デブリドマン適応熱傷で壊死組織除去術の手術適応

熱傷デブリドマンの適応基準から外科的デブリドマンの手術適応まで、医療従事者が押さえるべき治療判断のポイントをわかりやすく解説。適切なタイミングを見極められますか?

デブリドマン適応熱傷の治療戦略

熱傷デブリドマンの治療概要
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デブリドマンの基本概念

壊死組織の除去による感染予防と創傷治癒促進

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適応評価の重要性

深達度と面積による手術適応の判断

タイミングの最適化

早期介入による予後改善効果

デブリドマン熱傷の適応基準と重症度判定

デブリドマンの適応基準は熱傷深度と面積に基づいて決定される 。III度熱傷においては、ごく小範囲のものを除き、原則としてできるだけ早くデブリードマンが必要となる 。深達性II度熱傷でも薄い壊死組織層が創部表面に見られる場合、小範囲であれば適切な局所外用療法で融解するか、外科的にデブリードマンした後に保存的治療で治癒が可能である 。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/professional/22-%E5%A4%96%E5%82%B7%E3%81%A8%E4%B8%AD%E6%AF%92/%E7%9A%AE%E8%86%9A-%E8%BB%9F%E9%83%A8%E7%B5%84%E7%B9%94%E3%81%AE%E5%87%A6%E7%BD%AE%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E5%B0%8F%E6%89%8B%E8%A1%93/%E7%86%B1%E5%82%B7%E3%81%AE%E3%83%87%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%89%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%81%8A%E3%82%88%E3%81%B3%E3%83%89%E3%83%AC%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%B3%E3%82%B0

 

熱傷の重症度判定には、Artzの基準およびその改変基準(Moylanの基準)が広く用いられている 。重症熱傷の判定基準には、II度30%TBSA以上、III度10%TBSA以上、顔面・手・足のIII度熱傷、気道熱傷の合併、軟部組織損傷や骨折の合併、電撃傷が含まれる 。これらの基準を満たす症例では、デブリドマンを含む積極的な外科的介入が検討されるべきである 。
参考)https://www.jpte.co.jp/customers/medical/JACE/severe-burns/documents/ChukyoHospitalBurnProtocol2021.pdf

 

面積推定には9の法則、5の法則、Lund & Browderの法則が有用であり 、局所的な推定方法として手掌法(成人の手掌は体表の約1%)も実用的である 。
参考)https://www.dermatol.or.jp/dermatol/wp-content/uploads/xoops/files/guideline/nessho2023.pdf

 

デブリドマン熱傷の手術適応タイミングと早期介入

デブリドマンの手術適応において、タイミングは極めて重要な要素となる 。広範囲熱傷患者では、24時間以内の緊急デブリードマンが推奨されており、1週間以内のTotal escharectomy(全焼痂切除)を目標とする 。
参考)https://www.wakayama-med.ac.jp/med/eccm/assets/images/library/journal/04.pdf

 

24時間以内の緊急デブリードマンを考慮する適応には以下が含まれる :


  • III度熱傷が30%を超えるような広範囲熱傷

  • 広範囲でなくてもIV度熱傷、感染創

  • 全周性熱傷

  • 高齢者での積極的なデブリードマン

熱傷後3日以内のデブリドマンは、死亡リスクを大幅に減少させ、皮膚感染のリスクも軽減することが研究で示されている 。早期デブリドマンは感染対策に加えて、ダメージ関連分子パターン(DAMPs)対策としても重要な役割を果たす 。

デブリドマン熱傷の外科的手技と壊死組織除去法

外科的デブリドマンは熱傷治療における基本的手技であり 、できるだけ広い範囲のIII度熱傷部位を、できるだけ短時間で、できるだけ少ない出血で切除することが目標となる 。
参考)https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2007/073011/200718063A/200718063A0004.pdf

 

手術方法には以下の基本原則がある :


  • 手術開始前から室温を30度以上とし、ホットラインやベアハガーを用いて体温管理

  • 出血を最小限に抑えるため、電気メスでのFaschial excision(筋膜上切除)を基本とする

  • 壊死組織が確実に除去できた場合のみ植皮を行い、確証が持てない時は母床形成に務めて二期的創閉鎖を考慮

  • 手術は2時間以内で終了することを目標

従来の外科的デブリドマンに加えて、酵素学的デブリドマン(Enzymatic Debridement)も選択可能な手技として注目されている 。新規熱傷壊死組織除去剤ネキソブリッド®などの薬剤により、選択的な壊死組織除去が可能となっている 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jburn/49/2/49_51/_pdf/-char/ja

 

デブリドマン熱傷における感染管理と予防対策

デブリドマンにおける感染管理は、創傷治癒と患者予後に直結する重要な要素である 。熱傷により全身の20パーセント以上に植皮を行う場合またはA群溶連菌感染症に伴う壊死性筋膜炎の場合においては、デブリドマンは5回に限り算定される 。
参考)https://clinicalsup.jp/jpoc/shinryou.aspx?file=ika_2_10_1_1_1%2Fk002.html

 

熱傷創の感染管理においては、以下の原則が重要である :


  • 受傷初期の熱傷に対する予防的抗菌薬全身投与は画一的には推奨されない

  • 汚染創を有する患者、糖尿病などの易感染宿主、小児例、周術期では個別検討が必要

  • 創培養や施設・地域の特殊性を考慮した標的菌の設定

デブリドマン後の創面管理では、湿潤環境の維持が重要であり、肉芽増生や上皮化を促すために適切なドレッシング材の選択が必要である 。感染を生じた場合は抗菌作用のある薬剤を用いるが、壊死組織に由来する局所性炎症は正常な周辺組織も傷害し、損傷部位の拡大による病態悪化を引き起こすため、早期の壊死組織除去が重要となる 。
参考)https://keisei.kuhp.kyoto-u.ac.jp/ja/contents/burn/

 

デブリドマン熱傷の予後改善と治療効果評価

デブリドマンによる予後改善効果は多方面にわたって評価されている 。特に広範囲熱傷患者において、救命の鍵となるのは速やかに熱傷部位に正常皮膚を植皮することであり 、そのためのデブリドマンは必須の手技である。
予後改善の具体的な効果には以下が含まれる :


  • 死亡リスクの大幅な減少(熱傷後3日以内のデブリドマンで顕著)

  • 皮膚感染リスクの軽減

  • 全身管理の改善(DAMPs対策効果)

  • 入院期間の短縮

広範囲熱傷では貴重な皮膚を温存することを心がけ、初回手術では自家植皮を行わないことを原則とする 。熱傷面積30%以上の場合は、培養表皮用の採皮も同時に考慮される 。
治療効果の評価には、創傷治癒期間、感染発症率、処置時の疼痛、患者満足度、手術必要度、有害事象などの多面的なアウトカムが用いられる 。特に深達性II度またはIII度熱傷においては、早期の選択的壊死組織除去により安全性に問題なく治療効果を得ることが可能である 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jburn/48/1/48_1/_article/-char/ja/