「乳酸値が正常範囲内でも、敗血症の患者が急変するケースが約30%存在します。」

乳酸(Lactate、Lac)は、グルコースが細胞内で代謝される過程で生成される陰イオンです。 嫌気的な解糖系が亢進すると、骨格筋・赤血球・脳などの組織で大量に産生されます。
関連)https://www.acute-care.jp/ja-jp/learning/glossary/bloodgas/lac
臨床検査における血中乳酸の正常値(基準値)は、検体の種類や測定機器によって異なります。つまり施設ごとに確認が必要です。
| 基準値の例 | 単位 | 出典・条件 |
|---|---|---|
| 4〜16 | mg/dL | 成人一般検査(BML基準値) |
| 5〜18 | mg/dL | 小児基準値 |
| 4〜14 | mg/dL | 日本医事新報社・乳酸アシドーシス定義 |
| <2 | mmol/L | 離床リスク管理の目安 |
「乳酸値 正常値」と検索すると、施設によって4〜16 mg/dLと5〜18 mg/dLなど数値が微妙に異なって表示されます。 これは測定機器の差だけでなく、採血部位(静脈血・動脈血)や検体の処理時間によっても影響を受けるためです。
関連)https://www.acute-care.jp/ja-jp/learning/glossary/bloodgas/lac
基準範囲が基本です。まず自施設の採用している基準値を確認してください。
乳酸は「疲労物質」というイメージが一般にありますが、それは古い概念です。 現在では、乳酸はピルビン酸から乳酸脱水素酵素(LDH)により生成され、心筋や肝臓・腎臓でエネルギー源として再利用されることが明らかになっています。
関連)https://biz.arkray.co.jp/lact/hatta/index.html
意外ですね。乳酸は悪者ではなく、エネルギー基質でもあるのです。
乳酸の産生が代謝を上回った場合に、血中乳酸値の上昇(高乳酸血症)が起こります。 この状態が継続し血液のpHが低下すると、乳酸アシドーシスへと進行します。
乳酸の基本「乳酸は悪者なのか?」(ARKRAY):乳酸の生理的役割と産生・代謝メカニズムを図解で解説しています。
高乳酸血症・乳酸アシドーシスの原因は、古典的にタイプAとタイプBに分類されます。 これは診断と治療方針の決定に直結するため、医療従事者は必ず押さえておく分類です。
タイプAが原則です。ショックや呼吸不全がない場合でも、薬剤や肝疾患の関与を疑いましょう。
特に注目すべきは、2型糖尿病の第一選択薬としてよく使われるメトホルミン(ビグアナイド薬)です。 この薬は肝臓での糖新生を抑制し、ピルビン酸を蓄積させることで乳酸産生を増加させる副作用があります。 腎機能が低下した患者への継続投与が乳酸アシドーシスを引き起こした事例は少なくなく、重篤な予後不良につながるリスクがあります。
関連)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_12363
また、ビタミンB1(チアミン)欠乏は見落とされやすいタイプBの原因の一つです。 中心静脈栄養(IVH)を導入している患者や低栄養状態の患者では、特に注意が必要です。
MSDマニュアル プロフェッショナル版「乳酸アシドーシス」:タイプA・Bの分類と病態、診断基準を権威ある医学書で確認できます。
乳酸値の絶対値だけを見て判断するのは危険です。これは医療従事者が実際にやりがちな判断ミスの典型です。
正常な状態では、乳酸とピルビン酸はおよそ10:1の比率(L/P比 <10)を保っています。 このL/P比が上昇している場合は、ミトコンドリア機能障害や組織低酸素の存在を示唆します。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.34433/J00642.2021107421
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.34433/J00642.2021107421
つまり乳酸値とL/P比の両方が条件です。
先天性高乳酸血症(ミトコンドリア病・糖新生異常)の鑑別には、乳酸・ピルビン酸比に加え、ケトン体比・血中アミノ酸分析・尿中有機酸分析を組み合わせた系統的なアプローチが推奨されています。 特に小児科領域での乳酸値上昇では、成人より広い鑑別診断が必要です。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.34433/J00642.2021107421
厚生労働省科学研究費「先天性高乳酸血症症候群の診療ガイドライン」(PDF):L/P比を用いた鑑別の流れと先天代謝異常の急性期・慢性期治療の方針が記載されています。
臨床現場で乳酸値を活用するうえで、「一点の値」より「経時的な変化(ラクテートクリアランス)」の方が予後予測に有用です。 これは特に救急・ICU・リハビリテーション現場で重要な視点です。
関連)https://www.rishou.org/for-memberships/qa/qa-vol-130
敗血症診療ガイドラインでは、初期蘇生後6時間でのラクテートクリアランスが10%以上改善するかどうかを、治療介入の評価指標として重視しています。 2 mmol/L(約18 mg/dL)を超える乳酸値が持続する患者では、離床リスクが高まるとされています。
関連)https://www.rishou.org/for-memberships/qa/qa-vol-130
離床前は乳酸値の確認が必須です。
関連)https://www.rishou.org/for-memberships/qa/qa-vol-130
理学療法士・作業療法士が離床判断を行う場面でも、乳酸値を血液ガス分析のデータから読み取れる知識は、患者安全に直結する重要なスキルです。
関連)https://www.rishou.org/for-memberships/qa/qa-vol-130
また、運動時の乳酸性閾値(LT:Lactate Threshold)という概念もあります。 これは運動強度を上げるにつれて血中乳酸濃度が急増する運動強度の境界点であり、心臓リハビリや運動療法の強度設定に活用されています。 一般的にLTは最大酸素摂取量(VO₂max)の50〜70%に相当する運動強度で出現します。
関連)https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/tairyoku-kiki/nyusan-ikichi.html
日本離床研究会「Q&A Vol.130 乳酸値からみる離床のリスク管理」:乳酸値に基づいた具体的な離床判断の基準と、臨床事例が解説されています。
acute-care.jp「ラクテート(乳酸)血液ガス用語集」:基準値の数値根拠と産生・代謝の図解つき解説です。集中治療・急性期現場での実践に直結する内容です。
血中(タンパク非結合型)
↓ 糸球体濾過(タンパク結合型は通過しにくい)
↓ 尿細管分泌(OAT/OCT経由:能動輸送)
↓ 尿細管再吸収(脂溶性・尿pHで変化)
↓ 尿中排泄
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