看護診断の一覧と分類

看護診断とは看護師が判断する患者の健康問題を表現した診断のことで、NANDA-I看護診断やゴードンの理論など様々な分類があります。実習や臨床で活用される看護診断について、その種類や特徴、活用方法を知りたいと思いませんか?

看護診断の一覧と分類

看護診断の基本情報
📋
NANDA-I看護診断とは

北米看護診断協会が提唱する国際標準の看護診断システムで、現在267の診断が設定されている

🏥
看護診断の種類

実在型、リスク型、ヘルスプロモーション型の3つの診断タイプで構成されている

🎯
13の領域分類

健康増進、栄養、排泄と交換など13領域に看護診断が体系的に分類されている

看護診断の基本概念と定義

看護診断とは、看護職者が実践によって扱うことが可能で、かつ扱うことが認められている患者の顕在的ないし潜在的な健康上の問題の表明であり、1970年代からアメリカの専門職団体や看護理論家によって特定化され定義づけられています 。NANDA-I(北米看護診断協会国際)による定義では、「実在または潜在する健康問題/生活過程に対する個人・家族・地域社会の反応についての臨床判断である」とされており、看護師に責務のある目標を達成するための決定的な治療の根拠を提供する重要な概念です 。
参考)看護診断

 

看護診断は医学診断とは明確に区別されており、医師が主要な治療を管理する問題の記述である医学診断に対して、看護診断は看護独自の看護実践の範囲内で看護職者が責任をもって援助する健康問題の記述となっています 。現在では看護過程の一つの重要な段階として考えられ、アセスメントから看護計画立案へとつなぐ重要な役割を果たしています 。

NANDA-I看護診断の13領域分類システム

NANDA-I看護診断は、患者の健康状態や生活に関わる13の大きな領域に分類されており、これらの領域は患者の包括的な健康状態を網羅的に評価するための枠組みとなっています 。具体的な13領域は以下のように整理されています:
参考)NANDA-I看護診断の全知識

 

  • 健康増進:健康維持・セルフケアの促進に関する診断
  • 栄養摂食・代謝・体重変化に関連する診断
  • 排泄と交換:尿・便・呼吸・循環のバランスに関する診断
  • 活動/休息:活動耐性・睡眠・エネルギーに関する診断
  • 知覚/認知:感覚・認知・学習能力に関する診断
  • 自己知覚:自尊心・自己概念に関連する診断
  • 役割関係:家族・職業・社会的役割に関する診断
  • セクシュアリティ:性的機能・親密さに関連する診断
  • 対処/ストレス耐性ストレス反応・対処能力に関する診断
  • 原則・価値観:信念・意思決定・人生観に関する診断
  • 安全/防御:感染・転倒・外傷リスクに関する診断
  • 快適:痛み・かゆみ・不快感に関連する診断
  • 成長/発達:発達課題・ライフステージに関する診断

実習や現場では特に「安全/防御」「栄養」「活動/休息」の領域が頻繁に使用される傾向があり、これらの領域を重点的に理解することで実践的な看護診断の活用が可能になります 。

看護診断の3つの基本タイプ

NANDA-I看護診断は、患者の健康状態や問題の性質に応じて3つの基本的なタイプに分類されており、それぞれ異なる診断アプローチと介入方法を必要とします 。
参考)【記入例】看護問題一覧の書き方

 

**実在型看護診断(問題焦点型看護診断)**は、患者が現在すでに抱えている症状や兆候に焦点を当てた診断方法です 。この診断タイプでは、症状・関連因子という2つの指標を使って診断を行い、「食欲がない」「体温が高い」など、目に見える具体的な症状が診断の根拠となります 。症状と関連因子の因果関係を明確にすることで、的確な看護介入を計画することができます 。
参考)看護問題の対策

 

リスク型看護診断は、現在はまだ問題が発生していないものの、このままの状態が続けば将来的に問題が起こり得る可能性が高い状況を扱う診断方法です 。「褥瘡ができやすい」「転びやすい」など、患者の健康状態や家族との関係性などによって今後起こりうるリスクを特定し、予防的な看護介入を行うことを目的としています 。危険因子の存在を確認できることが特徴で、予防医学的な観点から重要な診断タイプです 。
参考)看護計画の書き方とポイント【例文付き】

