ドリエルの主成分であるジフェンヒドラミン塩酸塩は、第1世代抗ヒスタミン薬に分類される化合物です。脳の視床下部後部に存在するヒスタミンニューロンから放出されるヒスタミンは、大脳皮質をはじめとする脳の各部位の神経細胞を興奮させ、覚醒の維持・調節を行っています。
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ドリエルの有効成分が脳内のヒスタミンH1受容体に結合することで、ヒスタミンの覚醒作用を競合的に阻害し、眠気を誘発します。この抗ヒスタミン作用により、覚醒物質であるヒスタミンがヒスタミン受容体に結合するのをブロックし、自然な眠気を促進する効果が得られます。
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元々アレルギー性鼻炎や蕁麻疹の治療薬として開発されたジフェンヒドラミンですが、副作用として現れる眠気を逆に活用したのがドリエルです。服用後30分から1時間程度で眠気が現れ、効果は4~6時間程度持続するとされています。
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ドリエルの有効性を確認するため、「寝つきが悪い」「眠りが浅い」などの症状を訴える15歳以上の患者173例を対象とした臨床試験が実施されました。この試験では、軽度あるいは中等度の各種睡眠障害を訴える内科および心療内科受診者に対し、ドリエル2錠(ジフェンヒドラミン塩酸塩50mg)を就寝30分前に服用させました。
その結果、医師による評価で82.1%の症例で睡眠改善効果が認められ、患者自身の印象についても79.2%の方々が効果を実感しました。具体的には「寝つきがよくなった」「ぐっすり眠れるようになった」などの改善が報告されており、臨床的に一時的な不眠に対する有効性が示されています。
副作用の発現率は4.6%(8例)と比較的低く、主な副作用として眠気、悪心、頭痛、多夢、心窩部痛、夢・気分不快、起床時の頭重感が報告されました。このデータから、ドリエルは一時的な不眠症状に対して高い有効性を示しながらも、副作用のリスクは低いことが確認されています。
ドリエルの有効成分ジフェンヒドラミンは、服用後比較的短時間で効果を発揮しますが、長期使用には注意が必要です。継続使用により、わずか4日程度で眠気が起こりにくくなる「耐性」が生じることが報告されています。この現象は、薬物に対する身体の適応反応であり、同じ効果を得るためにより多くの薬物が必要となる状態です。
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耐性が生じた後、元の状態に戻るまでの期間については現時点では明確になっていません。また、病院で処方される睡眠薬と比較すると、ジフェンヒドラミンは眠気の程度や睡眠の質において、やや劣る傾向にあるとされています。
このため、ドリエルは出張などで睡眠環境が変わるために眠れない場合や、一時的なストレスによる不眠など、原因が明らかで短期的な不眠に使用するのが最も効果的とされています。慢性的な不眠症状に対しては、専門医による適切な治療を受けることが推奨されます。
ドリエルは市販薬として手軽に購入できる睡眠改善薬ですが、医療機関で処方される睡眠薬とは作用機序や効果の特徴が大きく異なります。処方薬の睡眠薬は、GABA受容体やオレキシン受容体などに作用し、より強力で持続的な睡眠導入効果を持ちます。
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一方、ドリエルの抗ヒスタミン作用による睡眠誘発効果は比較的緩和で、軽度から中等度の一時的な不眠症状に適しています。市販薬であるため自己判断で使用できる利便性がありますが、効果の強さや持続性においては処方薬に劣ります。
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ドリエルの特徴として、寝つきの悪さを主に改善する点が挙げられます。夜中に何度も目が覚める中途覚醒や、早朝に目が覚めてしまう早朝覚醒に対しては、限定的な効果しか期待できません。そのため、不眠症状の種類や重症度を考慮した適切な選択が重要です。
さらに、ドリエルは乗り物酔い止めのトラベルミンや蕁麻疹治療薬のレスタミンコーワと同じジフェンヒドラミンを主成分としており、これらの薬剤で眠気を経験したことがある方は、ドリエルの効果を予測しやすいとも言えます。
ドリエルの使用で特に注意すべき副作用が、翌日まで続く眠気や倦怠感です。この現象は「持ち越し効果」または「キャリーオーバー効果」と呼ばれ、ジフェンヒドラミン塩酸塩の抗ヒスタミン作用が翌朝まで残存することで発生します。
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抗ヒスタミン薬は睡眠薬に比べて翌日への持ち越しが多く、朝起きた後も眠気が続きやすいという特徴があります。人によっては朝なかなか目覚められない、日中も眠気が続くといった症状を感じることがあり、運転や機械操作、集中力を要する作業には注意が必要です。
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完全に成分が体内から消失するまでには相当な時間がかかるため、推奨用量を守って服用していても、翌朝に眠気や倦怠感が残る可能性があります。特に高齢者では、薬物の代謝が遅くなる傾向があるため、持ち越し効果がより顕著に現れることがあります。
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持ち越し効果を最小限に抑えるためには、十分な睡眠時間を確保できる日に服用し、翌日の予定を考慮して使用することが重要です。また、初回使用時は休日前などに試用して、自身への影響を確認することが推奨されます。