実は、著明な白血球増多症では白血球アフェレシスを行っても長期生存率は改善しないと報告されています。

白血球増多症(Leukocytosis)とは、末梢血中の白血球数が正常範囲を超えた状態のことです 。一般的に白血球数の正常範囲は3,500〜9,000/μLとされており、これを超えると「白血球増加症」と定義されます 。さらに、50,000〜100,000/μL以上を超える状態は「著明な白血球増多症(Hyperleukocytosis:HL)」と呼ばれ、臨床的な緊急性が高まります 。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.34433/J00642.2022248112
白血球は大きく分けて好中球・リンパ球・単球・好酸球・好塩基球の5種類があり、どの分画が増加しているかによって想定すべき疾患が変わります 。医療従事者にとって、単に「白血球が多い」という情報だけでなく、分画(白血球分類)を確認することが診断の第一歩です。つまり、分画の把握が基本です。
血液検査の報告書では「WBC」として表記されます。一般的な医療従事者が臨床でまず確認するのは総白血球数ですが、実際の病態把握には分画が不可欠です。特に好中球(Neut)・リンパ球(Lympho)の比率変動は鑑別診断に直結します。これは使えそうです。
白血球増多症の原因は多岐にわたります 。最も頻度が高いのは細菌感染症(肺炎・尿路感染症・虫垂炎など)に伴う生体反応であり、次いでストレス・喫煙・激しい運動後の一過性増加が挙げられます 。薬剤性としては、ステロイド(コルチコステロイド)の投与によって好中球数が急速に上昇する点が特徴的です 。
関連)https://tsutsujinosato.com/%E7%99%BD%E8%A1%80%E7%90%83%E5%A2%97%E5%A4%9A%E7%97%87
下記に原因をまとめます。
鑑別のポイントとして、好中球増多は感染症・ステロイドを最初に疑い、リンパ球増多はウイルス感染・慢性リンパ性白血病を疑います 。好酸球増多が目立つ場合は、アレルギー疾患・寄生虫感染・薬剤性が上位鑑別となります 。好塩基球増多は骨髄増殖性腫瘍(慢性骨髄性白血病:CML)の指標となりやすい点は重要です。慢性骨髄性白血病は無症状で見つかることもあるため注意が必要です 。
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白血球増多症の治療は、原因疾患の治療が基本です 。白血球数そのものを「下げる」ことを目的とした治療は一般的ではなく、あくまで原疾患にアプローチすることで白血球数は自然に正常化します。これが原則です。
原因別の治療方針は下表の通りです。
| 原因 | 主な治療 | 備考 |
|---|---|---|
| 細菌感染症 | 抗菌薬投与 | 起炎菌に応じた選択が必須 |
| 薬剤性(ステロイドなど) | 原因薬剤の中止・減量 | 臨床上の必要性と天秤にかける |
| ストレス・生理的増加 | 経過観察 | 一過性であれば介入不要 |
| 白血病・骨髄増殖性腫瘍 | 化学療法・分子標的薬 | 血液内科専門医への紹介が基本 |
| アレルギー・好酸球増多 | 原因薬剤の中止・ステロイド | 好酸球性疾患は専門的評価を |
感染症による白血球増多は抗菌薬投与で多くが改善します 。薬剤性の場合、原因薬剤を中止できるかどうかの臨床的判断が重要です。経過観察で良い場合も多いですね。
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著明な白血球増多症(HL)は臨床的な緊急状態(oncologic emergency)です 。末梢血中の白血球数が50,000〜100,000/μL以上に達すると、白血球停滞(leukostasis)を引き起こしやすくなります 。leukostasisは微小循環障害を生じ、特に頭蓋内出血と呼吸障害(低酸素血症)に注意が必要です。これは深刻です。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.34433/J00642.2022248112
白血球アフェレシス(白血球除去療法)は、leukostasis症状を呈している場合の症状改善に一定の有効性が報告されています 。ただし、寛解率・長期生存率の改善にはつながらないとする報告もあり、単独の根治的治療とはなりません 。白血球アフェレシスによる白血球低下は一時的である点に注意が必要です。
関連)https://www.apheresis-jp.org/143203.html
対応の流れは以下の通りです。
重要な点として、leukostasis症状がなく白血球増多のみの場合、予防的な白血球アフェレシスは積極的に推奨されていません 。また、この治療は現時点で保険適用がありません 。適応の判断は慎重に行う必要があります。
関連)https://www.apheresis-jp.org/143203.html
日本アフェレシス学会のガイドラインでは、症候性HLに対するアフェレシスは推奨レベル1B、予防的実施は2Cとされています 。この数字だけ覚えておけばOKです。
関連)https://www.apheresis-jp.org/143203.html
なお、著明な白血球増多の主な原因疾患である白血病の診療ガイドラインは、日本血液学会の造血器腫瘍診療ガイドライン(2024年版)も参考になります。
急性白血病の診療指針について:日本血液学会 造血器腫瘍診療ガイドライン 第3.1版(2024年版)
白血球増多症の治療において、医療従事者が臨床で陥りやすいのが「感染症を過剰に疑い、不要な抗菌薬を投与してしまう」という状況です。実際には、固形腫瘍(肺癌など)によって生じる腫瘍随伴性白血球増多症(Paraneoplastic Leukocytosis)が一定数存在します 。これは厳しいところですね。
腫瘍随伴性白血球増多では、腫瘍細胞がG-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)を産生し、白血球数が著明に上昇することがあります。感染症の証拠がないにもかかわらず白血球増多が持続する場合は、悪性腫瘍のスクリーニングを行うことが重要です。抗菌薬への反応がない点に注意が必要です。
また、健診で白血球増多を指摘された場合、一過性の生理的増加(運動後・喫煙・ストレス)であることも多く、再検査なく侵襲的検査を急ぐことは患者負担になります 。まず再検査で確認する、これが最初のステップです。
実際の臨床フローとしては以下の点を意識します。
持続的な白血球増多が確認された場合、血液内科専門医への速やかな紹介が求められます。芽球(blast)が末梢血に出現している場合は特に緊急性が高く、当日対応が必要です。芽球の出現は必須のアラートサインです。
MSDマニュアルでは、白血球数の増加の原因や診断・治療の基本的な考え方が整理されており、初期評価の参考になります。
白血球数の増加・原因と治療の基本的考え方:MSDマニュアル家庭版(医療従事者の初期評価参照に)
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