サンファーマ株式会社は2023年2月、チバセン錠(ベナゼプリル塩酸塩)の販売中止を正式に発表しました。この決定により、医療現場では代替薬への切り替えが急務となっています。
参考)https://jp.sunpharma.com/null/44d3d990d5d4d1e3448142b8b5ca2a5f8b0d650e.pdf
チバセン錠は高血圧症治療に用いられるアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤で、長年にわたって多くの患者に処方されてきました。販売中止の理由として「諸般の事情」が挙げられていますが、具体的な詳細は明らかにされていません。
在庫消尽時期は製品により異なり、2023年4月に2.5mg錠と10mg錠、2025年2月に5mg錠が予定されています。経過措置期間は2025年3月末まで設定されており、これまでに代替薬への切り替えを完了する必要があります。
チバセン錠の販売中止は段階的に実施されており、用量ごとに異なるタイムラインが設定されています。
製品名 | 在庫消尽時期 | 薬価(円) | 包装形態 |
---|---|---|---|
チバセン錠2.5mg | 2023年4月 | 20.00 | 10錠×10 |
チバセン錠5mg | 2025年2月 | 34.70 | 10錠×10 |
チバセン錠10mg | 2023年4月 | 64.10 | 10錠×10 |
この段階的な販売中止により、特に5mg錠を使用している患者については、より長期的な処方継続が可能となっています。しかし、すでに在庫消尽となった2.5mg錠と10mg錠については、即座に代替薬への変更が必要となります。
医療機関では在庫状況を定期的に確認し、患者への説明と代替薬への切り替え準備を進める必要があります。出荷状況により在庫消尽時期に差異が生じる可能性があるため、早めの対応が推奨されます。
サンファーマ株式会社は公式に代替薬としてタナトリル錠(田辺三菱製薬)を推奨しています。タナトリル錠は同じベナゼプリル塩酸塩を有効成分とするため、薬効や作用機序において互換性があります。
代替薬選择時の重要な考慮点。
タナトリル錠以外にも、他のACE阻害剤への変更も選択肢として考えられます。しかし、薬剤の特性や半減期の違いにより、血圧管理への影響を慎重に評価する必要があります。
患者への適切な情報提供と代替薬への円滑な移行のため、標準化されたプロトコルの確立が重要です。
初回説明時のポイント。
モニタリング計画。
患者によっては、薬剤の変更に対する不安や抵抗感を示すことがあります。このような場合、十分な説明時間を確保し、患者の理解と同意を得ることが治療継続の鍵となります。
代替薬への切り替えに際し、薬事法上の適正使用や保険適用に関する注意点があります。
処方変更時の重要事項。
保険請求上の注意点。
代替薬への変更により薬価が変動する場合があります。タナトリル錠の薬価は製品により異なるため、適切な算定が必要です。また、患者負担額の変更について事前に説明することで、後々のトラブルを防ぐことができます。
日本高血圧学会からも関連情報が共有されており、学会レベルでの対応指針も参考にすることが推奨されます。
参考)http://www.jpnsh.jp/topics/710.html
チバセン販売中止は、単なる薬剤切り替え以上の影響を医療現場にもたらしています。特に術前休薬プロトコルへの影響は見落とされがちな重要な点です。
参考)https://www2.hosp.med.tottori-u.ac.jp/departments/establishment/pharmaceutical/renkei/20189.html
予想外の影響領域。
また、チバセンは比較的古い薬剤のため、高齢患者での長期使用例が多く、認知機能の低下した患者では薬剤変更への適応に時間を要することがあります。このような患者では、家族への説明や服薬支援体制の再構築が必要となる場合があります。
医療機関によっては、チバセンの在庫処理と代替薬の新規採用により、一時的な医薬品費の増加も懸念されます。適切な在庫管理と段階的な切り替えにより、これらの影響を最小限に抑える工夫が求められています。