現在日本で使用されている肺炎球菌ワクチンには、主に2種類があります。定期接種で使用される「ニューモバックスNP(23価肺炎球菌莢膜ポリサッカライドワクチン)」と、小児から成人まで幅広く使用される「プレベナー13」です。
ニューモバックスNPは23種類の血清型の侵襲性肺炎球菌感染症を約4割予防する効果があります。より具体的には、全年齢層のIPD(侵襲性肺炎球菌疾患)に対するワクチン効果は45%、65歳以上における効果は39%という研究結果が報告されています。
📊 予防効果の実際
ワクチンの効果は接種後1-2週間で出始めますが、5ヶ月程度で減弱するため、特に感染リスクの高い血液やリンパのがん患者、脾臓摘出患者では再接種が推奨されています。
効果の持続期間や個人差について、年齢、合併症、生活環境によって大きく変わるため、患者個々の状況を考慮した接種指導が重要です。
肺炎球菌ワクチンの副反応は、局所反応と全身反応に大別されます。最も頻度が高いのは注射部位の局所反応で、5%以上の方が経験します。
局所反応(注射部位)
全身反応
注射部位の紅斑、腫脹、発赤は20-30%の方に認められ、これは肺炎球菌ワクチンに限らず注射投与で一定確率で起こる副反応です。全身的な副反応として、発熱、機嫌が悪くなる、うとうとするなどが約10-20%に認められます。
🔍 副反応の特徴
副反応は決して肺炎球菌に感染したわけではなく、不活化ワクチンのため感染することはありません。むしろ免疫反応が起きている証拠として捉えることができます。
稀に報告される重篤な副反応として、以下のものがあります。
重篤な副反応(1%未満)
アナフィラキシーは呼吸困難や全身性のじんましんなどを伴う重いアレルギー反応で、ワクチン接種後30分以内に起こることが多いため、この期間は特に注意深い観察が必要です。
⚠️ 接種後の観察ポイント
ギランバレー症候群は主に四肢の麻痺が生じる疾患で、非常に稀ですが重篤な副反応として報告されています。患者には接種後数日から数週間にわたって、手足の脱力や感覚異常に注意するよう指導することが重要です。
血小板減少による出血傾向や蜂巣炎様反応による局所の炎症拡大なども稀に報告されており、接種後の経過観察と適切な患者指導が不可欠です。
肺炎球菌ワクチンの接種にあたって、以下の方は接種を控える必要があります。
接種禁忌
発熱時や体調不良時は、免疫細胞が他の病原体と戦っている状態のため、ワクチンを接種しても十分な効果を発揮しない可能性があります。そのため、体調が回復してからの接種を推奨します。
特別な注意を要する方
妊娠を希望される方については、ワクチン接種後2ヶ月間の避妊が推奨されているため、ライフプランを考慮した接種時期の相談が必要です。
🏥 定期接種対象者
これらの対象者以外でも、脾摘患者、慢性疾患患者、免疫抑制治療予定患者などは積極的な接種が推奨されています。
肺炎球菌ワクチンの効果は永続的ではなく、時間の経過とともに低下していきます。ニューモバックスNPの場合、接種後1-2週間で効果が出始め、約5ヶ月程度で減弱することが知られています。
効果の持続と減弱
特に感染リスクの高い患者群では、再接種の検討が重要です。血液やリンパのがん患者、脾臓摘出患者を中心に、ワクチンの再接種が推奨されています。
🔄 再接種が推奨される患者
再接種時は初回接種時よりも副反応が強く出る可能性があるため、患者への十分な説明と接種後の観察がより重要になります。また、再接種の間隔については、通常5年以上空けることが推奨されていますが、患者の免疫状態や基礎疾患により個別に判断する必要があります。
効果の持続期間には個人差があり、年齢、基礎疾患、免疫状態などにより大きく異なるため、定期的な抗体価測定や臨床症状の評価を通じて、個々の患者に最適な接種スケジュールを検討することが重要です。
厚生労働省の高齢者肺炎球菌ワクチンに関する詳細な情報
厚生労働省 高齢者の肺炎球菌ワクチン
がん患者における肺炎球菌感染症の予防に関する専門的な情報
がん情報サービス 肺炎球菌感染症Q&A