ソフトコンタクトを装用したままジクアホソル点眼液を使うと、角膜障害リスクがゼロになったわけではありません。
ジクアホソルナトリウム点眼液(ジクアス)は、2010年に発売されたドライアイ治療薬です。 当初の製剤には防腐剤としてベンザルコニウム塩化物(BAK)が含まれており、ソフトコンタクトレンズへの吸着による角膜上皮障害のリスクから、装用中の使用は禁忌とされていました。uchikara-clinic+1
これは厳しい制約でした。
2015年、参天製薬はジクアス点眼液の防腐剤をベンザルコニウム塩化物からクロルヘキシジングルコン酸塩液へ変更し、添付文書の使用上の注意を改訂しました。 この変更により、ソフトコンタクトレンズを装用したままでも使用できるようになりました。
ただし、後発品(ジェネリック)には製品ごとに異なる防腐剤が使われているケースがあります。 処方箋で「ジクアホソルNa点眼液3%」と一般名処方されている場合、患者が受け取る製品の防腐剤組成が先発品と異なる場合があるため、薬局での確認が欠かせません。つまり「ジクアスはコンタクトOK」という一律の説明はリスクを含んでいます。
参考)https://pharmacist.m3.com/column/otc/2140
| 製剤 | 防腐剤 | コンタクト装用中の使用 |
|---|---|---|
| ジクアスⓇ点眼液3%(先発品・2015年以降) | クロルヘキシジングルコン酸塩液 | ✅ ハード・ソフト装用中OK |
| 一部後発品 | 製品ごとに要確認 | ⚠️ 個別に添付文書を確認 |
| ベンザルコニウム含有製剤(旧処方) | ベンザルコニウム塩化物 | ❌ 装用中は使用不可・外してから15分待機 |
ジェネリック処方時は添付文書の確認が条件です。
コンタクトレンズの種類によって、ジクアホソル点眼液の使い方が異なります。これは意外と見落とされがちなポイントです。
参考)ジクアス点眼液3%はコンタクトレンズを装着した上から点眼でき…
ハードコンタクトレンズと1日使い捨て(ワンデー)タイプは、装用中でも問題なく点眼できます。 ワンデーが許容されるのは、装用後に捨てるため成分の蓄積が問題にならないからです。その日1日だけ使うレンズという点が、安全性の根拠です。
2ウィーク・マンスリー・長期装用のソフトコンタクトは状況が異なります。
これらのレンズは水分を多く含むヒドロゲル素材であるため、防腐剤や薬効成分が繰り返しレンズに吸着・蓄積していきます。 結果として角膜に継続的に刺激を与えるリスクが高まります。ジクアスの防腐剤がクロルヘキシジンに変更された後でも、長時間装用のレンズには注意が必要です。
参考)https://asayaku.or.jp/apa/work/data/pb_1596_2.pdf
指導の実務ポイントをまとめます。
患者がどのレンズタイプを使っているか確認するのが最初のステップです。
ドライアイ治療では、ジクアホソルナトリウム(ジクアス)とヒアルロン酸ナトリウム(ヒアレイン)を併用するケースが多くあります。 この2剤を使う場合、点眼する順序が治療効果を大きく左右します。
参考)ジクアスとヒアレイン の点眼順序とコンタクトレンズについて~…
結論から言うと、ジクアスを先に点眼するのが推奨順序です。
ジクアホソルナトリウムには涙液分泌促進作用があり、点眼後5分以内に涙液量が増加します。 このタイミングでヒアルロン酸を点眼すると、増えた涙液でヒアルロン酸が希釈されてしまい、効果が弱まる可能性があります。
推奨される手順は以下のとおりです。
これはドライアイ診療ガイドラインにも記載されている推奨順序です。 ヒアルロン酸は粘膜付着性が高いため、後から点眼することで角膜表面にしっかり留まりやすくなるというメリットもあります。
