シアウェーブ保険点数算定対象疾患要件

シアウェーブエラストグラフィの保険点数について肝硬度測定の算定要件や適用疾患、注意事項を医療従事者向けに詳しく解説。診療報酬D215-3の実践的活用法とは?

シアウェーブ保険点数算定要件解説

シアウェーブエラストグラフィ保険点数の基本
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診療報酬区分D215-3

超音波エラストグラフィーとして200点で保険収載

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対象疾患の限定

慢性肝炎・肝硬変患者の肝硬度測定が適用対象

算定頻度制限

原則として3ヶ月に1回限りの算定が基本

シアウェーブエラストグラフィの保険適用範囲

シアウェーブエラストグラフィによる肝硬度測定は、平成28年度診療報酬改定において超音波エラストグラフィー(D215-3)として保険適用となりました。この検査は200点(2,000円)の診療報酬として算定可能で、慢性肝炎や肝硬変の診断において重要な役割を果たしています。
参考)https://jp.medical.canon/products/ultrasound/more_information/elastography_approval

 

特に注目すべきは、従来の肝生検と異なり、患者への負担が少ない非侵襲的な検査として位置づけられている点です。シーメンスヘルスケアのACUSON S2000eに搭載されたVirtual Touch Quantification(VTQ)をはじめ、日立製作所のARIETTA E70やGE社のLOGIQ S8 FSなど、薬事承認を得た複数の機器で実施可能です。
参考)https://www.medicalonline.jp/news/detail?id=5757

 

保険適用の対象疾患は、以下のような肝疾患に限定されています。

これらの疾患では肝線維化の進行度評価が重要であり、シアウェーブエラストグラフィの結果は肝生検による線維化ステージとの相関も証明されています。
参考)https://www.e-radfan.com/product/61216/

 

シアウェーブエラストグラフィの算定要件と制限事項

診療報酬の算定においては、厳格な要件が設けられています。最も重要な制限として、原則3ヶ月に1回の算定頻度制限があります。ただし、医学的必要性が認められる場合には、診療報酬明細書の摘要欄に詳細な理由と医学的根拠を記載することで、月2回以上の算定も可能です。
参考)https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/sinsa_jirei/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/kensa_1.files/kensa_237.pdf

 

また、同一患者に対してD215-2肝硬度測定を算定している場合、超音波エラストグラフィーの費用は別途算定できません。これは重複算定を防ぐための措置として設けられています。
脂肪肝に対する算定については、特に注意が必要です。社会保険診療報酬支払基金の取扱いによると、単純な脂肪肝に対するD215-2肝硬度測定やD215-3超音波エラストグラフィーの算定は原則として認められていません。適用となるのは、慢性肝炎や肝硬変の疑いがある患者に限定されています。
参考)https://www.ssk.or.jp/shinryohoshu/sinsa_jirei/kikin_shinsa_atukai/shinsa_atukai_i/kensa_1.files/kensa_94.pdf

 

使用機器についても薬事承認を受けた特定の装置のみが対象となり、以下の条件を満たす必要があります。

  • 肝臓の硬さを非侵襲的に計測する薬事承認または認証を取得
  • 適切な精度管理体制の確立
  • 検査技師の十分な技術習得

シアウェーブエラストグラフィの技術的特徴と診断精度

シアウェーブエラストグラフィは、音響放射圧を利用してせん断波(シアウェーブ)を発生させ、その伝搬速度から組織の硬度を定量化する技術です。従来のストレイン型エラストグラフィと比較して、より客観的で再現性の高い測定が可能となっています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jss/43/4/43_430403/_article/-char/ja/

 

VTQの計測結果は、肝生検による線維化進行度分類(F0-F4)との相関が多数の臨床研究で実証されており、診断精度の信頼性が確立されています。特に、F2以上の有意な線維化の検出においては高い感度と特異度を示しています。
技術的優位性として以下の点が挙げられます。

  • ワンクリック操作による簡便な測定
  • リアルタイム画像での測定部位確認
  • 呼吸による影響の最小化
  • 操作者間のばらつき軽減

測定値の解釈については、各装置メーカーが提供するカットオフ値を参考に、総合的な臨床判断が重要となります。また、腹水の存在や肥満、炎症の急性期などは測定値に影響を与える可能性があるため、適応の判断には注意が必要です。

 

シアウェーブエラストグラフィと他検査法との併用戦略

実際の臨床現場では、シアウェーブエラストグラフィを単独で使用するよりも、他の検査法と組み合わせることで診断精度の向上が期待されます。特に超音波減衰法検査(D215-4)との併用は、肝線維化と脂肪化の両方を評価できる有効な手段です。
参考)https://jsph.gr.jp/news/2022-04-01/

 

超音波減衰法検査は令和4年度改定で新設された検査で、200点の診療報酬が設定されています。脂肪性肝疾患の患者に対して3ヶ月に1回の算定が可能ですが、同一月内にシアウェーブエラストグラフィーと併用する場合は、より主要な検査のみの算定となります。
参考)https://shirobon.net/medicalfee/latest/ika/r06_ika/r06i_ch2/r06i2_pa3/r06i23_sec3/r06i233_cls2/r06i2332_D215_4.html

 

MRエラストグラフィとの使い分けも重要な検討事項です。MRエラストグラフィは600点と高い診療報酬が設定されていますが、年1回のみの制限があり、施設基準も厳格です。シアウェーブエラストグラフィは3ヶ月ごとの経過観察に適している一方、MRエラストグラフィは初回診断や重要な治療方針決定時に有用です。
血液検査マーカーとの併用では、以下の組み合わせが効果的です。

  • FIB-4 indexとの併用による段階的診断
  • AST/ALT比との相関評価
  • ヒアルロン酸、IV型コラーゲンとの比較検討
  • M2BPGi(Mac-2結合蛋白糖鎖修飾異性体)との組み合わせ

シアウェーブエラストグラフィの適正運用と品質管理体制

保険診療として適切にシアウェーブエラストグラフィを実施するためには、検査の標準化と品質管理が不可欠です。日本肝臓学会では、超音波エラストグラフィーの適正使用に関するガイドラインを策定し、検査手技の統一化を図っています。
参考)https://www.jsh.or.jp/medical/news/2018/0726_01.html

 

検査実施時の注意点として、以下の要素が測定精度に影響を与えることが知られています。

  • 患者の体位と呼吸状態
  • プローブの圧迫圧
  • 測定部位の選択
  • 肝表面からの深度

特に測定部位については、肝右葉の前区域S5またはS8での測定が推奨されており、胆嚢や血管構造を避けて実施する必要があります。また、測定回数は通常5-10回実施し、成功率80%以上かつ四分位範囲/中央値≦30%の条件を満たすことが望ましいとされています。

 

施設内での品質管理体制として、以下の項目の定期的な確認が重要です。

  • 装置の日常点検とキャリブレーション
  • 検査技師の技術認定と継続教育
  • 測定データの精度管理と統計解析
  • 他検査法との相関性確認

さらに、患者への適切な説明と同意取得も保険診療の要件として重要です。検査の目的、方法、制限事項について十分な説明を行い、患者の理解と協力を得ることが、正確な測定結果の取得につながります。

 

診療記録においては、測定値の記載だけでなく、検査実施の根拠、患者状態、測定条件等の詳細な記録が求められます。特に3ヶ月以内の再検査を実施する場合には、医学的必要性の明確な記載が不可欠となっています。