MRD陰性を3年維持しても、レナリドミドを中止した患者の77%は再開不要のまま完全寛解を保てます。

多発性骨髄腫(MM)に対する自家造血幹細胞移植(ASCT)後のレナリドミド維持療法は、長らく「病勢進行または忍容不能な有害事象が生じるまで継続する」というアプローチが標準とされてきました。 これはIFM/DFCI試験やCALGB100104試験など複数の大規模第3相試験で、維持療法群が無増悪生存期間(PFS)を有意に改善することが示されたことによります。
関連)https://ueno-okachimachi-cocoromi-cl.jp/knowledge/revlimid/
標準的な投与スケジュールは、レナリドミド10mgまたは15mgを1日1回、21日間投与後7日間休薬を1サイクルとして繰り返す方法です。 用量は患者の忍容性や腎機能に応じて5mgから15mgの範囲で調整されます。期間の上限を定めないこのアプローチは、特に移植後早期の再発リスクが高い患者に有効です。
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つまり「治療継続が原則」というのが、従来の考え方です。
しかし近年、MRD(微小残存病変)評価の精度が向上したことで、全患者に無期限継続が必要かどうかが問い直されています。 とりわけ骨髄と画像の両方でMRD陰性が持続している患者において、維持療法の終了時期を科学的根拠に基づいて議論できるようになりました。
関連)https://hokuto.app/post/nEXcIFil3ppxrc0Vtsro
参考:日本骨髄腫学会「多発性骨髄腫の診療指針」では、各治療フェーズの推奨が定期的に更新されています。
2025年2月にBlood誌に掲載されたTerposらの前向き研究は、臨床現場に大きなインパクトを与えました。 ASCT後にレナリドミド維持療法を行い、骨髄および画像診断(PET/CT)でMRD陰性を3年間維持した52例を対象として、維持療法中止後の転帰を前向きに評価した研究です。
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結果は以下の通りでした。
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これは使えそうです。
病勢進行した4例のうち3例は生化学的進行にとどまり、臨床的進行は1例のみでした。 また、年齢・性別・R2-ISSなどの予後予測モデルとPFS・TFSの間に統計学的な有意差は認められず、MRD陰性の持続期間そのものが中止の判断基準となりうることが示唆されています。
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著者らは「最新のMM治療の時代では、一部の患者は無治療のまま完全寛解を維持できる」と結論付けています。 これは維持療法の無期限継続が当然とされてきた従来の常識に対して、MRDガイドによる中止を科学的に検討できることを示した重要なエビデンスです。
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参考:この研究の詳細な解説と編集部コメントはHOKUTOで読めます。
HOKUTO|Blood 2025:MRD陰性3年後の維持療法中止は安全か?(解説記事)
ASCT適応外の患者に対するレナリドミド維持療法もまた、独自のエビデンス体系を持ちます。FIRST試験(MMVAR/IFM2007-01)では、MPT(メルファラン+プレドニゾロン+サリドマイド)に対してRd継続療法(レナリドミド+低用量デキサメタゾン)が有意にPFSおよびOSを改善することが示されました。この試験でのRd継続投与の中央投与期間は約80.2週と報告されています。
移植非適応患者では腎機能が低下しているケースも多く、用量調整が重要です。 クレアチニンクリアランス(CrCl)30〜60mL/分の場合は10mgへの減量、CrCl<30mL/分(透析非導入)では15mgを隔日投与、透析患者では5mgを1日1回(透析日は透析後に投与)が基本とされています。
腎機能別の用量調整が条件です。
また、移植非適応の高齢MM患者では、ダラツムマブ+レナリドミド+デキサメタゾン(DRd療法)のMARIA試験など、レナリドミドを含む多剤併用での維持療法延長に関するエビデンスも蓄積されつつあります。これら新規薬剤との併用による維持療法期間への影響も、今後の重要な検討課題です。
レナリドミドを長期にわたって継続する場合、副作用の蓄積と管理が臨床上の重要なテーマになります。 特に注意すべき副作用は以下の通りです。
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| 副作用 | 発現頻度 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 好中球減少症 | 31.8% | G-CSF使用検討、用量減量 |
| 貧血 | 23.5% | EPO製剤の併用を検討 |
| 血小板減少症 | 16.2% | 投与中断・減量基準の厳守 |
| 深部静脈血栓症(DVT) | 7.9% | 低分子ヘパリンまたはアスピリン予防投与 |
| 肺塞栓症 | 3.9% | 早期発見・抗凝固療法の継続 |
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骨髄抑制は投与開始後の早期に多く、特に最初の2〜3サイクルで顕在化しやすい傾向があります。 長期継続でも定期的な血液検査(少なくとも月1回)が必要で、急激なGrade 3以上の好中球減少(<1000/μL)が確認された場合は速やかに休薬を検討します。
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厳しいところですね。
二次発がんリスクもまた、長期投与における懸念事項の一つです。 DETERMINATION試験では、RVd+ASCT+R維持療法群とRVd単独群を比較した際の二次がん発症率がそれぞれ11%対10%と大きな差はなかったものの、維持療法の長期化に伴うリスクの蓄積は個々の患者の背景を考慮して評価する必要があります。
関連)https://oncolo.jp/news/220623y01
血栓予防に関しては、デキサメタゾン併用時や高齢者・肥満・長期臥床などのリスク因子を持つ患者では、アスピリン100mg/日または低分子ヘパリンの予防投与が推奨されています。 投与中は抗凝固薬の管理状況も定期的に確認することが原則です。
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維持療法の継続期間を語る上で、エビデンスや副作用管理と同等に重要でありながら見過ごされがちな視点があります。それが「RevMate(レブメイト)管理」と患者アドヒアランスの問題です。 レナリドミドはサリドマイド誘導体であるため、催奇形性リスクに対する厳格な安全管理措置として、RevMateへの登録・定期確認が義務付けられています。
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維持療法が数年にわたる長期戦になると、患者側の管理疲れによるRevMate手続きの遅延や、服薬スケジュールの混乱が実臨床で散見されます。 特に21日投与・7日休薬というスケジュールは、患者が誤って休薬期間を飛ばして連続服用してしまうリスクを内包しており、骨髄抑制などの重篤な副作用につながりかねません。
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これは無視できない問題です。
医療従事者側の対策として、薬局や看護師との連携によるアドヒアランス確認体制を整備することが有効です。具体的には、処方時にカレンダー型の服薬管理シートを提供する、調剤薬局と連携して毎サイクル開始前に服薬状況を確認するといった取り組みが報告されています。
また、男性患者においても精液中への移行が認められているため、内服中・内服終了後一定期間(通常1週間)は避妊が必要です。 維持療法が長期化する中でこの指導が形骸化しやすいことも、臨床現場が注意すべき盲点の一つといえます。
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長期維持療法を安全に続けるには、RevMateの確認を毎サイクルの「チェックポイント」として診療ルーティンに組み込むことが最も確実な対策です。患者本人だけでなく、パートナーへの指導記録を残しておくことも、後々のトラブル回避につながります。
参考:PMDAによるRevMate管理手順・適正使用ガイドはこちら
PMDA|レナリドミド製剤の安全管理方策・適正使用ガイド(PDF)
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