PCAボタンを1日3回以上押した患者に定期モルヒネを増量しない場合、突出痛が繰り返されて患者の苦痛が延々と続きます。

在宅でのモルヒネ持続皮下注は、塩酸モルヒネ注100mg/10mLをPCAポンプに充填し、1mg=0.1mLとして換算するのが標準的な方法です。 開始量はモルヒネ換算で10〜30mg/日を目安とし、持続流量は0.2〜1mL/hの範囲に収めるよう薬液濃度を調整します。 皮下投与では流量が多いほど注入部位の疼痛・硬結が生じやすいため、最大でも1mL/hを超えないようにするのが原則です。
関連)https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/palliative_care/050/pcapump.pdf
PCAのレスキュードーズは「1時間量(1日定期投与量の1/24)」を設定し、ロックアウトタイムは15〜30分が推奨されています。 テルモTE-361PCAでは不応期を15分・30分・45分・1h・1.5h・2hの6段階から選択でき、PCA1回投与上限は2mLに固定されています。 流量設定が2.05mL/h以上であっても1回PCAは2mL止まりになるため、高用量例では1回レスキュー量が実際の1時間量を下回ることに注意が必要です。
関連)https://hayabusa.gifu.med.or.jp/kenshu/wp-content/uploads/2020/10/training0000084.pdf
レスキューボタンの操作回数が1日3回以上になった場合、定期モルヒネ量を30〜50%増量する目安があります。 これが基本です。増量のタイミングを見逃すと突出痛が繰り返され、患者の不安・苦痛が積み重なるため、訪問看護師による回数記録の共有が欠かせません。
関連)https://www.gotocyuoh-hospital.jp/upload/pdf/magazine/kiyou/16/4-2.pdf
| 項目 | 推奨値・目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 持続流量 | 0.2〜1 mL/h | 最大1 mL/hを超えない |
| ロックアウトタイム | 15〜30分 | TE-361PCAは6段階設定 |
| 開始量(モルヒネ) | 10〜30 mg/日 | 増量は前日量×1.3〜1.5倍 |
| PCA増量基準 | 1日3回以上使用 | 30〜50%増量 |
穿刺部位は大きな静脈周辺の皮下が望ましく、前胸部・腹部・上腕外側が在宅では管理しやすい部位として選ばれます。 24G静脈留置針を使用し、皮膚の損傷を防ぐため接続部の下に不織布などを挟んで固定するのが推奨です。 留置針は定期的に交換が必要で、発赤・腫脹・疼痛が出た場合は速やかに刺入部位を変更します。
関連)https://mcoop-kenbun.jp/medical/document02.html
患者や家族が在宅でポンプを安心して管理できるよう、ベッド位置・安定姿勢からポンプの配置場所を設定し、PCAスイッチの使用感を退院前に確認しておくことが重要です。 これは使えそうですね。薬局薬剤師が退院時共同指導から参画し、使用方法と緊急連絡先を文書で渡す体制が、安全な在宅移行を支えます。
延長チューブは患者の動きに合わせた長さに調整します。 長すぎると引っ張りによる針抜けが起こり、短すぎると体位変換時に張力がかかります。つまり「余裕はあるが床まで届かない長さ」が目安です。
関連)https://www.hos.akita-u.ac.jp/kanwa/disclosure/pdf/pocket-manual_15_20240125.pdf
モルヒネ持続皮下注に制吐薬や鎮静薬を混注することは実臨床で頻繁に行われますが、配合変化に注意が必要です。 四国がんセンターのマニュアルによれば、モルヒネとフェンタニルの配合は24時間安定ですが、組み合わせる薬剤によっては白濁・沈殿・活性低下が生じます。 多剤併用時は混注後の外観変化を必ず確認し、少しでも濁りが生じた薬液は使用しないのが原則です。
関連)https://shikoku-cc.hosp.go.jp/hospital/wp-content/uploads/sites/4/2019/04/manual_7.pdf
ハロペリドール(セレネース)は配合変化が比較的少なくモルヒネとの相性がよい薬剤として知られますが、ブスコパン(ブチルスコポラミン)は60〜120mg/日を持続皮下注で使う場合にモルヒネと混注可能とされています。 ただし、ケタミン(ケタラール)を皮下注として使用する際は皮膚への刺激性があるため、リンデロン2mg(0.5mL)を混入するか生食で希釈して刺激を軽減するテクニックが在宅現場で用いられています。 厳しいところですね。
