顔への短期使用でも、眼瞼周囲に塗ると緑内障になりえます。
クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏(代表的な製品名:デルモベート)は、日本のステロイド外用薬の強さ分類において最上位のストロンゲスト(Ⅰ群)に位置しています。 ステロイド外用薬は強さにより5段階(ストロンゲスト・ベリーストロング・ストロング・ミディアム・ウィーク)に分類されており、クロベタゾールプロピオン酸エステルはその頂点です。
参考)ステロイド外用薬「デルモベート(クロベタゾール)」ストロンゲ…
薬理学的な強さを数字で示すと、ヒドロコルチゾンの浮腫抑制作用と比べて約36〜161倍もの効力を持ちます。 また、ベタメタゾン吉草酸エステル(ベリーストロング代表薬)と比較しても約2〜4倍の浮腫抑制作用があります。 これが原則です。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/DrugInfoPdf/00068187.pdf
つまり「強い薬を使えば早く治る」と考えてストロンゲストを選んでも、部位によってはその強さが裏目に出ます。この強さの認識が、顔への使用判断の基本になります。
| ランク | 分類名 | 代表成分 |
|---|---|---|
| Ⅰ群 | ストロンゲスト | クロベタゾールプロピオン酸エステル |
| Ⅱ群 | ベリーストロング | ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル |
| Ⅲ群 | ストロング | ベタメタゾン吉草酸エステル |
| Ⅳ群 | ミディアム | トリアムシノロンアセトニド |
| Ⅴ群 | ウィーク | ヒドロコルチゾン |
添付文書には「皮膚萎縮、ステロイド潮紅などの局所的副作用が発現しやすいので、特に顔面、頸、陰部、間擦部位の皮疹への使用には、適応症・症状の程度を十分考慮すること」と明記されています。 顔の皮膚はほかの部位と比べて角質層が薄く、経皮吸収率が高いため、副作用リスクは著しく上昇します。carenet+1
主な副作用には以下があります。
参考)https://hokuto.app/medicine/0a3AIwaP35NcMzfObzeZ
なお、臨床試験データでは284例中37例(13.0%)に副作用が認められており、主な副作用は皮膚萎縮24件・毛細血管拡張24件・毛包炎/癤16件・痤瘡様疹16件でした。 13%という数字は決して低くありません。
参考)https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00068791.pdf
緑内障と白内障については「頻度不明」と添付文書に記載されています。 これは発生頻度のデータ収集が困難なだけで、起こりえないということではありません。眼瞼周囲への使用には特に注意が必要です。
クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏0.05%「ラクール」添付文書(JAPIC):副作用発現率・各副作用の件数データが記載されている一次情報
原則禁止とされる顔面への使用ですが、医師の判断のもとで例外的に検討される疾患があります。顔面に生じる難治性疾患が対象です。
代表的な例外疾患は次のとおりです。
参考)https://hifuka-web.com/steroid_proper/img/rank_list_20190805.pdf
使用期間は基本的に2週間以内が推奨されています。 重度の顔面症状でやむを得ない場合でも、症状が軽快次第すみやかに弱いランクのステロイドへ切り替えるか、ステロイドを含まない治療に移行することが原則です。 2週間が条件です。0thclinic+1
また、密封法(ODT)は顔面への使用では禁忌に準じる扱いになります。経皮吸収がさらに高まり、全身性副作用(HPA軸抑制)のリスクも上昇するためです。
ユビー|現役医師によるクロベタゾールプロピオン酸エステル添付文書の解説:顔面など皮膚の薄い部位への使用時の注意点が整理されている
顔への使用を最低限のリスクで実施するには、塗布量の管理が不可欠です。指先から第一関節まで絞り出した量をFTU(Finger Tip Unit)と呼び、約0.5gに相当します。 これが成人の手のひら2枚分(約200cm²)を覆える量が目安です。
顔全体(額・鼻・両頬・顎)の面積はおよそ400〜500cm²で、手のひら約4〜5枚分に相当します。つまり顔全体に塗布する場合でも1〜1.5FTU(0.5〜0.75g)程度が上限の目安になります。これは大切なポイントです。
実際の管理で押さえるべき点をまとめると。
参考)クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏0.05%「ラクール」…
患者が自己判断で継続しやすい薬剤です。処方時の説明と次回受診日の設定が副作用防止の核心になります。
顔への影響だけを注意しがちですが、全身性副作用も見逃せません。意外ですね。
クロベタゾールプロピオン酸エステルは大量使用・長期広範囲使用・密封法によってHPA(視床下部−下垂体−副腎)軸を抑制し、副腎皮質機能不全を引き起こすことがあります。 顔面はほかの部位より経皮吸収率が高いため、比較的少量でも全身吸収が起こりやすい部位です。oogaki.or+1
具体的に懸念される全身性副作用は以下のとおりです。
顔への塗布が「少量だから大丈夫」と過信されやすい理由は、量が少なく見えるからです。しかし顔の経皮吸収率は前腕部の約13倍とも言われており、少量でも全身への影響は無視できません。 少量だけは安心ではないということですね。
参考)デルモベート(クロベタゾールプロピオン酸エステル)|ステロイ…
とりわけ高齢者・小児・糖尿病患者・免疫抑制状態の患者に処方する際は、使用前にリスク・ベネフィットを丁寧に評価し、開始から2週間後の再診設定を標準プロトコルとして組み込むことが推奨されます。
0th CLINIC|デルモベートの副作用・使い方・注意点の詳細解説:全身性副作用を含む副作用プロファイルが整理されている
ケアネット医薬品データベース|クロベタゾールプロピオン酸エステル軟膏0.05%「ラクール」:効能・副作用・添付文書情報(医師向け)