アテレクトミーカテーテルは、冠動脈や末梢血管の動脈硬化病変を物理的に切除・除去するためのカテーテルシステムです。従来のバルーン血管形成術とは異なり、病変組織を直接除去することで血管内腔を拡大します。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/ddbcefee7554bd5bb601ceb813b5052a38cdcbf5
カテーテルシステムは以下の基本構成から成り立っています。
これらの構成により、様々な病変性状に対応した治療が可能となります。特に、バルーン拡張が困難な硬化病変や線維化組織に対して有効性を発揮します。
参考)https://osaka.hosp.go.jp/department/cvm/special/kyoushin_shou/index.html
アテレクトミーカテーテルは、その切除機序によって主に以下の3種類に分類されます:
参考)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1402909346
方向性アテレクトミー (DCA: Directional Coronary Atherectomy)
回転性アテレクトミー (Rotational Atherectomy)
レーザーアテレクトミー (ELCA: Excimer Laser Coronary Atherectomy)
各システムは異なる適応病変を持ち、病変の性状に応じた選択が重要です。硬さ、形状、部位により最適なデバイスが決定されます。
現代のアテレクトミーカテーテルには、以下の先進技術が搭載されています。
Diamond Like Carbon (DLC) コーティング
ニプロ社のATHEROCUTでは、カッター部分にDLCコーティングを施すことで、耐摩耗性を大幅に向上させています。これにより、硬化病変に対しても持続的な切除能力を維持できます。
参考)https://med.nipro.co.jp/med_eq_category_detail?id=a1U2x00000N9OZuEANamp;name=ATHEROCUT
高トルク伝達シャフト
自動安全機構
ダブルメッシュ構造
ATHEROCUTでは、目的部位への精密なアプローチを実現するため、ダブルメッシュ構造を採用。これにより、複雑な血管形状でも確実な病変到達が可能です。
これらの技術革新により、従来困難とされた病変に対する治療成功率が向上し、患者への侵襲度も軽減されています。
各種アテレクトミーカテーテルは、病変の性状に応じて使い分けられます。
石灰化病変への対応
回転性アテレクトミー(ロータブレーター、ダイヤモンドバック360)が第一選択となります。ダイヤモンドバック360は、特に以下の特徴を持ちます:
線維化病変・粥腫病変
方向性アテレクトミー(DCA)が適応となります。
血栓性病変・複雑病変
エキシマレーザーアテレクトミー(ELCA)が有効です:
参考)https://www.medicalexpo.com/ja/seizomoto-iryo/kiwado-62307.html
病変選択には、血管造影、血管内超音波(IVUS)、光干渉断層撮影法(OCT)などの画像診断を併用し、最適なデバイス選択を行います。
近年のアテレクトミーカテーテル技術は、以下の方向で進歩しています。
軌道式アテレクトミー技術
CSI社のダイヤモンドバック360に代表される軌道式アテレクトミーは、従来の回転式とは異なる動作原理を採用。偏心カムにより楕円軌道を描く動作で、より効率的な石灰化除去を実現しています。
レーザー技術の進歩
ELCA冠動脈レーザーアテレクトミーカテーテルでは。
末梢血管用デバイス
JETSTREAMアテレクトミーシステムは、本邦初の下肢末梢動脈疾患専用デバイスとして導入されました:
参考)https://osaka.hosp.go.jp/department/cvm/special/peripheral_artery_disease/index.html
人工知能(AI)支援技術
将来的には、画像解析AIによる病変性状の自動判定と、最適デバイス選択支援システムの開発が期待されています。これにより、より個別化された治療戦略の実現が可能となるでしょう。
国立循環器病研究センターの一方向性冠動脈アテレクトミー術に関する詳細情報
大阪医療センターの狭心症特殊治療における各種アテレクトミーデバイスの比較解説