「アレジオン」と名のつくジェネリックでも、コンタクトのまま使うと角膜障害を起こす製品があります。

なぜほとんどの点眼薬はソフトコンタクトレンズ装用中に使えないのか。その鍵は「ベンザルコニウム塩化物(BAC)」という防腐剤にあります。
BACは広い抗菌スペクトルを持ち、多くの眼科用薬に防腐剤として配合されています。問題はソフトコンタクトレンズとの相性で、含水性の高いソフトレンズはBACを吸着・蓄積しやすい素材です。レンズにBACが蓄積されると、角膜と長時間接触し続けることで角膜上皮細胞を障害するリスクが生じます。
BACは陽イオン性の界面活性剤でもあるため、マイナスに帯電しているソフトレンズ素材に電気的に引き寄せられます。通常の涙液洗い流しだけでは除去しきれない点が、臨床上の問題になります。
つまり「コンタクト装用中は外すように」が原則です。
アレジオン点眼液(先発品・エピナスチン塩酸塩)は2014年12月にBACをホウ酸に置き換えた処方設計に変更しました。この変更により、ソフトコンタクトレンズ・ハードコンタクトレンズいずれも装用したまま点眼できる、事実上唯一の処方抗アレルギー点眼薬となっています。変更前(2014年11月以前)は他の点眼薬と同様に「点眼前に外し、5分以上後に再装用」の制限があったため、この製剤変更は花粉シーズンにコンタクトを常用する患者にとって大きな利便性向上でした。
参天製薬(製造元)のMedical ChannelにおけるFAQでも「ハードコンタクトレンズ、ディスポーザブルタイプを含むソフトコンタクトレンズとも、装用中の点眼は可能と考える」と明記されています。ただし、あくまでアレルギー性結膜炎の「病状が軽く、コンタクト装用を継続しても問題ないと医師が判断した患者」に対しての話である点は押さえておく必要があります。
参天製薬Medical ChannelのアレジオンFAQ(医療従事者向け公式情報)。
アレジオン / アレジオンLX | Santen Medical Channel
「アレジオンのジェネリックなら同じでしょう」という思い込みが、服薬指導の落とし穴になります。
有効成分が同一でも、防腐剤(添加物)はメーカーによって異なります。アレジオン先発品および参天アイケアのAG品(「SEC」)はBAC非含有のため、コンタクト装用中の点眼が可能です。一方、エピナスチン塩酸塩点眼液「ニットー」など一部のジェネリックにはBACが含有されており、ソフトコンタクトレンズ装用中の使用はできません。
処方箋で「エピナスチン塩酸塩点眼液0.05%(後発品可)」と記載されている場合、調剤薬局でどの製品に変更されたかによって、コンタクト装用可否が変わります。これは患者にとっては「名前が同じだから大丈夫」という誤認に直結する問題です。
コンタクト装用中の可否を確認するための方法は1つ:添付文書の「適用上の注意」欄でBAC含有の有無を確認することです。
アレジオンLX(0.1%)のジェネリックについても同様です。製品によってBAC含有製品と非含有製品が混在しており、「LX=コンタクト可」とは一概に言えません。患者がジェネリックに変更になった際には、必ず添付文書の確認と患者への再説明が必要です。これが原則です。
薬剤師向けの実務情報として、エピナスチン点眼液の製品別コンタクト可否をまとめたリファレンスも公開されています。
【薬剤師向け】主な抗アレルギー点眼薬一覧とコンタクトレンズ装用可否|ファーマラボ
ソフトコンタクトは問題ないのに、カラコンはなぜダメなのか。この違いに気づいていない医療従事者も多いです。
参天製薬の公式FAQでは次のように明示されています。「アレジオン点眼液0.05%およびアレジオンLX点眼液0.1%のカラーコンタクトレンズへの影響は検討していないため、装用中の点眼は避けてください」。これは先発品・AG品を問わず適用されるルールです。
理由はカラーコンタクトレンズに含まれる着色素材(色素)と点眼成分の相互作用が未検討であるためです。色素がレンズ内に固定化されているものの、外部から液剤が浸透した際の影響(変色・変形・成分の予期しない蓄積)について、安全性データが存在しません。つまり「安全であると証明されていない」状態です。
