画像診断が「正常」でも、CTCが陽性なら転移が始まっている可能性があります。

循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cells:CTC)とは、原発巣から血流に遊離してきたがん細胞のことです。 1869年にその存在が初めて報告されてから130年以上が経過し、2004年に初めてその臨床的意義が論文で報告されました。
関連)https://light-clinic-ginza.com/cancer_ctc
つまり、高感度な捕捉技術がなければ検出できません。
CTC検査の方法は、大きく2種類に分類されます。代表的な手法を以下に整理します。
| 検査方法 | 捕捉原理 | 捕捉率 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| セルサーチ法 | 上皮系マーカー(EpCAM)で標識して捕捉 | 約61% | FDA承認済み・再現性が高い |
| 微小流路デバイス法 | 56,000個以上の微小な穴でがん細胞を物理的に捕捉 | 90%以上 | 上皮系マーカーに依存しない |
セルサーチ法は米国FDAにより乳がん・前立腺がん・大腸がんの診断補助として承認を受けています。 血液サンプル7.5mlに含まれる1個のがん細胞を再現性良く検出できるとされています。
関連)https://jscsf.org/inspection/inspection002
これは精度が高いということですね。
一方で問題があります。上皮間葉転換(EMT変換)を経たがん細胞は上皮系マーカー(EpCAM)が消失するため、セルサーチ法では検出できません。 転移しやすい悪性度の高いCTCほど検出から漏れるという逆説的な限界が存在します。
関連)https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H03728/
微小流路デバイス法は米国セルシー社とジョンズ・ホプキンス医科大学、日本遺伝子研究所の共同研究から生まれた技術です。 細胞表面マーカーに依存せず、がん細胞を物理的な大きさと形状で捕捉するため、EMT変換後の間葉系転移がん細胞も検出可能です。
関連)https://jscsf.org/inspection/inspection002
さらに最新の研究では、非染色下で数ナノメートル単位の解像度での細胞観察が可能な定量位相顕微鏡とAI画像診断を組み合わせ、表面マーカーに依存しない全く新しいCTC選別法の開発も進んでいます。
関連)https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19H03728/
科学研究費助成事業データベース:定量位相顕微鏡とAIを用いた次世代CTC検出法の研究概要(国立情報学研究所)
最新のCTC検査では、捕捉した細胞の表面マーカーを解析し、治療戦略に直結した情報が得られます。 これは組織生検や手術なしに可能になった点で、臨床的なインパクトは非常に大きいです。
関連)https://jscsf.org/inspection/inspection002
主な表面マーカーと臨床的意義を以下にまとめます。
重要な点があります。
従来は手術後あるいは細胞診でがん組織を採取した後でしか、これらのマーカーを測定できませんでした。 CTC検査を活用することで、治療開始前に外来採血のみで情報を得られるようになったのです。特に、臓器切除を伴う手術の適応決定前に分子プロファイルを把握できる点は、患者のQOL保護の観点から重要です。
関連)https://jscsf.org/inspection/inspection002
なお、近年の研究では手術や細胞診でがん組織に傷をつけることで、かえってがん細胞が周囲に転移・拡散しやすくなることも報告されています。 低侵襲なCTC検査がより大きな意義を持つ理由のひとつです。
関連)https://jscsf.org/inspection/inspection002
日本先進医療臨床研究会:微小流路デバイス法CTC検査の詳細(PD-L1・HER2・AR-V7・Vimentinマーカーの臨床的意義を解説)
CTC検査は非常に有望なバイオマーカーですが、限界も正確に理解しておく必要があります。
感度と特異度について言えば、独立した第三者機関による評価では、CTC(がん幹細胞を含む)の検出における感度と特異度はおよそ85%程度とされています。 この数字は画像検査より早期の段階でがんを検出できる可能性を示していますが、100%ではありません。
関連)https://detox.jp/wp-content/uploads/2017/03/db080c5b1cfe6b6853ec40e1b7e8a1cb.pdf
注意すべき点があります。
CTC検査を「早期発見ツール」として紹介する記事は多くありますが、実際の臨床現場でより価値を発揮するのは術後の再発モニタリングでの活用です。これはあまり強調されていない視点です。
これが臨床上のメリットです。
実際の活用シーンとして考えられるプロトコルは次の通りです。
日本医科大学医学会雑誌:CTCの臨床応用に関する総説(転移有無診断・がん治療効果判定・生命予後予測における意義を解説)
関連)https://www.nms.ac.jp/sh/jmanms/pdf/014010031.pdf
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