テモシリンの高度耐性(MIC >128μg/mL)はOXA-48型カルバペネマーゼのサロゲートマーカーになると、一部の施設では広く活用されています。
関連)https://www.kanto.co.jp/dcms_media/other/CT_250_all.pdf

テモシリンはペニシリン系のβラクタム系抗菌薬で、OXA-48型カルバペネマーゼはペニシリン系薬を強力に分解する酵素です。 この組み合わせにより、テモシリン感受性ディスク試験の結果(阻止円≦10mm)がOXA-48産生のマーカーとして使われています。
関連)https://www.jscm.org/journal/full/02303/023030175.pdf
カルバペネマーゼには大きく分けてKPC型・MBL型・OXA-48型の3種類があります。これが基本です。
OXA-48型はカルバペネム系薬を加水分解する活性が低いため、カルバペネムのMIC上昇が軽度にとどまるケースが多く、通常の感受性試験だけでは見逃されやすいという特徴があります。 そこでテモシリンの高度耐性(MIC >128μg/mL、ディスク阻止円 <11mm)を確認することが、OXA-48鑑別の重要な手がかりとなります。
関連)https://www.kanto.co.jp/dcms_media/other/CT_250_all.pdf
ただし、KPC型とMBL型が同時産生されている場合(複合耐性)は、テモシリン単独の結果だけでは遺伝子型の確定が困難で、遺伝子検査が必要になることがあります。 意外ですね。
関連)https://www.kanto.co.jp/dcms_media/other/CT_250_all.pdf
臨床検査室では、MASTDISCS Combi Carba plusのようなディスク拡散法を用いることで、MBL阻害剤と組み合わせたテモシリンディスク(30μg)の阻止円を測定し、OXA-48型産生の確認が可能です。 これは使えそうです。
関連)https://www.jscm.org/journal/full/03201/032010050.pdf
テモシリンに対する耐性メカニズムは複数存在し、それぞれに臨床的な意味があります。まず理解しておくべきは、β-ラクタマーゼによる酵素的分解、外膜タンパク(OMP)変異による透過性低下、薬剤排出ポンプの亢進という3つの主要経路です。
関連)https://www.c-linkage.co.jp/jscm2020/program/data/ws_kansai.pdf
OXA-48型は特にペニシリン系薬の分解活性が強く、テモシリンが加水分解されて活性を失います。 つまり耐性の中心は酵素による不活性化です。
関連)https://www.jscm.org/journal/full/02303/023030175.pdf
一方、AmpC β-ラクタマーゼ過剰産生に外膜タンパク変異が加わると、カルバペネム系薬のMICまで上昇し、テモシリンの耐性にも影響することがあります。 この「重複メカニズム」が検出をさらに複雑にします。
関連)https://www.c-linkage.co.jp/jscm2020/program/data/ws_kansai.pdf
耐性遺伝子の多くはプラスミドに乗って水平伝播します。接合伝達によって院内の複数菌株に短期間で広がるリスクがあり、アウトブレイク対応の速度が感染制御の鍵となります。
関連)https://jantianim.org/wp-content/uploads/2024/03/aedc73692096b7fdccf19c1693d51adc.pdf
| 耐性メカニズム | 主な酵素・変異 | テモシリンへの影響 | 検査上の特徴 |
|---|---|---|---|
| 酵素的分解 | OXA-48、TEM型など | MIC高度上昇(>128μg/mL) | ディスク法で阻止円消失 |
| 外膜タンパク変異 | OmpC・OmpF欠失 | 中程度のMIC上昇 | 単独では検出困難 |
| 排出ポンプ亢進 | AcrAB-TolC系など | 低〜中程度の耐性 | 感受性パターンで推測 |
| 複合耐性(KPC+MBL) | KPC+NDM等の同時産生 | 高度耐性 + 鑑別困難 | 遺伝子検査が必要 |
第3世代セファロスポリン耐性腸内細菌科(ESBL産生菌を含む)による尿路感染症への有効性が、欧州の臨床試験で検討されています。 対象180例のうち複雑性尿路感染症が89%を占め、テモシリン群と比較群で早期臨床的失敗に有意差はなかったと報告されています。
関連)https://academia.carenet.com/share/news/5c3fd4d2-f2d7-4e23-a698-930ce5127d9f
これは大きな結果です。
