絞扼性イレウスの診断を6時間以上遅らせると、腸管壊死で手術しても救命率が急落します。

急性腹症診療ガイドライン2025では、イレウスと腸閉塞症の定義が2015年版から引き継がれつつ、さらに明確化されました。腸管の機械的閉塞を伴う病態を「腸閉塞症」、腸管の機械的閉塞を伴わない腸蠕動または腸運動の欠如に起因する病態を「イレウス」と定義します。
関連)https://www.carenet.com/news/general/carenet/60576
従来、日本では「機械性イレウス」「機能性イレウス」という用語が混在していましたが、本ガイドラインにより用語の統一が図られています。これは臨床現場での混乱を避け、正確な診断と治療方針の決定を支援するための重要な変更です。つまり用語の整理ということですね。
関連)https://knowledge.nurse-senka.jp/234392/
2025年版では、IPO(intestinal pseudo-obstruction:腸管偽性閉塞)の概念も新たに加わりました。IPOは器質的な閉塞がないにもかかわらず、腸閉塞様の症状を呈する病態です。この定義の拡充により、より幅広い病態に対応可能になっています。
関連)https://www.jsvs.org/ja/info/news/241001/20240916.pdf
急性腹症全体の中でイレウス・腸閉塞は約4~9%を占め、腸管感染症に次いで頻度が高い疾患です。医療従事者が遭遇する機会が多いため、最新の定義と診断基準を理解しておく必要があります。
関連)https://www.inazawa.jaaikosei.or.jp/medical_personnel/pdf/20241016ileus.pdf
イレウスの診断において、腹部X線検査とCT検査が中心的な役割を果たします。腹部X線では、小腸に二ボー像(niveau:鏡面像形成)という特徴的な所見を認めます。腸管拡張の診断基準は小腸3cm以上、大腸6cm以上です。
関連)http://www.nms.co.jp/QQ/fukutuu.html
CT検査は急性腹症の診断において感度90~100%、特異度91~99%、正診率94~100%という極めて高い診断精度を示します。特に絞扼性イレウスの早期診断には腹部CTが最も有効で、血流評価のため可能な限り単純CTに加えて造影CTを施行すべきです。
関連)https://uonuma-medical.jp/koide/cmsdir/wp-content/uploads/2021/02/c2_kyuseifukusyou.pdf
やっぱりCTはスゴイですね。
絞扼性イレウスのCT所見としては、閉鎖ループ(closed loop)、腹水の貯留、腸間膜間の腹水、血管の怒張などが重要です。これらの所見を総合的に評価することで、緊急手術の適応を判断します。
関連)https://www.wakayama-med.ac.jp/med/eccm/assets/images/library/bed_side/17.pdf
ただし、虫垂の位置異常や小腸イレウスとの誤診、穿孔後の婦人科疾患との鑑別困難など、CTにも落とし穴があります。画像所見だけでなく、臨床症状や身体所見を総合的に評価する必要があります。
関連)https://uonuma-medical.jp/koide/cmsdir/wp-content/uploads/2021/02/c2_kyuseifukusyou.pdf
急性腹症診療ガイドライン2025の詳細については、医学書院の公式サイトで確認できます。
https://www.igaku-shoin.co.jp/book/detail/115447
腸閉塞症は機械的閉塞の有無により、単純性腸閉塞と絞扼性腸閉塞に大別されます。単純性腸閉塞は腸管の血流障害を伴わない閉塞で、絞扼性腸閉塞は腸管の血流障害を伴う閉塞です。
関連)https://www.onaka-kenko.com/various-illnesses/digestive-organs/digestive-organs_03.html
絞扼性イレウスは救命のために開腹して腸管壊死部を除去する外科措置が唯一の方法であり、発症から約6時間ないし12時間以内の開腹が予後のために特に重要です。血流再開までの時間は6時間が限界とされており、それを超えると腸管壊死が進行します。
関連)https://www.medsafe.net/precedent/hanketsu_0_479.html
つまり時間との勝負です。
絞扼性イレウスの初期の特徴的症状として、腹部の急激かつ持続的な激痛、嘔吐、排便や排ガスの停止が挙げられます。単純性イレウスでは間欠的な腹痛が特徴ですが、絞扼性では強く持続的な腹痛を感じることが診断の重要なポイントです。
関連)https://knowledge.nurse-senka.jp/225911/
イレウスの治療は、病態により保存的治療と外科的治療に分かれます。麻痺性イレウスでは絶飲食、輸液、イレウス管の挿入などの保存的治療が基本です。一方、絞扼性イレウスでは緊急手術が必須となります。
関連)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000665775.pdf
保存的治療を選択する際には、麻痺性イレウスであることを確認することが最も大切です。腹痛がないか軽症であること、発熱がないこと、血液検査で白血球増多やCRP等の炎症反応の上昇がないこと、電解質異常がないことを確認します。これが保存治療の条件ですね。
関連)https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000665775.pdf
絞扼性イレウスを確実に診断する単一の方法はありませんが、持続痛、強い局在性の圧痛、腹膜刺激症状、圧痛のある腫瘤触知、腸雑音の消失、発熱、頻脈、白血球増加などを参考にします。これらの所見が複数ある場合には、絞扼性を強く疑い緊急手術を検討します。
関連)http://www.nms.co.jp/QQ/fukutuu.html
医療過誤のパターンとして、単純性イレウスと診断して保存的治療を継続したが、実際には絞扼性イレウスで開腹手術の決定が遅れたケースが報告されています。開腹手術決定義務を怠り、イレウス管の挿入を試みるのみで開腹手術を決定しなかった場合、診療上の注意義務違反となります。
関連)https://www.medsafe.net/precedent/hanketsu_0_174.html
絞扼性の可能性がある場合には、早期に外科専門医にコンサルトし、手術のタイミングを逃さないことが重要です。救命のための外科的介入の遅れは、患者の予後を著しく悪化させるからです。
術後イレウスは開腹手術後に最も多く発症し、術後3~5日に起こりやすいとされています。麻痺性イレウスは腸管壁の神経や平滑筋が障害されることで腸管運動が麻痺する病態です。
関連)https://www.kango-roo.com/learning/8426/
術後イレウスの観察項目として、腹壁の状態(腹部膨満など)、排便・排ガスや悪心・嘔吐、生理的でない腹痛の有無をチェックします。通常、絶飲食下でも2~3日で排ガスがみられますが、それ以降にも排ガスがない場合はイレウスの可能性を考え、観察を継続する必要があります。
関連)https://www.kango-roo.com/learning/8426/
イレウスでは腸内容物の停滞によって嘔吐が起こり、水分・電解質を喪失し、脱水が生じます。また腸管壁の循環障害によって腸管の浮腫が起こった結果、水分・電解質が血管から腸管内に漏出し、大量の水分が溜まるため、さらに脱水が進行します。脱水と電解質異常の管理も重要な看護ポイントです。
関連)https://knowledge.nurse-senka.jp/225911/
術後イレウスの早期発見のためには、症状についての理解と継続的な観察が不可欠です。腹部症状の変化を見逃さず、必要に応じて画像検査を実施し、適切な治療介入につなげることが医療従事者の役割となります。
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