ビラノア(ビラスチン)は、第二世代抗ヒスタミン薬に分類される比較的新しいアレルギー治療薬です。国内の臨床試験では、675例中16例(2.4%)に副作用が報告されており、その発現率は比較的低いことが確認されています。
主な副作用としては以下が報告されています。
これらの数値からわかるように、ビラノアは他の抗ヒスタミン薬と比較して眠気の副作用が非常に少ないという特徴があります。この特性は、日中の活動や車の運転など、集中力を必要とする作業を行う必要がある患者さんにとって大きなメリットとなります。
しかし、「絶対に眠くならない」わけではないことに注意が必要です。特に疲労時やアルコール摂取後には、抗ヒスタミン薬の眠気が強く出る可能性があるため、そのような状況下では注意が必要です。
その他にも報告されている副作用には、以下のようなものがあります。
これらの副作用は頻度が低く、多くの患者さんにとって忍容性の高い薬剤であると言えます。
ビラノアの有効成分であるビラスチンは、体内のヒスタミンH1受容体に選択的に結合し、ヒスタミンの作用を阻害する薬剤です。ヒスタミンはアレルギー症状を引き起こす重要な物質であり、これをブロックすることで、以下のようなアレルギー症状を緩和します。
ビラノアの大きな特徴は、脳内への移行性が低いことです。第一世代の抗ヒスタミン薬は脳内の中枢神経系にあるヒスタミン受容体にも作用するため、強い眠気を引き起こしました。一方、ビラノアを含む第二世代の抗ヒスタミン薬は血液脳関門を通過しにくく、中枢神経系への影響が最小限に抑えられています。
さらに、ビラノアは第二世代の抗ヒスタミン薬の中でも特に中枢神経系への影響が少ないとされており、自動車運転能力を評価する試験でも影響が認められなかったという報告があります。
効果の発現は服用後比較的早く現れ、1日1回の服用で24時間効果が持続します。これにより、朝1回の服用で1日中アレルギー症状をコントロールすることが可能です。
臨床試験では、ザイザル(レボセチリジン)と同等の抗アレルギー効果を示しながら、眠気などの副作用が少ないことが確認されています。
ビラノアを最大限に効果的に使用するためには、適切な服用方法を守ることが重要です。以下に正しい服用方法と注意点をまとめます。
【用法・用量】
【重要な注意点】
これらの薬剤はビラノアの血中濃度を上昇させ、副作用のリスクが高まる可能性があります
ビラノアのOD錠は、錠剤を飲み込むことが難しい方でも服用しやすいという利点があります。口に入れるとすぐに溶けるため、水がなくても服用可能です。これは高齢者や嚥下困難のある方に適しています。
なお、ビラノアの薬価(2024年時点)は、錠剤・OD錠ともに1錠あたり53.2円となっています。ジェネリック医薬品は現在のところ発売されていません。
抗ヒスタミン薬は、第一世代と第二世代に大きく分類されます。ビラノアは第二世代に属しますが、同じ第二世代の中でも特徴が異なります。ここでは、ビラノアと他の主な抗ヒスタミン薬を比較してみましょう。
【抗ヒスタミン薬の世代による分類】
【第二世代抗ヒスタミン薬の比較】
臨床試験の結果から、ビラノアはザイザルと同等の抗アレルギー効果を持ちながら、眠気などの副作用が少ないことが示されています。特に自動車運転や機械操作など、注意力を必要とする作業を行う患者さんにとって、ビラノアの「眠気が少ない」という特性は大きなメリットとなります。
また、ビラノアは口の渇きなどの抗コリン作用も比較的弱いため、高齢者にも使いやすい薬剤と言えるでしょう。ただし、空腹時に服用する必要があるという制約があります。
アレルギー性鼻炎治療におけるアドヒアランスを考慮した第二世代抗ヒスタミン薬の選択と指導(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)
このリンクでは、各種抗ヒスタミン薬の特性と選択基準について詳細な情報が掲載されています。
ビラノアは比較的安全性の高い薬剤ですが、まれに重篤な副作用が発現することがあります。こうした副作用を早期に発見し、適切に対処することが重要です。
【報告されている重大な副作用】
その他、報告は少ないものの注意すべき副作用として以下のようなものがあります。
これらの重篤な副作用は発現頻度が非常に低いものの、発現した場合は早急な対応が必要となります。特にアレルギー体質の方や、過去に薬剤によるアレルギー反応を経験したことがある方は、初回服用時に特に注意が必要です。
【副作用が疑われる場合の対処法】
副作用の早期発見のために、服用開始後は体調の変化に注意を払うことが大切です。特に初めて服用する場合は、自宅など安全な環境で服用し、しばらく経過を観察することをお勧めします。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)では、副作用が疑われる場合の報告システムを設けています。医療関係者だけでなく、患者さんからの報告も受け付けているため、重篤な副作用を経験した場合は報告することが、医薬品の安全性向上に貢献します。
医薬品副作用被害救済制度について(PMDA)
このリンクでは、重篤な副作用が発現した場合の救済制度について詳細な情報が掲載されています。
以上、ビラノアの副作用と効果について詳しく解説しました。ビラノアは眠気などの副作用が少なく、1日1回の服用で効果が持続するという利点を持つ抗ヒスタミン薬です。ただし、空腹時に服用する必要があることや、まれに重篤な副作用が発現する可能性があることなど、適切な使用のために知っておくべき注意点もあります。
アレルギー症状でお悩みの方は、ご自身の症状や生活スタイル、他の合併症や服用中の薬剤などを考慮して、医師や薬剤師と相談の上、最適な抗ヒスタミン薬を選択することをお勧めします。