 

ヘルスプロモーション型看護診断は、現在の健康状態からさらに良い状態へと向上させることを目指す診断方法であり、ウェルネス型看護診断とも呼ばれています 。現在発生している問題に注目する他の診断タイプとは異なり、患者の健康増進への意欲や可能性に着目し、より良い健康状態の実現を支援することが特徴です 。

ゴードンの機能的健康パターンによる看護診断アプローチ

マージョリー・ゴードンが提唱した機能的健康パターンは、患者の健康状態を生活全体から包括的に評価する診断アプローチとして、特に在宅看護や地域看護において広く活用されています 。ゴードンは看護診断を「免許を持つ看護師が教育と経験を通して治療することができる、現にある、あるいは起こる可能性のある健康問題を表現したもの」と定義し、意図的で体系的な分析プロセスから生まれる臨床判断であると述べています 。
参考)マージョリー・ゴードンの看護理論:機能的健康パターンによる看…

 

ゴードンの11の機能的健康パターンは以下のように構成されており、患者の生活機能を包括的に評価できます。

  • 健康知覚-健康管理パターン:健康に対する認識と管理行動
  • 栄養-代謝パターン:食事摂取と代謝機能の評価
  • 排泄パターン:排尿・排便機能の評価
  • 活動-運動パターン:身体活動と運動能力の評価
  • 睡眠-休息パターン:睡眠の質と休息の状況
  • 認知-知覚パターン:認知機能と感覚機能の評価
  • 自己認識-自己概念パターン:自己像と自尊感情
  • 役割-関係パターン:社会的役割と人間関係
  • 性-生殖パターン:性的機能と生殖に関する健康
  • ストレス-コーピングパターン:ストレス対処能力
  • 価値-信念パターン:価値観と信念体系

ゴードンの看護診断は、健康問題(Problem)、原因または関連因子(Etiology)、症状・徴候(Symptoms & Signs)の3つの構成要素から成るPES形式で表現され、個別性のある看護計画立案に有効な方法として認識されています 。

看護診断の実践的活用方法と記録技法

看護診断を臨床現場で効果的に活用するためには、適切な記録方法と評価システムの理解が不可欠です 。看護診断名にはNANDA-I看護診断を使用することが一般的であり、診断ラベル(診断名)は13の領域に分類され、定義、診断指標、関連因子、危険因子といった要素によって構成されています 。
参考)看護問題リスト・看護計画の書き方

 

診断指標は「問題焦点型看護診断、ヘルスプロモーション型看護診断、またはシンドロームの所見としてまとまった観察可能な手がかり/推論」と定義されており、看護師が目で見ることのできるもの以外に、聞く(患者/家族からの話)、触る、嗅ぐことができるものも含まれます 。受け持ち患者と診断指標を照らし合わせる際、診断指標に示されている状態・状況が患者に現れている場合、「その診断指標があてはまる」と判断することができます 。
参考)看護診断に必要な基本用語〜診断指標、関連因子、危険因子とは〜…

 

看護診断の確定時には、「症状・徴候」「関連因子・危険因子」「なりゆき」の3つのポイントを確認することが重要です 。例えば「食欲不振」を看護診断として考える場合、食欲不振を表している証拠(症状や徴候)は何であるか、食欲不振の原因(関連因子)は何であるか、食欲不振をそのままにしておいたらどのようなことが起きるか(なりゆき)を明確にする必要があります 。
最新版のNANDA-I看護診断(2024-2026版)では、56の新しい看護診断が追加され、123の看護診断が改訂されており、診断の軸構造が大幅に改訂されています 。定期的な改訂により、社会や医療の変化に対応した最新の診断基準が提供され続けており、高齢化、多疾患併存、患者参画などの現代的課題に対応した診断システムの進化が図られています 。
参考)NANDA-I看護診断 定義と分類 2024-2026 原書…