ダトロウェイの副作用には命に関わる重篤なものが報告されており、特に間質性肺疾患(ILD)では死亡例も確認されています。TROPION-Breast01試験において、360例中12例(3.3%)にILDが発現し、そのうち1例(0.3%)がGrade 5(死亡)でした。
参考)https://www.pmda.go.jp/RMP/www/430574/89ae59f3-b85d-48ef-8246-d3ce980ac5f9/430574_42914F9D1024_10_001RMPm.pdf
間質性肺疾患の特徴:
画像パターンによる予後の違い:
ダトロウェイの副作用発現機序は、抗体薬物複合体(ADC)としての特性に起因しています。TROP-2を標的とする抗体にトポイソメラーゼⅠ阻害薬を結合させた構造により、正常細胞への影響も生じます。
間質性肺疾患の発現機序:
機序は明確になっていませんが、薬剤誘発性ILDの一般的リスク因子として以下が挙げられます:
角膜障害の機序:
角膜障害の発現機序は明らかになっていませんが、複数のADCで報告されており、眼表面への薬物蓄積が関与している可能性があります。一般的リスク因子として眼外傷、既存の眼表面障害(ドライアイ)、コンタクトレンズ使用が挙げられます。
ダトロウェイの副作用は多岐にわたり、早期発見が重要です。各副作用の具体的症状と診断基準を把握することで、適切なタイミングでの介入が可能になります。
角膜障害の症状と分類:
TB01試験では角膜炎が67例(18.6%)に発現し、Grade 3以上は2例(0.6%)でした。
口内炎の発現パターン:
口内炎は211例(58.6%)と高頻度で発現し、Grade 3以上は25例(6.9%)でした。発現時期の中央値は22.0日で、初期発現が多い特徴があります。
骨髄抑制の血液学的異常:
副作用に対する適切な治療と管理は、患者の安全性確保と治療継続のために不可欠です。各副作用に応じた標準的な対処法が確立されています。
間質性肺疾患に対するステロイド治療:
角膜障害の予防と治療:
予防的ケアとして人工涙液の毎日複数回(1日6回程度)使用が推奨されます。防腐剤を含まない製剤(ソフトサンティア、なみだロートファイブなど)の使用が重要です。コンタクトレンズの使用は原則として控える必要があります。
口内炎の管理:
標準的な副作用管理に加えて、患者個別の状況に応じた予防的アプローチが重要です。特に、生活習慣の改善や環境因子の調整により、副作用の発現リスクを軽減できる可能性があります。
栄養状態と免疫機能の最適化:
低アルブミン血症は14例(3.9%)で認められており、栄養状態の維持が重要です。タンパク質摂取の確保、ビタミンD補充、亜鉛などの微量元素の適正化により、粘膜バリア機能の維持と創傷治癒促進が期待できます。
環境調整による角膜障害予防:
室内湿度の調整(50-60%維持)、エアコンの直風回避、ブルーライトカット眼鏡の使用により、眼表面への物理的刺激を軽減できます。また、睡眠時の眼軟膏使用や加湿器の併用も効果的です。
口腔マイクロバイオームの調整:
プロバイオティクス製剤の使用により口腔内細菌叢を調整し、口内炎の重症化予防が期待されます。特に乳酸菌製剤やビフィズス菌製剤の併用により、炎症性サイトカインの産生抑制効果が報告されています。
ダトロウェイの副作用管理には、医療従事者と患者の密接な連携が不可欠です。定期的なモニタリング、早期症状の認識、適切な治療介入により、重篤な副作用を予防し、患者のQOL維持と治療継続を実現できます。
参考)https://datroway.jp/assets/files/P202412-053-00.pdf