ジルチアゼムは非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬として、心筋収縮力に対する抑制作用を有しています。重篤なうっ血性心不全患者への投与は、既に低下している心機能をさらに悪化させるリスクが極めて高いため、絶対禁忌とされています。
心不全患者では、心筋の収縮力が低下しており、ジルチアゼムの陰性変力作用により以下のような重篤な症状が発現する可能性があります。
特に左室駆出率が40%以下の患者や、NYHA分類でクラスIII以上の心不全患者では、ジルチアゼム投与により生命に関わる心機能低下を招く危険性があります。
ジルチアゼムは房室結節での刺激伝導を抑制する作用を持つため、既に房室ブロックや洞不全症候群を有する患者への投与は禁忌です。具体的な禁忌対象は以下の通りです。
2度以上の房室ブロック
洞不全症候群の各病態
これらの患者にジルチアゼムを投与した場合、心刺激生成抑制作用と心伝導抑制作用が過度に現れ、以下のような重篤な合併症を引き起こす可能性があります。
ジルチアゼムの成分に対する過敏症の既往歴がある患者への投与は絶対禁忌です。過敏症反応には以下のような症状が含まれます。
また、特定の薬剤との併用も禁忌とされており、以下の薬剤を投与中の患者には使用できません。
併用禁忌薬剤
これらの薬剤とジルチアゼムの併用により、血中濃度の異常上昇や重篤な副作用のリスクが高まるため、代替治療法の検討が必要です。
意外な事実として、ジルチアゼムはCYP3A4酵素を阻害するため、多くの薬剤の代謝に影響を与えます。特にスタチン系薬剤との併用では横紋筋融解症のリスクが増加するため、注意深い観察が必要です。
妊婦または妊娠している可能性のある女性への ジルチアゼム投与は禁忌です。この禁忌設定には以下の理由があります。
胎児への影響
妊娠中の生理学的変化への影響
授乳期においても、ジルチアゼムは母乳中に移行することが知られており、乳児への影響を考慮して投与を避けるべきです。代替治療として、妊娠・授乳期により安全性の高いカルシウム拮抗薬の選択を検討する必要があります。
臨床現場でジルチアゼムの禁忌疾患を見落とすケースが散見されます。特に注意すべき状況と対策について解説します。
見落としやすい禁忌状況
投与前チェックポイント
モニタリング体制
投与開始後も以下の点について継続的な観察が必要です。
特に高齢者では、加齢に伴う心機能低下や伝導障害が潜在的に存在する場合があるため、より慎重な評価が求められます。また、腎機能低下患者では薬物の蓄積により副作用のリスクが高まるため、投与量の調整や投与間隔の延長を検討する必要があります。
ジルチアゼムの禁忌疾患に関する最新の添付文書情報については、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)のデータベースで確認できます。