抗ロイコトリエン薬の種類と一覧及び効果比較

抗ロイコトリエン薬の種類や特徴を詳しく解説。気管支喘息やアレルギー性鼻炎治療に使われる代表的な薬剤の一覧と、その作用機序から選択基準まで網羅。あなたの処方は患者さんに最適なものになっていますか?

抗ロイコトリエン薬の種類と一覧

抗ロイコトリエン薬の基本情報
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主な効能・効果

気管支喘息、アレルギー性鼻炎の治療に用いられる

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作用機序

ロイコトリエン受容体に拮抗し、気道炎症と鼻閉を改善

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特徴

即効性はないが、継続使用で効果を発揮(1週間以上必要)

抗ロイコトリエン薬の作用機序と特徴

ロイコトリエン薬は、アレルギー反応の重要なメディエーターであるロイコトリエンの作用を阻害する薬剤です。ロイコトリエンは、マスト細胞や好酸球、マクロファージなどから放出され、アレルギー症状の発現に関与しています。

 

ロイコトリエンの主な作用としては以下のものが挙げられます。

  • 気管支平滑筋の強力な収縮
  • 血管拡張・血管透過性亢進
  • 樹状細胞(DC)の遊走
  • 好酸球の増多

抗ロイコトリエン薬は、これらの作用を阻害することで、気管支拡張や好酸球炎症を抑制し気管支喘息を改善します。また、血管透過性や血管拡張を抑制することで、浮腫による鼻閉を改善する効果も持ちます。

 

特筆すべき点として、ロイコトリエン自体にはヒスタミンのような知覚神経反射を介した鼻汁分泌・くしゃみ誘発作用は知られていませんが、臨床試験では抗ロイコトリエン薬は第二世代の抗ヒスタミン薬と同等の鼻汁・くしゃみ抑制作用を示すことが明らかになっています。

 

抗ヒスタミン薬との違いとして、抗ロイコトリエン薬は即効性がなく、効果発現には一般的に1週間以上を要することが挙げられます。しかし、持続的な使用によって特に鼻づまりに対しては第2世代抗ヒスタミン薬よりも優れた効果を発揮します。

 

抗ロイコトリエン薬の主要種類と一覧表

日本で現在使用されている主な抗ロイコトリエン薬は、シングレア/キプレス(モンテルカスト)とオノン(プランルカスト)の2種類です。これらは薬理学的分類としてはCysLT1受容体拮抗薬に分類されます。

 

以下に、日本国内で使用可能な抗ロイコトリエン薬の一覧を示します。

分類 商品名 一般名 主な剤形 保険適応
CysLT1受容体拮抗薬 シングレア
キプレス
モンテルカスト 錠剤、OD錠、チュアブル錠、細粒 気管支喘息
オノン プランルカスト カプセル、ドライシロップ(DS) 気管支喘息
アレルギー性鼻炎

注目すべき点として、オノンカプセルのみがアレルギー性鼻炎に対して適応を持っており、シングレアやオノンDSは喘息のみの適応となっています。

 

以下に、モンテルカスト製剤の主な販売名と薬価を示します(一部抜粋)。

  • キプレス細粒4mg(先発品):76.2円/包
  • キプレスチュアブル錠5mg(先発品):73.4円/錠
  • キプレス錠5mg(先発品):50.8円/錠
  • キプレス錠10mg(先発品):59.8円/錠
  • キプレスOD錠10mg(先発品):59.8円/錠
  • モンテルカスト錠5mg「サワイ」(後発品):11.4円/錠
  • モンテルカスト錠10mg「サワイ」(後発品):26.4円/錠

同様に、プランルカスト製剤の主な販売名と薬価も以下の通りです。

  • オノンカプセル112.5mg(先発品):21.8円/カプセル
  • オノンドライシロップ10%(先発品):34.3円/g
  • プランルカストカプセル112.5mg「サワイ」(後発品):23.4円/カプセル
  • プランルカストDS10%「トーワ」(後発品):22.5円/g

抗ロイコトリエン薬の小児への適用と用量

抗ロイコトリエン薬は小児の気管支喘息やアレルギー性鼻炎の治療にも広く使用されています。小児用量は年齢や体重に応じて慎重に設定する必要があります。

 

プランルカスト(オノン)はドライシロップ(DS)剤形があり、体重換算で1日量7mg/kgを目安に投与します。一方、モンテルカスト(シングレア/キプレス)は年齢によって剤形を使い分けるのが特徴的です。

  • 1歳以上6歳未満:細粒剤
  • 6歳以上:チュアブル錠

これらの剤形の違いは、小児の服薬コンプライアンスを高めるための工夫と言えます。特に、チュアブル錠は噛み砕いて服用できるため、錠剤の飲み込みが難しい小児に適しています。

 

小児への抗ロイコトリエン薬の使用においては、成人と比較して副作用の発現に特に注意し、定期的な評価を行いながら継続使用の判断をすることが重要です。

 

モンテルカストとプランルカストの効果比較

日本で主に使用されている2種類の抗ロイコトリエン薬、モンテルカスト(シングレア/キプレス)とプランルカスト(オノン)には、いくつかの違いがあります。両剤の効果と特性を比較してみましょう。