関連)http://www.zaitakuiryo-yuumizaidan.com/textbook/pdf/5-2_2.pdf
配合変化を最小化するための実務ポイントを整理します。
在宅でのPCA管理は、在宅療養支援診療所・訪問看護ステーション・保険薬局の三者が緊密に連携することで成立します。 訪問看護師はPCAボタン使用回数・注入部位の状態・バイタルを毎訪問時に確認し、異常値を速やかに在宅医へ報告する役割を担います。薬局側では大容量バルーン(100mL以上)を活用して週2〜3回の交換で対応できる体制を整えると、患者・家族の負担が大きく軽減されます。
関連)https://www.med.or.jp/dl-med/etc/cancer/cancer_care_1-3.pdf
在宅医療連合学会の資料では、持続注射を在宅で広めるための課題として「24時間対応できる訪問看護体制の整備」が挙げられています。 在宅PCAでは夜間・休日に突出痛やポンプトラブルが起きた場合の対応フローを事前に書面で整備しておくことが不可欠です。対応できる体制が整備されていれば問題ありません。緊急時の連絡先・対応手順をベッドサイドに掲示しておくことが実務上の最低限のルールです。
関連)https://www.jahcm.org/assets/images/academic_journal/24_vol.5-4-01.pdf
多職種連携で特に重要なのは「情報の非対称性をなくすこと」です。訪問看護師が「なんとなく痛そう」という主観的記録しか残さなければ、在宅医は定期量の増量判断ができません。NRS(数値評価スケール)やPCAボタン押下回数の数値記録を統一フォーマットで共有する仕組みが、安全なPCA管理の土台になります。
参考:在宅医療財団テキスト「持続皮下注入法の実際」(穿刺・流量設定を動画解説)
https://www.yuumi.or.jp/textbook/section.php/3-7-4
医療用麻薬適正使用ガイダンス(厚生労働省・令和6年版)では、経口モルヒネ1日量が120mg以上になった時点で注射製剤への切り替えを検討することが明記されています。 これが一つの切り替えタイミングの目安です。また、先行薬の最終投与から12時間後を目安に新薬を開始するタイミング調整も重要で、これを怠ると血中濃度の谷間で強い痛みが出ます。
関連)https://www.mhlw.go.jp/bunya/iyakuhin/yakubuturanyou/dl/iryo_tekisei_guide2017b.pdf
参考:厚生労働省「医療用麻薬適正使用ガイダンス(令和6年版)」(換算比・スイッチング手順の公式指針)
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001245820.pdf
在宅PCA管理で実際に起きやすいトラブルの多くは「初期設定の見落とし」によるものです。これは意外ですね。テルモTE-361PCAなどのポンプでは、不応期(ロックアウトタイム)の設定変更がポンプ停止状態でしか行えず、設定を忘れたまま稼働させると過剰投与リスクが生じます。 退院前の設定確認チェックリストを施設ごとに整備しておくことが事故防止の第一歩です。
関連)https://hayabusa.gifu.med.or.jp/kenshu/wp-content/uploads/2020/10/training0000084.pdf
持続皮下注の場合、静脈内投与と比べてバイオアベイラビリティが若干低く、また吸収速度は皮下組織の状態に左右されます。浮腫がある部位への刺入は吸収が遅延するため、浮腫部位への穿刺は避けることが原則です。 「刺しやすい場所」を優先した結果、薬効が不安定になるケースが在宅現場では報告されています。穿刺部位の選択は薬効に直結します。
関連)https://mcoop-kenbun.jp/medical/document02.html
PCAポンプのバッテリー管理も見落とされがちです。小型シリンジポンプ(例:テルモTE-361PCA)は8時間充電で24時間連続使用が可能ですが、 在宅では充電忘れによるポンプ停止が突出痛の原因になります。充電スケジュールを訪問看護師の訪問時間に合わせて設定し、家族にも充電確認を習慣化してもらうことが重要です。
関連)https://mcoop-kenbun.jp/medical/document02.html
参考:国立がん研究センター中央病院「PCAポンプ使い方の手引き」(設定手順・安全管理の詳細)
https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/palliative_care/050/pcapump.pdf
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