なお、点眼後に刺激感を訴える患者には、逆順(ヒアレイン→ジクアス)で刺激感が軽減する場合があることも報告されています。 効果と刺激感のバランスを個別に調整する視点が、患者満足度向上に直結します。
ジクアスⓇ点眼液3%の用法は「1回1滴、1日6回」です。 この頻度の高さに戸惑う患者も多く、「乾いたときだけ使えばいい」という誤解が生まれやすい点です。
参考)ジクアス点眼液の効果・副作用を医師が解説【ジクアホソルNa点…
6回という頻度には理由があります。
ジクアホソルナトリウムはP2Y2受容体を刺激し、結膜杯細胞からのムチン分泌と水分分泌を促進することで涙液層を安定化させます。 この作用が持続的に発揮されるためには、規則正しい点眼間隔が重要です。乾燥感が強い時だけ使うのでは治療効果が十分に得られません。
参考)https://ootakuyaku.jp/wp-content/uploads/2022/03/file43.pdf
2019年に発売されたジクアスⓇLX点眼液3%は、1日3回に減少しています。
参考)サンヨード(殺菌・消毒点眼菜)とジクアスLX点眼について勉強…
| 製剤名 | 点眼回数 | 特徴 | コンタクト注意事項 |
|---|---|---|---|
| ジクアスⓇ点眼液3% | 1日6回 | 標準製剤 | ソフトレンズ装用中OK(先発品) |
| ジクアスⓇLX点眼液3% | 1日3回 | 潤い成分追加・粘性あり | 同様に外して点眼推奨のケースあり |
LXは若干トロみがあり、使用感も異なります。 旧ジクアスからLXへ変更した際に違和感を訴える患者もいるため、事前の説明が重要です。点眼回数が半分になる分、服薬アドヒアランスの向上が期待できます。
参考)ジクアス点眼薬とジクアスLX点眼薬の違い - KUSURIn…
医療従事者がジクアホソル点眼液を処方・調剤する際、患者へ伝えるべき内容は複数あります。これは正確に伝えないと、患者が「コンタクトのまま使ってOK」と誤解したまま、不適切なレンズタイプで使い続けるリスクがあります。
指導フレームは「確認→説明→実演依頼」の順が有効です。
ステップ1:使用中のレンズタイプを確認する
「ハードですか、ソフトですか?ソフトなら1日使い捨てタイプですか?」
ステップ2:レンズ種別に応じた説明をする
参考)ジクアホソルNa点眼液3%「ニットー」の効能・副作用|ケアネ…
ステップ3:点眼後の閉瞼と涙嚢圧迫を伝える
点眼後は1〜5分間目を閉じ、涙嚢部(目頭の少し下)を圧迫することで、薬液が鼻涙管へ流れ出るのを防ぎ、眼表面への暴露時間を延ばすことができます。 これはよく省略される指導ですが、効果の最大化に重要です。
ステップ4:他剤との併用時の間隔を伝える
ジクアホソルを含む複数の点眼薬を使用する場合、最低5分間の間隔が必要です。 ヒアレインとの併用ではジクアスを先に点眼するのが推奨順序であることも合わせて伝えると、患者の疑問が一気に解消されます。
指導は「順番と間隔」を図解で渡すと定着率が上がります。
参考情報:服薬指導の実務に役立つ参天製薬の公式Q&Aページです。ジクアスおよびジクアスLXのコンタクト使用に関する詳細な記載があります。
参天製薬 Medical Channel|ジクアス/ジクアスLX よくあるご質問
ドライアイ診療ガイドラインにおけるジクアホソルとヒアルロン酸の点眼順序の根拠について解説された薬剤師向けコラムです。
いなかの薬剤師|ジクアスとヒアレインの点眼順序とコンタクトレンズについて
コンタクトレンズ装用者における点眼薬の防腐剤リスクを薬剤師向けに整理した解説コラムです。
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