アテレクトミーカテーテル種類と特徴解説

アテレクトミーカテーテルには方向性、回転性、吸引型の3種類があり、それぞれ異なる切除原理を持ちます。各デバイスの特徴や適応を詳しく解説し、臨床現場での選択基準をお伝えします。どのタイプが最適でしょうか?

アテレクトミーカテーテル種類

アテレクトミーカテーテルの主な種類
方向性アテレクトミー (DCA)

プラークを切除・回収する方向性カッターを搭載

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回転性アテレクトミー (ロータブレーター)

高速回転ドリルで硬化病変を削る機構

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レーザーアテレクトミー (ELCA)

エキシマレーザーによる非機械的切除システム

アテレクトミーカテーテル基本構造と機能

アテレクトミーカテーテルは、冠動脈や末梢血管の動脈硬化病変を物理的に切除・除去するためのカテーテルシステムです。従来のバルーン血管形成術とは異なり、病変組織を直接除去することで血管内腔を拡大します。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/ddbcefee7554bd5bb601ceb813b5052a38cdcbf5

 

カテーテルシステムは以下の基本構成から成り立っています。

  • カッター部分:病変を切除する機構
  • ハウジング:切除した組織を収納する部分
  • モータードライブユニット:カッターを動作させる駆動装置
  • ガイドワイヤ対応機構:血管内での位置決めとナビゲーション

これらの構成により、様々な病変性状に対応した治療が可能となります。特に、バルーン拡張が困難な硬化病変や線維化組織に対して有効性を発揮します。
参考)https://osaka.hosp.go.jp/department/cvm/special/kyoushin_shou/index.html

 

アテレクトミーカテーテル分類システム

アテレクトミーカテーテルは、その切除機序によって主に以下の3種類に分類されます:
参考)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1402909346

 

方向性アテレクトミー (DCA: Directional Coronary Atherectomy)

  • 回転カッターで病変を削る方向性システム
  • ハウジング内に切除組織を回収
  • 組織学的検査が可能な唯一の方法

回転性アテレクトミー (Rotational Atherectomy)

  • 高速回転するドリル様デバイス
  • ミクロダイヤモンドコーティングされたバー
  • 石灰化病変に特に有効

レーザーアテレクトミー (ELCA: Excimer Laser Coronary Atherectomy)

  • エキシマレーザーによる光アブレーション
  • 非機械的な組織除去機序
  • 血栓性病変にも対応可能

各システムは異なる適応病変を持ち、病変の性状に応じた選択が重要です。硬さ、形状、部位により最適なデバイスが決定されます。

アテレクトミーカテーテル特殊技術搭載

現代のアテレクトミーカテーテルには、以下の先進技術が搭載されています。
Diamond Like Carbon (DLC) コーティング
ニプロ社のATHEROCUTでは、カッター部分にDLCコーティングを施すことで、耐摩耗性を大幅に向上させています。これにより、硬化病変に対しても持続的な切除能力を維持できます。
参考)https://med.nipro.co.jp/med_eq_category_detail?id=a1U2x00000N9OZuEANamp;name=ATHEROCUT

 

高トルク伝達シャフト

  • インナーシャフトの改良により、手技者の操作をカッター部に確実に伝達
  • 遠隔部位でも正確な方向制御が可能
  • 治療精度の向上と合併症リスクの軽減

自動安全機構

  • 過負荷検知による自動停止システム
  • 患者安全性の大幅な向上
  • 毎分6,000回転での制御された動作

ダブルメッシュ構造
ATHEROCUTでは、目的部位への精密なアプローチを実現するため、ダブルメッシュ構造を採用。これにより、複雑な血管形状でも確実な病変到達が可能です。
これらの技術革新により、従来困難とされた病変に対する治療成功率が向上し、患者への侵襲度も軽減されています。

 

アテレクトミーカテーテル適応病変選択

各種アテレクトミーカテーテルは、病変の性状に応じて使い分けられます。
石灰化病変への対応
回転性アテレクトミー(ロータブレーター、ダイヤモンドバック360)が第一選択となります。ダイヤモンドバック360は、特に以下の特徴を持ちます:

  • 約2mm径の小径カテーテルで治療可能
  • 前方向・後方向の両方向での切除が可能
  • 柔らかい組織は削れにくい安全設計
  • 側面部のクラウンによる効率的な切除

線維化病変・粥腫病変
方向性アテレクトミー(DCA)が適応となります。

  • 組織の選択的切除が可能
  • 切除組織の病理学的検査により診断確定
  • 血管壁への側圧を最小限に抑制

血栓性病変・複雑病変
エキシマレーザーアテレクトミー(ELCA)が有効です:
参考)https://www.medicalexpo.com/ja/seizomoto-iryo/kiwado-62307.html

 

  • あらゆる0.014インチワイヤー上に送達可能
  • 調整可能なレーザーエネルギー設定
  • 生理食塩水注入による安全性向上
  • 2/3血管サイジングルールによる予測可能な結果

病変選択には、血管造影、血管内超音波(IVUS)、光干渉断層撮影法(OCT)などの画像診断を併用し、最適なデバイス選択を行います。

 

アテレクトミーカテーテル最新技術動向

近年のアテレクトミーカテーテル技術は、以下の方向で進歩しています。
軌道式アテレクトミー技術
CSI社のダイヤモンドバック360に代表される軌道式アテレクトミーは、従来の回転式とは異なる動作原理を採用。偏心カムにより楕円軌道を描く動作で、より効率的な石灰化除去を実現しています。
レーザー技術の進歩
ELCA冠動脈レーザーアテレクトミーカテーテルでは。

  • エキシマレーザー(308nm波長)による精密な組織アブレーション
  • 最も幅広い冠動脈適応症の承認取得
  • 複数形態のプラークに対する除去・修正能力

末梢血管用デバイス
JETSTREAMアテレクトミーシステムは、本邦初の下肢末梢動脈疾患専用デバイスとして導入されました:
参考)https://osaka.hosp.go.jp/department/cvm/special/peripheral_artery_disease/index.html

 

  • アブレーション式による効率的な組織除去
  • 末梢血管の特殊な解剖学的特徴に対応
  • 長期開存性の向上を目指した設計

人工知能(AI)支援技術
将来的には、画像解析AIによる病変性状の自動判定と、最適デバイス選択支援システムの開発が期待されています。これにより、より個別化された治療戦略の実現が可能となるでしょう。

 

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大阪医療センターの狭心症特殊治療における各種アテレクトミーデバイスの比較解説