 

適応症の違い

  • プランルカスト(オノン):気管支喘息・アレルギー性鼻炎の両方に適応あり
  • モンテルカスト(シングレア/キプレス):主に気管支喘息に適応

剤形と投与回数

  • プランルカスト:カプセル剤・ドライシロップ、1日2回投与が基本
  • モンテルカスト:錠剤・OD錠・チュアブル錠・細粒、1日1回就寝前投与

投与回数の違いは服薬アドヒアランスに直接影響するため、モンテルカストは1日1回投与という点で患者の利便性が高いと言えます。特に小児や高齢者など複数の薬剤を服用している患者では、この違いが重要になることがあります。

 

効果発現と持続性
両剤とも効果発現までに約1週間を要しますが、臨床的な印象としては鼻閉に対する効果はモンテルカストの方がやや優れているとする医師の意見もあります。ただし、これは個人差が大きく、症例に応じた選択が必要です。

 

併用療法での位置づけ
喘息治療においては、両剤ともに吸入ステロイド薬との併用で用いられることが多く、ステップアップ療法における追加薬としての位置づけです。アレルギー性鼻炎治療では、プランルカストが抗ヒスタミン薬と併用されることで、効果の相乗効果が期待できるという報告もあります。

 

抗ロイコトリエン薬の副作用と安全性プロファイル

抗ロイコトリエン薬は比較的安全性の高い薬剤ですが、いくつかの副作用に注意が必要です。以下に主な副作用と安全性に関する情報をまとめます。

 

一般的な副作用

  • 頭痛・頭重感
  • 消化器症状(腹痛、下痢、悪心など)
  • 皮膚症状(発疹、掻痒など)
  • 肝機能異常(まれ)

これらの副作用は一般的に軽度であり、投与中止に至るケースは少ないとされています。

 

特殊な副作用と注意点
モンテルカストでは、精神神経系の副作用(不眠、夢の異常、行動変化など)が報告されています。2020年3月にFDAはモンテルカストの使用に関連する重篤な精神神経系の副作用について警告を強化し、患者向け薬剤ガイド(Medication Guide)の提供を義務付けました。

 

このような背景から、特に小児や精神疾患の既往がある患者への投与には注意が必要です。代替治療法がある場合は、リスク・ベネフィットを慎重に検討すべきでしょう。

 

長期使用の安全性
長期使用における安全性プロファイルは比較的良好ですが、定期的な肝機能検査や全身状態の評価が推奨されます。特に、3ヶ月以上の継続使用では、効果を定期的に再評価し、継続の必要性を検討することが重要です。

 

他剤との相互作用
一般的に薬物相互作用は少ないとされていますが、以下のような注意点があります。

  • モンテルカスト:フェノバルビタール、リファンピシンなどの薬物代謝酵素誘導剤との併用で血中濃度が低下する可能性
  • プランルカスト:一部の抗凝固薬との併用で、効果増強の可能性

抗ロイコトリエン薬の新たな可能性と研究動向

抗ロイコトリエン薬は従来の気管支喘息やアレルギー性鼻炎治療を超えて、新たな適応や使用法が研究されています。ここでは最新の研究動向や将来の展望について考察します。

 

COVID-19との関連研究
近年、COVID-19の重症化メカニズムにロイコトリエンが関与している可能性が指摘されています。一部の研究では、モンテルカストの投与がCOVID-19患者の重症化を抑制する可能性について検討されています。

 

この仮説は、ロイコトリエンが引き起こす炎症カスケードがCOVID-19の肺障害メカニズムと重なる部分があるという観察に基づいています。しかし現時点では十分なエビデンスがなく、さらなる研究が必要とされています。

 

慢性副鼻腔炎への応用
好酸球性副鼻腔炎など、従来の治療に抵抗性を示す慢性副鼻腔炎に対して、抗ロイコトリエン薬の併用療法が注目されています。特に鼻茸(ポリープ)を伴う症例では、ステロイド点鼻薬との併用で相乗効果が期待できるという報告があります。

 

小児アトピー性皮膚炎への効果
抗ロイコトリエン薬は気道以外の炎症性疾患にも効果を発揮する可能性があります。一部の研究では、小児アトピー性皮膚炎に対するモンテルカストの効果が検討されていますが、保険適応がない現状では、「気管支喘息」や「アレルギー性鼻炎」を合併している患者に限って使用されるべきでしょう。

 

次世代の抗ロイコトリエン薬の開発
現在、より選択性の高いCysLT2受容体拮抗薬や、複数のロイコトリエン受容体に作用する薬剤の開発が進んでいます。これらの新薬は、既存の抗ロイコトリエン薬で十分な効果が得られない患者への新たな選択肢となる可能性があります。

 

また、5-LO阻害薬などの異なる作用機序を持つ抗ロイコトリエン薬も研究されており、今後のアレルギー疾患治療の選択肢がさらに広がることが期待されています。

 

医療従事者は、これらの研究動向に注目し、新たなエビデンスや適応の可能性について情報を更新していくことが重要です。個々の患者の特性や症状、合併症を考慮した最適な治療選択のために、抗ロイコトリエン薬の特性と可能性について理解を深めていきましょう。