看護計画を作成するうえで最初のステップとなるのが看護診断です。看護診断とは、患者さんの健康問題や状態を看護の視点から分析し、明確にしたものです。適切な看護診断があってこそ、効果的な看護計画が立案できます。
看護診断の立て方には、主に次のようなポイントがあります。
たとえば、「食欲不振のAさん」の場合、単に「栄養摂取不足」という診断名だけでなく、「がん治療による副作用に関連した栄養摂取不足」のように、関連因子を明確にすることが重要です。これにより、看護介入の方向性がより具体的になります。
次に、患者目標(アウトカム)の設定です。これは看護介入によって達成したい状態を具体的に示すものです。目標設定には以下の「SMART」の原則を活用すると効果的です。
患者目標は短期目標と長期目標に分けて設定するとより効果的です。短期目標は数日から1週間程度で達成可能なもの、長期目標は入院期間全体やその後の生活も見据えたものを設定します。
例えば食欲不振の患者さんの場合。
短期目標:「3日以内に食事の3割以上を摂取できる」
長期目標:「退院までに食事の8割以上を摂取し、体重が入院時の3%以上減少しない」
このように、測定可能で具体的な目標を設定することで、看護介入の効果が評価しやすくなります。
また、患者さん自身が理解し取り組める目標設定が重要です。目標設定の際は患者さんと話し合い、同意を得ることで、治療への参加意識が高まり、目標達成の可能性も向上します。
看護計画は主に「観察計画(OP)」「援助計画/直接ケア計画(TP/CP)」「教育計画(EP)」の3つの要素から構成されます。それぞれの要素を適切に記載することで、看護師間で統一した看護を提供することができます。
1. 観察計画(Observational Plan;O-P)
観察計画は、患者さんの状態変化や看護介入の効果を把握するために何をどのように観察するかを具体的に記載します。観察計画を立てる際のポイントは以下の通りです。
例えば、食欲不振の患者さんの観察計画では。
「毎食時の食事摂取量を記録する」
「1日3回の体重測定を実施する」
「食事中の嚥下状態、食事に対する反応を観察する」
「水分出納バランスを記録する」
などを記載します。
2. 援助計画/直接ケア計画(Treatment Plan;T-P/Care Plan;C-P)
援助計画は、患者さんの問題解決のために看護師が直接行うケアの内容を具体的に記載します。援助計画立案の際のポイントは。
例えば、食欲不振の患者さんの援助計画では。
「好みの食事を確認し、栄養科と連携して個別メニューを提供する」
「食事時は座位をとり、食べやすい環境を整える」
「食事前に軽い口腔ケアを実施し、味覚を改善する」
「食事の時間帯は痛みや吐き気などの症状コントロールを図る」
などを記載します。
3. 教育計画(Educational Plan;E-P)
教育計画は、患者さんや家族に対する指導や教育内容を記載します。患者さん自身が問題解決に参加し、退院後も健康管理ができるようにすることが目的です。教育計画立案の際のポイントは。
例えば、食欲不振の患者さんの教育計画では。
「食欲増進のための食事環境の整え方について説明する」
「少量頻回に食事をとる方法を指導する」
「栄養価の高い食品選択について栄養士と連携して指導する」
「食事日記をつけることの意義と方法を説明する」
などを記載します。
これら3つの要素をバランスよく組み合わせ、患者さんの状態に合わせた個別的な看護計画を立案することが重要です。また、計画は固定的なものではなく、患者さんの状態変化や反応に応じて随時見直し、修正することを忘れてはいけません。
看護計画を効果的に立案するためには、具体的な例を知ることと、立案時のポイントを押さえることが重要です。ここでは、いくつかの看護問題に対する看護計画の具体例と、計画立案時の重要なポイントを解説します。
【具体例1】昼夜逆転の患者さんに対する看護計画
看護診断:睡眠-覚醒パターン障害
患者目標。
観察計画(OP)。
援助計画(TP)。
教育計画(EP)。
【具体例2】転倒リスクのある高齢患者の看護計画
看護診断:転倒リスク状態
患者目標。
観察計画(OP)。
援助計画(TP)。
教育計画(EP)。
看護計画立案時の重要ポイント
複数の看護問題がある場合、生命に関わる問題や基本的ニーズに関わる問題を優先します。マズローの欲求階層理論や看護診断の優先度判断基準を参考にすると良いでしょう。
画一的な計画ではなく、患者さん一人ひとりの状態、価値観、生活背景などを考慮した個別的な計画を立案します。同じ看護診断名でも、具体的な計画内容は患者さんによって異なります。
看護師だけでなく、医師、理学療法士、栄養士、