿孔閉鎖を試みます。
関連)https://naishikyo.or.jp/endoscopy/emr-endoscopic-mucosal-resection/
抗血小板薬・抗凝固薬(バイアスピリン、ワーファリン、プラビックスなど)は血液をサラサラにする効果があるため、ポリープ切除や生検を行った後の出血リスクを高めます。特に、胃や大腸の粘膜にできた傷口からの出血が止まりにくくなることがあるため、医師の指示を仰いで服用の可否を確認する必要があります。
関連)https://www.ikebukuro-cl.com/media/endoscope/436/
血をサラサラにする薬を服用している場合は、必ず医師の指示に従い、服用を再開するタイミングを確認しましょう。休薬期間と再開時期の判断は、治療した病変のサイズ、個数、患者の血栓リスクを総合的に評価して決定されます。
関連)https://www.ikebukuro-cl.com/media/endoscope/436/
出血が止まりにくくなるリスク。
NSAIDs(ロキソニン、イブプロフェン、ボルタレンなど)も注意が必要です。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は胃の粘膜を刺激し、炎症や出血のリスクを高めることがあります。そのため、胃カメラ後や大腸カメラ後には、できるだけ服用を避け、痛み止めが必要な場合はアセトアミノフェン(カロナールなど)を使用するのが望ましいとされています。
関連)https://www.ikebukuro-cl.com/media/endoscope/436/
虎の門病院「食道がん治療センター:内視鏡的手術」
抗血栓薬の休薬判断基準と血栓塞栓症リスクの評価方法について参考になります。
抗血栓薬を中止することが望ましいですが、休薬による血栓塞栓症の危険が高い場合は、内服を継続したまま治療を行うという選択肢もあります。この判断には循環器科や脳神経内科との連携が重要です。
関連)https://toranomon.kkr.or.jp/cms/departments/esophageal-cancer/endoscope.html
術後の慎重な管理が求められます。血をサラサラにする薬を服用している場合は特に、出血兆候の早期発見のための患者教育と、医療スタッフによる注意深い観察が転帰を左右します。
EMRは比較的短時間(10~30分程度)で終了するため、意識下鎮静で十分なケースが多いです。EMRはスネアで病変を絞り取る方法で、操作が比較的シンプルであり、患者の協力が得られる程度の鎮静レベルで安全に施行できます。
関連)https://naishikyo.or.jp/endoscopy/colon-polyp-removal-emr/
対してESDは治療時間が長いです。
ESDは内視鏡の先端から出す専用の電気メス(ナイフ)を用いて、病変周囲の粘膜を切開し、さらに粘膜下層を少しずつ剥ぎ取っていく手技です。治療時間は60分以上かかることが多く、病変のサイズや部位によってはさらに長時間を要します。
関連)https://naishikyo.or.jp/endoscopy/colon-polyp-removal-emr/
難しいケースでは全身麻酔をかけて手術室でESDを行うこともありますが、通常は内視鏡室で鎮静剤を使用して治療を行います。これにより手術中の体への負担をより軽減できるというメリットがあります。
関連)https://toranomon.kkr.or.jp/cms/innovate/esd/
EMRとESDの麻酔管理比較
| 項目 | EMR | ESD |
|---|---|---|
| 治療時間 | 10~30分 | 60分以上 |
| 推奨鎮静レベル | 意識下鎮静 | 深鎮静~全身麻酔 |
| 実施場所 | 内視鏡室 | 内視鏡室(難例は手術室) |
| 穿孔率 | 0~0.8% | 2~10.7% |
| 後出血率 | 1~1.8% | 0.7~7.1% |
術後1週間は合併症リスク期間です。
前述した合併症(出血、穿孔、腹痛)は術後1週間前後までは起こる可能性があります。この期間中の生活指導と、異常時の連絡体制の確立が重要です。患者には腹痛、血便、発熱などの症状が出現した場合の対処法を具体的に説明する必要があります。
関連)http://syoukaki-oita.com/treatment/t_result02.php
食事制限も重要な管理項目です。治療後は一定期間の食事制限や安静が必要であり、刺激物やアルコールの摂取制限、激しい運動の回避などが指導されます。食事の段階的な進め方について、患者が理解しやすい具体的な指示を提供することが望ましいです。
関連)https://www.mera.co.jp/column/15935/
定期的な内視鏡によるフォローアップも欠かせません。特に大きな病変を分割切除した場合は再発の可能性があるため、計画的なサーベイランスが必要です。
関連)https://www.mera.co.jp/column/15935/
鎮静剤使用後の注意点として、当日の自動車運転は禁止です。鎮静剤や鎮痛剤の影響が残っている可能性があるため、公共交通機関やタクシーの利用、または家族の送迎が必要です。
EMRよりも出血などの合併症が少ないとされるコールドポリペクトミー(熱を加えることなく専用の金属ワイアーで切除する方法)も、小さいサイズのポリープに対しては選択肢となります。病変のサイズと性状に応じた治療法の選択が、合併症リスクの低減につながります。
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