アボット ペースメーカー安全性技術解析

アボットペースメーカーの最新安全性情報と技術進歩について医療従事者が知るべき重要なポイントを解説。自主回収から技術革新まで総合的に分析する記事です。どのような安全対策が必要でしょうか?

アボット ペースメーカー安全技術

アボットペースメーカー技術特徴
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電池寿命技術

ISO規格基準でAveir VRは10年超の予測バッテリー寿命を実現

🔗
リードレス技術

従来型と比較して合併症を56%削減する安全性向上

🎯
プレマッピング機能

世界初の留置前電気信号測定による位置確認技術

アボット ペースメーカー安全性情報

アボットのペースメーカー安全性について、2025年2月に発表された重要な自主回収情報が医療従事者にとって極めて重要です。対象製品は「アシュリティMRI」「エンデュリティ MRI」「ゼネックス」「ゼネックス MRI」「ゼナス」「ゼナス MRI」の6機種で、2019年11月から2020年8月6日までに出荷された3,769台が患者モニタリングの対象となっています。[1][2][3]
この自主回収の原因は、製造中のエポキシの断続的な不完全な混合によるものです。これによりテレメトリ/通信の喪失、バッテリー電池寿命の減少、ペーシングの喪失、選択的交換指標(ERI)からサービス終了(EOS)までの期間の短縮が発生する可能性があります。ただし、これまでに患者さんに重大な危害を与えたという報告はありません
参考)https://www.abbott.co.jp/media-center/press-releases/02-19-2025.html

 

電気的問題の発生率は0.18%にとどまっていますが、アボットメディカルジャパン社は「電気的問題が発生した場合、重篤な健康被害が生じる可能性を否定できない」と慎重に判断し、クラスIの自主回収を決定しました。重要なのは、デバイスを患者の体内から摘出せず、患者の経過を観察する「患者モニタリング」の対象としている点です。
参考)https://gemmed.ghc-j.com/?p=65335

 

アボット ペースメーカー技術進歩

アボットのリードレスペースメーカ技術は、従来のペースメーカの課題を根本的に解決する革新的な進歩を遂げています。最新のAveir™ VRは、2022年にFDAの承認を受け、2024年には日本で初のデュアルチャンバリードレスペースメーカAveir DRが保険償還されました。[4][5]
技術的な特徴として、世界初のプレマッピング機能が挙げられます。これは留置前に心臓内の電気信号を測定し、最適な植込み位置を決定できる機能です。この技術により、デバイスの再留置試行回数を削減し、合併症リスクを軽減できます。
参考)https://www.abbott.co.jp/media-center/press-releases/10-01-2023.html

 

電池寿命技術も大きな進歩を示しており、ISO規格に基づく設定において10年超の予測バッテリー寿命を実現しています。これは、従来のリードレスペースメーカと比較して最大2倍の寿命を提供し、患者のQOL向上に寄与しています。
参考)https://www.cardiovascular.abbott/content/dam/cv/cardiovascular/japan/docs/information-pdf/AveirHCPBrochure_MAT-2209956.pdf

 

リードレス技術の最大の利点は、合併症を56%削減することです。従来の経静脈的ペースメーカに伴うリード関連の合併症(感染、血栓形成、血管損傷など)を回避できるため、患者の安全性が大幅に向上しています。

アボット ペースメーカー患者モニタリング実施方法

患者モニタリングは、現代のペースメーカ管理において欠かせない要素となっています。アボットの遠隔モニタリングシステムは、患者の安全性確保と効率的な医療提供を両立させる重要な技術です。[8]
具体的なモニタリング項目には、**電池寿命(年)、電圧(V)、マグネットレート(min-1)、ERIまでの残容量(%)**などが含まれます。これらのパラメータを継続的に監視することで、デバイスの異常や電池消耗を早期に発見できます。
参考)https://www.jadia.or.jp/follow.pdf

 

日本におけるリモートフォローアップ(RFU)の研究では、2年間の期間において排他的な遠隔フォローアップが安全であることが証明されました。患者は必要時のみ受診すればよく、医療資源の効率的活用が可能となっています。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7237026/

 

遠隔モニタリングの実装により、医療従事者は患者の状態をリアルタイムで把握でき、緊急事態への迅速な対応が可能になります。特にCOVID-19パンデミック下では、対面診療を最小限に抑えながら適切な医療を提供する重要な手段として機能しました。

 

アボット ペースメーカー合併症対策

リードレスペースメーカの合併症対策は、植込み手技の改善と適切な患者選択が重要な要素となります。日本心律学会は2023年9月に、Aveir VRの植込みに関して重要な注意喚起を発表しました。[10]
保険償還後に手術に伴う死亡例が3例発生しており、内訳は心タンポナーデ2例(うち1例は緊急開胸手術後に死亡)、急性肺塞栓症1例です。これらの合併症に対し、緊急開胸術でも救命できない事例が発生していることを重く受け止め、施設体制の整備と適切な患者選択の重要性が強調されています。
参考)https://new.jhrs.or.jp/pdf/safetyinfo/safetyinfo20230912.pdf

 

合併症予防の具体的な対策として、以下の点が挙げられます。

植込み施設では、緊急事態に対応できる体制整備が必須です。心臓血管外科との連携体制、緊急開胸術への準備、集中治療室の確保など、包括的な安全対策が求められます。

 

アボット ペースメーカー独自技術革新

アボットのペースメーカ技術で最も注目すべきは、**i2i(implant to implant)通信システム**です。この独自技術により、心房と心室に植え込まれた2つのリードレスペースメーカが相互に通信し、従来困難とされていた房室同期を実現しています。[12]
i2i通信システムは血液の導電性を利用して高周波の電気パルスを送信し、信号を伝達する仕組みです。この技術により、小型デバイスが心拍ごとに相互通信を行いながらも、効率性の高いテレメトリによって十分なバッテリー寿命を実現できています。
参考)https://forbesjapan.com/articles/detail/64470/page2

 

AVEIR DRシステムの臨床試験では、**植込み成功率98.3%、植込み後3か月時の心房と心室の同期成功率98.2%**を記録し、様々な姿勢で平均95%以上の房室同期率を達成しました。これは従来のデュアルチャンバペースメーカと同等以上の性能を示しています。
参考)https://www.abbott.co.jp/media-center/press-releases/aveir-10-03-2024.html

 

抜去可能性も重要な特徴で、アボットのリードレスペースメーカは植込みから最長7年間において80%を超えるリトリーバル成功率を示しています。これは治療方針の変更や合併症発生時の対応において、患者により良い治療選択肢を提供できることを意味しています。
レート応答機能についても、従来の加速度センサーに加えて心拍変動解析、胸郭内インピーダンス解析、QT間隔解析など、多角的なアプローチによる生理学的ペーシングを実現しています。これにより患者の活動レベルに応じた適切な心拍数制御が可能となり、日常生活でのQOL向上に寄与しています。
参考)https://www.mdpi.com/1424-8220/23/3/1427/pdf?version=1674833702

 

アボットメディカルジャパンの最新安全性情報について詳細な発表内容
日本心律学会によるリードレスペースメーカ植込みの注意喚起文書