デオキシコール酸による脂肪溶解注射では、脂肪細胞を破壊する過程で炎症反応が必然的に発生します 。注入部位の腫れや痛み、内出血、熱感などが主要な副作用として報告されています 。これらは薬剤が脂肪細胞の細胞膜を破壊し、分解を促進する際に起こる正常な反応とされています 。
参考)https://coromoclinic.jp/column/deoxycholic-acid-fat-dissolving/
特に注目すべきは、腫れの持続期間の個人差です。一般的には数日から2週間程度で改善しますが、体質や部位によっては2週間程度続くこともあります 。顔やフェイスラインなど目立つ場所では、一時的に輪郭が変わって見える場合もあるため、患者への十分な事前説明が重要です 。
参考)https://and-bg.com/magazine/fat-dissolving-injection-risk/
注射部位にしこりを感じる患者も存在しますが、これは脂肪組織の炎症反応の一環であり、時間とともに改善していくことがほとんどです 。ただし、3日以上持続する場合は医師による診察が推奨されます 。
参考)https://www.ginza-tm-clinic.com/service/fat_dissolving/
デオキシコール酸の濃度と副作用の強さには明確な相関関係が存在します 。脂肪溶解注射で使用される薬剤では、デオキシコール酸の濃度が高いほど脂肪減少効果が高まりますが、同時に腫れや赤みといった副作用も強く出やすくなります 。
参考)https://tsubaki-grp.com/column/mesotherapy-article/mesotherapy-deoxycholic-acid/
現在市販されている製剤の中で、デオキシコール酸が1%よりも高濃度になると痛みや腫れ、炎症などの副作用が大きくなるため、1%以下の濃度が適切とされています 。例えば、FatX coreは上限ぎりぎりの1.0%が配合されており、高い効果を期待できる一方で、より慎重な施術が必要です 。
カベリン(デオキシコール酸濃度0.5%)では浮腫みや腫れが約2-3日と比較的少ないものの、3-5回程度の施術が必要となります 。一方、高濃度製剤では腫れ等の反応が強く出る(最大約2週間程度)が、より少ない回数で効果を発揮する特徴があります 。
参考)http://ginza78clinic.com/blog/%E6%9C%80%E6%96%B0%E3%81%AE%E8%84%82%E8%82%AA%E6%BA%B6%E8%A7%A3%E6%B3%A8%E5%B0%84%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6/
一般的な副作用を超えて、デオキシコール酸注射には重篤な合併症のリスクも存在します 。アレルギー反応では、軽度な発疹やかゆみから、まれに呼吸困難などを伴うアナフィラキシーショックに至るケースも報告されています 。
神経損傷による後遺症は最も深刻な副作用の一つです 。特に顔面や首周りの施術では、重要な神経や血管に近い部位への注射となるため、表情筋を支配する顔面神経への影響により、表情の麻痺や非対称性が生じる可能性があります 。感覚神経の損傷により、しびれや感覚鈍麻が長期間続くケースも報告されています 。
感染症のリスクも軽視できません 。皮膚に針を刺す行為により細菌感染が進行すると、膿が溜まる、皮膚が赤く腫れる、痛みが強まるなどの症状が現れる場合があります 。これらの重篤な副作用を防ぐためには、解剖学的知識が豊富な専門医による施術と、適切な無菌操作が不可欠です 。
デオキシコール酸を含む脂肪溶解注射には明確な禁忌事項が設定されています 。デオキシコール酸や植物成分に対するアレルギー既往がある患者への投与は絶対禁忌とされています 。重篤な肝疾患・腎疾患・免疫不全をお持ちの患者も適応外です 。
参考)https://0thclinic.com/injection/bnls
大豆アレルギー、くるみアレルギー、海藻アレルギーの患者では、製剤に含まれる植物由来成分によってアレルギー反応を起こすリスクがあります 。起立性低血圧やパーキンソン病をお持ちの患者、妊娠中・授乳中の女性も禁忌対象に含まれます 。
参考)https://selectclinic.jp/kaberin/
抗凝固薬を内服中の患者では内出血のリスクが高いため、施術前の休薬について主治医との連携が必要です 。注射予定部位に重度の皮膚感染や腫瘍がある場合も、感染拡大や腫瘍細胞の拡散リスクから禁忌とされています 。
針反応が陽性となる疾患(ベーチェット病・壊疸性膿皮症など)をお持ちの患者では、注射による刺激で病状が悪化する可能性があるため慎重な判断が求められます 。
参考)https://www.ginzabiyou.com/menu/neobella/
従来の研究では短期的な副作用に焦点が当てられることが多いですが、デオキシコール酸の長期使用における安全性については未解明な部分が残されています。胆汁酸の一種であるデオキシコール酸は、本来消化管内で脂肪の乳化に関与する物質ですが、皮下組織への反復注射による長期的な組織変化については十分な検証が行われていません。
近年の研究では、ウルソデオキシコール酸(UDCA)の長期投与において、投与量と改善率の相関性が示されており 、胆汁酸系薬剤の用量依存性が確認されています。この知見から、デオキシコール酸の反復注射では、組織への蓄積や代謝への長期的影響を考慮する必要があります。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/kanzo/52/9/52_9_584/_pdf
特に腎機能への負担については、投与量が多いと腎臓への影響が懸念されるとの報告もあり 、長期的な腎機能モニタリングの重要性が示唆されています。また、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)が神経炎症の抑制に関与するという最近の研究結果 からも、デオキシコール酸の神経系への長期的な影響について、より詳細な検討が必要と考えられます。
参考)https://www.fire-method.com/532/
医療従事者は、これらの不明な長期リスクについて患者に適切に説明し、定期的なフォローアップの重要性を強調することが求められます。