アイソタイプ(ISOTYPE: International System Of Typographic Picture Education)は、1936年にオーストリア出身の哲学者オットー・ノイラートによって開発された視覚言語システムです。このシステムは、統計情報や社会科学の概念を視覚的に表現することを目的として作られました。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%82%A4%E3%82%BD%E3%82%BF%E3%82%A4%E3%83%97
医療分野におけるアイソタイプの概念は、興味深いことに抗体の分類においても使用されています。抗体のアイソタイプとは、ヒトの場合5つのタイプに分かれる抗体の構造的違いを指し、IgG、IgA、IgM、IgD、IgEという種類があります。これは視覚的デザインとは異なる用法ですが、「型の違い」という概念の共通性を示しています。
参考)https://takashiogawa.jp/?p=1406
医療現場でアイソタイプの考え方が活用される場面として、統計データの可視化があります。例えば。
ピクトグラムは、言語や文化の壁を超えた情報伝達ツールとして医療現場で重要な役割を果たしています。東邦大学医学部の横井郁子教授が開発した「医療看護支援ピクトグラム」は、2008年に旭川赤十字病院で実際に導入され、患者の生活情報を多職種で共有する革新的なツールとなりました。
参考)https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/y2009/PA02827_04
医療現場でのピクトグラム活用例。
特に診療科ピクトグラムの開発は、高齢者や外国人患者にとって視認性が高く、理解しやすい情報提供を可能にします。これらのピクトグラムは「コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則(JIS T 0103)」に基づいて開発されており、標準化された品質を保っています。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssdj/60/4/60_4_45/_pdf
両者の根本的な違いは、その目的と表現方法にあります。
アイソタイプの特徴。
ピクトグラムの特徴。
医療分野では、どちらも「視覚的コミュニケーション」という共通の目標を持ちますが、使用場面が異なります。アイソタイプは研究発表や統計報告において、ピクトグラムは日常的な患者ケアや案内において力を発揮します。
アイソタイプの理念は現代のインフォグラフィックスに受け継がれ、医療分野でも積極的に活用されています。特に新型コロナウイルス感染症のパンデミック期間中、統計データの可視化が重要な役割を果たしました。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/jamt/69/4/69_20-71/_article/-char/ja/
現代医療におけるアイソタイプ系統の活用。
アイソタイプの「国際的な視覚言語」という理念は、現在のグローバル化した医療環境において特に重要です。多様な背景を持つ患者や医療従事者が共通して理解できる視覚的表現は、医療の質と安全性向上に貢献します。
医療現場でアイソタイプ系統の表現とピクトグラムのどちらを選択するかは、以下の基準で判断できます。
アイソタイプ系統を選ぶべき場面。
ピクトグラムを選ぶべき場面。
医療従事者として理解すべき重要なポイントは、これらの視覚的コミュニケーションツールが単なる装飾ではなく、患者の安全と医療の質向上に直接貢献する重要な手段であることです。適切な選択と使用により、言語や文化の違いを超えた効果的なコミュニケーションが実現できます。
現代医療においては、両者の特性を理解し、目的に応じて使い分けることが、より質の高い医療提供につながります。デジタル化が進む医療環境において、これらの視覚的表現手法の重要性はますます高まっていくでしょう。
新型コロナウイルス感染症における抗体検査とアイソタイプの関連性についての詳細研究
医療看護支援ピクトグラムの開発と実際の運用事例