体動時痛にオピオイドのベースを増量し続けると、せん妄を招いて患者がさらに動けなくなります。
がんの骨転移では、がん細胞が破骨細胞を過剰に活性化し、骨の構造が壊れていきます。これによって微小骨折、神経圧迫、炎症性サイトカインの放出という三つのメカニズムが重なり、複雑な痛みが生じます。
関連)https://dojin.clinic/column/4970/
骨転移の痛みは大きく三種類に分類されます。
この分類が治療戦略を左右します。
関連)https://www.seirei.or.jp/mikatahara/doc_kanwa/contents1/13.html
持続痛にはオピオイドの定期投与が基本です。一方、体動時の突出痛(incident pain)は、オピオイドのベースを増量しても十分にコントロールできないことが多い。これは多くの現場で見過ごされがちな事実です。
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つまり「痛みの種類」を正確に評価することが原則です。
聖隷三方原病院 症状緩和ガイド:骨転移による突発的な痛みの治療方針(NSAIDs・オピオイド・放射線の使い分けを解説)
オピオイドは、安静時痛が残っている段階では増量が必要です。ただし、目標は安静時痛をNRS(数値評価スケール)で2〜3以下に抑えること。
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ここで重要な注意点があります。体動時痛を根拠にベースを際限なく増量すると、精神症状・傾眠・せん妄のリスクが高まります。実際には「体動するたびに痛い→オピオイド増量→せん妄→さらに体動困難」という悪循環に陥るケースが報告されています。
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オピオイドの選択は以下の通りです。
| 薬剤 | 特徴 |
|---|---|
| モルヒネ(経口・注射) | 汎用性が高い、腎機能低下例には注意 |
| オキシコドン | 便秘が比較的少ない |
| フェンタニル(貼付・粘膜吸収) | 眠気が少なく体動前の予防投与に向く |
突出痛のレスキュー薬には1日量の6分の1程度を頓用します。体動前に予防的に投与する「予防的レスキュー」は、体動時痛が強い患者のQOL改善に有効です。
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モルヒネで眠気が強く出る場合は、フェンタニルへの変更を検討します。これは使えそうですね。
厚生労働省:オピオイド鎮痛薬に反応しにくい痛みへの対応(がん疼痛治療マニュアル)
骨修飾薬(Bone Modifying Agents:BMA)は、骨転移の「痛み止め」ではありません。主な目的は、骨関連事象(SRE:病的骨折、脊髄圧迫、放射線・手術が必要となる事象)のリスクを下げることです。
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ただし、SREを予防することで結果的にQOLと痛みの管理に貢献します。
| 項目 | デノスマブ(ランマーク) | ゾレドロン酸 |
|---|---|---|
| 投与経路 | 皮下注射 | 点滴静注 |
| 投与間隔 | 4週に1回 | 月1回 |
| SRE抑制 | ゾレドロン酸より有意に低下 | 高い根拠あり(乳癌・肺癌・骨髄腫) |
| 低Ca血症リスク | ゾレドロン酸より高い | あり |
| 顎骨壊死(ONJ) | 両剤に報告あり | 両剤に報告あり |
| 腎機能障害例 | 使用しやすい | 用量調整が必要 |
デノスマブはSRE抑制効果でゾレドロン酸を上回るとされますが、低カルシウム血症の発現頻度はより高いです。
関連)https://jbcs.xsrv.jp/guideline/2022/y_index/bq8/
デノスマブ投与時は活性化ビタミンD製剤とカルシウム製剤(デノタスチュアブル配合剤)の内服が必須です。
関連)https://www.seirei.or.jp/mikatahara/doc_kanwa/contents1/13.html
また両剤ともONJ予防のため、投与前に歯科受診・侵襲的歯科処置の完了が推奨されています。
日本乳癌学会ガイドライン:乳癌骨転移へのデノスマブ・ゾレドロン酸の選択根拠(SRE抑制のエビデンス)
薬だけでは痛みが取れないケースがあります。それで大丈夫でしょうか?
実は、骨転移による体動時痛に最も効果的な方法のひとつが放射線治療です。局所照射により、約60〜80%の患者で痛みの改善が得られると報告されています。通院で受けられることが多く、身体的負担も比較的少ない治療です。
関連)https://dojin.clinic/column/4970/
放射線治療の選択肢は以下の通りです。
薬物療法と放射線の組み合わせが、痛みの骨転移管理における標準的アプローチです。
関連)https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00756/
さらに薬が効きにくい場合には神経ブロックも選択肢に入ります。硬膜外カテーテル留置や高周波熱凝固が代表例です。ただし運動神経への影響を慎重に評価する必要があります。
関連)https://www.seirei.or.jp/mikatahara/doc_kanwa/contents1/13.html
脊椎転移では経皮的椎体形成術(PVP:バルーン椎体形成術)も疼痛管理に有効な場合があります。
Minds:骨転移診療ガイドライン改訂第2版(2022年、日本臨床腫瘍学会監修。放射線・BMA・手術の推奨一覧)
骨転移の鎮痛でオピオイドばかりに目が向きがちですが、NSAIDsの定期投与は骨転移疼痛に特に有効です。これは意外ですね。
骨転移では炎症性サイトカインが痛みを増幅するため、COX阻害薬であるNSAIDsが機序的にマッチします。ロキソプロフェンやセレコキシブより、ジクロフェナク(ボルタレン)やケトプロフェン(ロピオン注)が鎮痛効果で優れるとされています。
関連)https://www.seirei.or.jp/mikatahara/doc_kanwa/contents1/13.html
鎮痛効果の強さの目安(臨床ベース)。
NSAIDsには痛みがある間、持続的に効果が血中に維持されるよう工夫した投与設計が求められます。
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アセトアミノフェンの併用(1日2.4〜4g、分3〜4回)も有効な場合があります。特に腎機能が低下した患者では、NSAIDsの代替として優先されます。
ステロイド(ベタメタゾン2〜4mg)も検討に値します。根拠レベルは高くありませんが、神経圧迫や炎症成分が強い痛みには有効なことがあります。
関連)https://www.seirei.or.jp/mikatahara/doc_kanwa/contents1/13.html
NSAIDs・アセトアミノフェン・オピオイドを重層的に組み合わせる多薬物鎮痛が骨転移疼痛の基本です。
デノスマブ初回投与後の骨痛増悪は「薬の副作用(急性期反応)」の可能性を念頭に置き、オピオイドの不用意な増量を避けることが重要です。
高知医療センター:がん疼痛治療マニュアル(NSAIDs・アセトアミノフェン・オピオイドの実践的使い方)