イーケプラ点滴静注500mg(レベチラセタム)の単独投与は、2015年に部分発作に対する単剤療法として国内承認を取得しました。従来は他の抗てんかん薬との併用療法のみの適応でしたが、単独療法の承認により治療選択肢が大幅に拡大されています。
参考)https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2014/20140804_01.html
この承認により、4歳以上のすべての部分発作患者に対して単剤での使用が可能となり、第一選択薬としての位置づけが確立されました。海外の国際抗てんかん連盟(ILAE)のガイドラインでは、単剤療法での有効性エビデンスレベルが高い薬剤として評価され、欧州では既に第一選択薬の一つとして採用されています。
参考)https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2015/20150220_2.html
現在国内で10万人以上の患者に使用されており、抗てんかん薬の国内売上シェアにおいてトップを維持しています。100以上の国・地域で承認され、小児から高齢者まで幅広く処方される信頼性の高い薬剤として位置づけられています。
イーケプラ点滴の単独投与は主に以下の適応で使用されます。
部分発作(二次性全般化発作を含む)
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/drugdetails.aspx?code=63084
てんかん重積状態
参考)https://www.rad-ar.or.jp/siori/search/result?n=48452
点滴投与では経口薬と同じ1日用量及び投与回数で、15分間の点滴静脈内投与を行います。一時的に経口投与ができない患者における代替療法として、経口薬からの切り替えや経口薬投与前の初期治療として使用されています。
参考)https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00063084
強直間代発作については併用療法のみの適応となっており、単剤療法の適応はありませんが、てんかん重積状態においては電子化された添付文書上で単剤・併用の規定がないため、ガイドラインを参考に適切と判断される患者への単剤使用が可能です。
参考)https://hcp.ucbcares.jp/product/ekeppra/qa
イーケプラ(レベチラセタム)は1980年代初期にユーシービー社で発見された、従来の抗てんかん薬とは異なる作用機序を有する新規抗てんかん薬です。
主要な作用機序として、シナプス小胞蛋白質2A(SV2A)への選択的結合があります。この結合により、神経伝達物質の放出調節機構に作用し、過剰な神経興奮を抑制します。従来の抗てんかん薬がナトリウムチャネルやGABA受容体に作用するのに対し、全く異なる標的への作用により抗てんかん効果を発現します。
この独特な作用機序により、他の抗てんかん薬との薬物相互作用が少なく、併用時の安全性が高いという特徴があります。また、肝代謝を受けにくく、主に腎排泄されるため、肝機能障害患者にも比較的安全に使用できます。
点滴製剤では経口薬と同等のバイオアベイラビリティを示し、15分間の点滴投与により迅速な血中濃度上昇が得られます。半減期は約6-8時間で、1日2回投与により安定した血中濃度を維持できます。
イーケプラ点滴の単独投与における安全管理は、特に他剤との混注回避が重要です。血液製剤との同時投与では凝集塊形成のリスクがあるため、単独投与が原則とされています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjtc/63/4/63_559/_article/-char/ja/
投与時の具体的な注意点として。
投与経路の管理
投与速度と濃度
腎機能障害への対応
参考)https://www.shirasagi-hp.or.jp/goda/fmly/pdf/files/1403.pdf
投与前後の外観確認記録を実施し、院内での適切な投与手順の確立が重要です。
イーケプラ点滴の単独投与において、医療従事者が認識すべき禁忌事項と特殊な投与リスクがあります。
投与禁忌患者
単独投与特有のリスク
従来の併用療法と異なり、単独投与では他の抗てんかん薬による安全網がないため、以下の点に注意が必要です。
精神神経系副作用への対応
イーケプラ特有の精神神経系副作用として、易刺激性、攻撃性、不安、抑うつなどが報告されています。単独投与時はこれらの副作用がより明確に現れる可能性があり、定期的な精神状態評価と患者・家族への情報提供が重要です。
妊娠・授乳期の考慮事項
妊娠中の投与では催奇形性リスクの評価が必要で、治療上の有益性が危険性を上回る場合のみ投与を検討します。授乳中は母乳中への移行が報告されているため、授乳の継続について個別に判断する必要があります。
これらのリスク評価を踏まえ、単独投与開始前の詳細な患者背景調査と、投与後の継続的モニタリング体制の構築が不可欠です。