患者側の認識では「コンタクトのまま使える」と医師から説明を受け、カラコンをつけたままさしてしまうケースが起こり得ます。処方箋を受け取った薬局での確認が重要です。
服薬指導時には、「ソフトレンズはOKですが、カラーコンタクトレンズの場合は外してから点眼してください」と一言添えるだけで、患者の混乱とリスクを防げます。これは使えそうな知識です。
カラコン装用中に使用可能な点眼薬の正しい選び方についての情報。
【Q】カラーコンタクトレンズに使用できない目薬がある理由は?|クローズドアイ
点眼方法の指導まで行って、はじめて服薬指導が完結します。
アレジオン点眼液(先発品・BAC非含有ジェネリック)をコンタクト装用中に使用する場合の手順は次の通りです。まず、清潔な手で容器の先端が目に触れないよう注意しながら点眼します。点眼後は1〜5分間、閉瞼して涙のう部を圧迫します。これにより薬剤の全身への移行を最小限に抑えられます。点眼後、液が眼瞼皮膚についた場合はすぐにふき取ります。
複数の点眼薬が処方されている場合は、5分以上の間隔を空けます。点眼薬は水溶性→懸濁性→ゲル化→油性の順で使用するよう指導します。
アレジオン点眼液0.05%は1日4回(朝・昼・夕方・就寝前)、アレジオンLX点眼液0.1%は1日2回(朝・夕)が用法です。コンタクトを日中装用している患者には、LXの方が点眼回数が少なくアドヒアランスが維持しやすいというメリットを伝えると効果的です。
患者さんの中には「花粉シーズンだけ内科でもらった薬を使っている」という方もいます。そのような場合、処方時にコンタクト装用の有無を確認し、適切な製品選択と指導を行うことが重要です。アレルギー性結膜炎の治療ガイドラインでは、コンタクトレンズ装用自体が抗原(花粉・ハウスダスト)を目に持ち込むリスクがあるため、治療中は装用中止を原則としていますが、業務上外せない場合は主治医と相談したうえでアレジオン等の適切な製剤を選択することが推奨されます。
日本眼科学会「アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン(第3版)」による治療方針の詳細。
日本眼科学会 アレルギー性結膜疾患診療ガイドライン 第3版(PDF)
「コンタクトを外さなくていい」という一文が、治療継続率に影響を与えた可能性があります。
2014年12月のアレジオン点眼液の添付文書改訂以前、コンタクトを常用するアレルギー性結膜炎患者が直面していた問題は「目がかゆいのに、点眼のたびにコンタクトを外さなければならない」という手間でした。職場での点眼が難しい・コンタクトを外す場所がない・外すのが面倒で点眼をスキップする、といった理由で服薬が中断されるケースは少なくありませんでした。
参天製薬が実施した季節性アレルギー性結膜炎患者へのアンケート調査(2013年)では、点眼薬に期待することとして「効果が長続きする」が64%、「点眼回数が1日2回」が43%と回答しており、効果の持続性と利便性へのニーズが非常に高いことが示されています。アレジオンLXの開発背景にも、この調査結果が反映されています。
コンタクト装用のまま使えることは、単なる利便性ではありません。アドヒアランスの維持、すなわち治療の継続性に直結します。医師や薬剤師が「コンタクトのままでいいですよ」と一言伝えるだけで、患者の点眼継続率が上がる可能性があります。
逆に言えば、ジェネリックに切り替えた際に「コンタクトのままでいいですよ」という説明を変えずにいると、BAC含有製品でも装用中に点眼するリスクが生じます。処方変更・後発品切り替え時の再説明は見落とされがちですが、実は非常に重要なポイントです。意外ですね。
製剤変更とアドヒアランスの関連については、実際にアレジオン0.05%のソフトコンタクトレンズ装用中の安全性・有効性を検討した臨床報告(渡邉潔ほか:臨床眼科70, 535, 2016 / 亀澤比呂志ほか:アレルギー・免疫23, 1390, 2016)でも支持されており、現場での服薬指導の根拠として活用できます。
花粉症シーズンに向けた抗ヒスタミン点眼薬の完全ガイドとして、各薬剤の特徴比較が掲載された薬剤師向け情報。
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