「ウロビリノーゲン陰性は正常」と判断すると、閉塞性黄疸を見逃してしまいます。

尿の黄色の正体は「ウロビリン」という色素です。赤血球のヘモグロビンが壊れてビリルビンになり、腸内細菌がビリルビンをウロビリノーゲンに還元します 。このウロビリノーゲンが腸管から再吸収(腸肝循環)され、腎臓から尿中に排泄された後、自然酸化することで黄色色素ウロビリンが生まれます 。
参考)尿が黄色くなるメカニズムが明らかに|医師向け医療ニュースはケ…
2024年1月、メリーランド大学のBrantley Hall氏らの研究グループが、この還元を担う腸内細菌由来の酵素「BilR(ビリルビン還元酵素)」を同定しました 。ウロビリンの産生メカニズムが解明されてから125年以上、関与酵素が不明であり続けたことを考えると、驚くべき発見といえます。
参考)尿が黄色くなるメカニズムが明らかに|医師向け医療ニュースはケ…
つまり尿の黄色は腸内細菌叢の活動とも密接に関係しているということですね。
| 段階 | 物質 | 場所 | 色 |
|---|---|---|---|
| ①赤血球破壊 | ヘモグロビン→ビリルビン | 網内系 | 橙黄色 |
| ②腸管内代謝 | ビリルビン→ウロビリノーゲン | 腸内細菌(BilR酵素) | 無色 |
| ③腸肝循環→尿排泄 | ウロビリノーゲン(尿中) | 腎臓・尿 | 無色 |
| ④酸化 | ウロビリノーゲン→ウロビリン | 尿(体外) | 🟡 黄色 |
ケアネット:尿が黄色くなるメカニズム(BilR酵素の発見、2024年)
正常値の理解は臨床判断の出発点です。尿中ウロビリノーゲンの正常濃度は0.1〜1.8 mg/dL(1.7〜30 µmol/L)とされており、2.0 mg/dL(34 µmol/L)を超えると病的と判断されます 。
参考)Urine Diagnostics - Products &…
試験紙法では、疑陽性(±)または弱陽性(+1)は健康者でも認められるため、正常の範囲です 。
参考)検尿で異常と言われたら?
基準値だけ覚えておけばOKです。
| 試験紙結果 | 濃度の目安 | 臨床的意義 |
|---|---|---|
| 陰性(−) | 検出限界以下 | 胆道閉塞、抗菌薬投与の可能性 |
| 疑陽性(±) | 〜0.2 mg/dL | 正常範囲 |
| 弱陽性(+1) | 〜1.0 mg/dL | 正常〜軽度増加 |
| 陽性(+2以上) | 2.0 mg/dL超 | 肝疾患・溶血を疑う |
注意すべき点として、試験紙の判定は採尿から60分以内に行う必要があります 。ウロビリノーゲンは光や熱で分解しやすく、長時間放置すると偽陰性になります。また、ポルフォビリノーゲンとの交差反応によって偽高値を示すことがあり(ポルフィリア症など)、数値の解釈には注意が必要です 。
参考)https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/ivd/PDF/341508_16100AMZ03365000_D_01_03.pdf
八木内科クリニック:検尿で異常と言われたら(尿ウロビリノーゲン解説)
ウロビリノーゲンが高くなる原因は大きく2つに分けられます。
参考)尿ウロビリノーゲン|肝臓・すい臓・胆のうなどの検査|【よくわ…
これは使えそうです。
肝疾患と溶血の鑑別には、ビリルビン尿の同時検出が重要なヒントになります。ウロビリノーゲン増加+ビリルビン陽性なら肝細胞障害や胆汁うっ滞を強く示唆します。一方、ウロビリノーゲン増加+ビリルビン陰性の組み合わせは溶血性疾患に多い所見です 。
参考)Urine Diagnostics - Products &…
尿の色との対応も把握しておきましょう。肝炎などで胆汁色素が尿中に増えると、尿は濃い茶色〜オレンジ色に変化します 。患者が「最近おしっこの色が濃い」と訴えた場合、単なる脱水で片付けずにウロビリノーゲンとビリルビンを同時に確認することが原則です。
参考)おしっこの色の異常からわかること|なりた泌尿器科・内科クリニ…
陰性=安心ではありません。これが原則です。
ウロビリノーゲン陰性が病的意義を持つ代表的な状態は以下の通りです。
参考)尿ウロビリノーゲン|肝臓・すい臓・胆のうなどの検査|【よくわ…
閉塞性黄疸では尿の色にも特徴が現れます。胆汁色素(ビリルビン)が尿中に直接排泄されるため、尿は濃い茶色や「ビール色」になるにもかかわらず、ウロビリノーゲンは陰性となります 。この「色は濃いのに陰性」という組み合わせは、見落としやすい鑑別サインです。
参考)おしっこの色の異常からわかること|なりた泌尿器科・内科クリニ…
厳しいところですね。
臨床の場では、黄疸患者でウロビリノーゲンが陰性だった場合、採尿の新鮮度よりも先に閉塞性病変の可能性を考慮することが求められます。腹部超音波や胆道系酵素(ALP、γ-GTP)との組み合わせ評価が次のアクションとして適切です。
あまり教科書に書かれていない観点として、腸内細菌叢の状態がウロビリノーゲン値に直接影響するという点があります。前述のBilR酵素研究は、この関係を酵素レベルで初めて明示しました 。
参考)尿が黄色くなるメカニズムが明らかに|医師向け医療ニュースはケ…
つまりこういうことですね。腸内フローラが乱れると尿の黄色も変わりうる、という連鎖が科学的に裏付けられたわけです。
この観点から考えると、プロバイオティクス治療中や長期入院で経腸栄養が変化した患者では、ウロビリノーゲン値が予想外の動きを示す可能性があります。また、新生児期は腸内細菌定着が未熟なため、ウロビリノーゲンがほとんど産生されず、尿が淡黄色にとどまる場合があります。これは異常ではありません。
意外ですね。尿検査一項目が、腸内環境の指標にもなりうるとは。
この情報を知っていると、単純な試験紙の数値を多角的に解釈できるようになります。たとえば、腸内細菌叢評価を目的とした便移植(FMT)後の患者では、ウロビリノーゲンの正常化が腸内環境回復の間接的な指標になる可能性が研究上で示唆されています。臨床への応用はまだ限定的ですが、尿検査を「腸—肝—腎軸」の総合指標として読む視点は、今後の精密医療に向けた重要な考え方です。
栗田内科クリニック:尿検査基準値の完全ガイド(ウロビリノーゲン含む)
成田クリニック:おしっこの色の異常から分かること(尿色と疾患の対応)
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