ESBL産生菌に対してはカルバペネム系薬が第一選択とされてきましたが、近年はカルバペネム温存の観点から代替薬の研究が進んでいます。 日本ではセフメタゾール(CMZ)やフロモキセフ(FMOX)がカルバペネム代替として使われてきた経緯がありますが、テモシリンは日本国内では未承認のため、すぐに臨床応用できる状況にはありません。
関連)https://note.com/medknowledge_ai/n/n03d310aa48db
OXA-48型カルバペネマーゼ産生菌の場合、ESBLを同時産生していなければ第3世代セファロスポリンが有効である可能性があり、テモシリンもその文脈で位置づけられています。 これが条件です。
関連)https://www.jscm.org/journal/full/03201/032010050.pdf
ESBL産生菌への治療でカルバペネム温存を考える場合、海外のエビデンスを正確に把握するためにも、AMR臨床リファレンスセンターの情報は定期的に確認しておきたいところです。
各種耐性菌の最新動向はAMR臨床リファレンスセンターにまとめられています。
AMR臨床リファレンスセンター「各種耐性菌の話」(ESBL産生菌・カルバペネマーゼ産生菌の解説)
臨床検査室がテモシリン耐性情報を有効活用するためには、まず「なぜこのデータが必要なのか」という目的を明確にすることが前提です。OXA-48型の鑑別マーカーとしての活用と、治療薬選択の参考情報として活用するのでは、検査の意味が変わります。
目的の確認が最初の一歩です。
ディスク拡散法では、テモシリン30μgディスクを使用し、阻止円が10mm以下の場合にOXA-48産生を疑います。 この判断基準は、MASTDISCS Combi Carba plusを用いた組み合わせ試験の中でも繰り返し確認されています。
関連)https://www.jscm.org/journal/full/03201/032010050.pdf
ただし、ESBL同時産生株(CTX-M-15など)が存在する場合、感受性パターンが複雑になり、単一のマーカーだけで遺伝子型を確定することは難しくなります。 複数の表現型マーカーを組み合わせて判断することが原則です。
関連)https://www.jscm.org/journal/full/02303/023030175.pdf
耐性パターンの解釈を系統的に学ぶ上で、日本化学療法学会の感受性検査ガイドラインも参照価値があります。
日本臨床微生物学会「腸内細菌の薬剤感受性パターンと要注意菌種の解説」
テモシリンは欧州(ベルギー・英国など)では尿路感染症治療に実際に使われていますが、日本では2026年現在も未承認薬のままです。 これは日本の臨床医にとって「海外文献を読んでも使えない薬」という現実があることを意味します。
関連)https://note.com/medknowledge_ai/n/n03d310aa48db
知らずに混同すると治療選択を誤ります。
しかし、だからといってテモシリン関連の情報を無視してよいわけではありません。検査室レベルでのOXA-48鑑別への活用、海外からの輸入感染症例の対応、そしてAMR対策上の調査目的など、臨床検査・感染制御の場面では重要な情報となります。
関連)https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/52048/23_s08.pdf
海外渡航歴のある患者でカルバペネム耐性腸内細菌(CRE)が疑われる場合、OXA-48型産生菌が輸入されるリスクは無視できません。 香川県環境保健研究センターの調査でも、国内でblaOXA-48が検出された例が確認されています。
関連)https://www.pref.kagawa.lg.jp/documents/52048/23_s08.pdf
厚生労働省のAMR対策アクションプランに基づく「抗微生物薬適正使用の手引き(第四版案)」では、ESBL産生菌に対するカルバペネム代替療法の使用も明記されており、テモシリンを含む海外の治療オプションが今後の日本の臨床ガイドラインに影響を与える可能性は十分あります。
関連)https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001575316.pdf
厚生労働省による最新の抗菌薬適正使用ガイドラインはこちらで確認できます。
厚生労働省「抗微生物薬適正使用の手引き 第四版(案)」(ESBL産生菌治療の最新エビデンスを収録)
カルバペネマーゼ産生菌のアウトブレイク事例や各カルバペネマーゼ型の詳細については、以下の文献も参照に値します。
日本臨床微生物学会誌「新型カルバペネマーゼOXA-48型産生Enterobacteriaceaeの出現」(OXA-48の詳細な解析)
【指定第2類医薬品】イブクイック頭痛薬DX 60錠