心電図で診断されたWPW症候群の約半数は無症候性です。
関連)https://www.shouman.jp/disease/details/04_06_006/

WPW症候群では、先天的に心房と心室の間に副伝導路(Kent束)が存在します。Kent束は正常伝導路である房室結節よりも速く電気信号を伝導するため、心室が早期に興奮します。この早期興奮が心電図に3つの特徴的所見を生み出します。
関連)https://drgawaso.com/wpw%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4wolff-parkinson-white-syndrome/
第一の特徴はデルタ波です。デルタ波はQRS波の立ち上がりがなだらかになる現象で、Kent束を介した興奮と正常伝導路を介した興奮が心室で融合することで形成されます。つまり副伝導路が基本です。
関連)https://www.cardiac.jp/view.php?lang=ja&target=wpw_synd.xml
第二の特徴はPQ時間の短縮で、0.12秒以内になります。Kent束由来の興奮が正常伝導路の興奮より早く心室に到達するため、PR間隔が本来よりも短くなります。
関連)https://www.hcc.keio.ac.jp/en/health/2017/05/wpw-wolff-parkinson-white-syndrome.html
第三の特徴はQRS幅の延長(0.12秒以上)です。ケント束由来の興奮と正常伝導路由来の興奮が心室で合流し、幅広いQRS波を形成します。
関連)https://psuken-opp.com/ecgwpw/
これらの所見により、WPW症候群は一見すると脚ブロックに類似した波形を示すことがあります。しかしデルタ波の存在とPQ時間の短縮が脚ブロックとの鑑別点になります。
関連)https://heart-clinic.jp/wpw%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4
小児慢性特定疾病情報センター:WPW症候群の心電図診断基準について詳細な解説
副伝導路の位置によって、WPW症候群はA型、B型、C型の3つの病型に分類されます。この分類はカテーテルアブレーション治療の標的部位を決定するために重要です。
関連)https://maruoka.or.jp/cardiovascular/cardiovascular-disease/wolff-parkinson-white-syndrome/
A型WPW症候群では、Kent束が左側(左室側壁や左側後中隔)に位置します。心電図上の特徴はV1誘導でデルタ波が陽性、左側胸部誘導でデルタ波が陽性となります。
関連)https://maruoka.or.jp/cardiovascular/cardiovascular-disease/wolff-parkinson-white-syndrome/
B型WPW症候群では、Kent束が右側(右室自由壁や右側後中隔)に存在します。V1誘導でデルタ波が陽性、左側胸部誘導でデルタ波が陰性という所見を示します。結論はV1の見方です。
関連)https://maruoka.or.jp/cardiovascular/cardiovascular-disease/wolff-parkinson-white-syndrome/
C型WPW症候群は比較的稀な病型で、Kent束が心臓の中隔領域に位置します。A型やB型と異なる特徴的なデルタ波の形態を呈します。
関連)https://maruoka.or.jp/cardiovascular/cardiovascular-disease/wolff-parkinson-white-syndrome/
各病型の判定にはV1誘導に着目することが重要です。V1誘導でのデルタ波の極性と左側胸部誘導での所見を組み合わせることで、おおまかな副伝導路の位置を同定できます。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.18885/HV.0000001092
より詳細な副伝導路の位置同定には、電気生理学的検査を用いた各種アルゴリズムが活用されます。特にアブレーション治療を検討する際には、精密な位置情報が治療成功率に影響します。
関連)https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000400/
WPW波形を示す患者の少なくとも半数は無症状です。心電図で診断された時点で約半数の方が頻拍発作の経験が一度もないという事実は、臨床現場で見落としやすい盲点です。
WPW波形(心室早期興奮波形)はデルタ波とPR間隔短縮を特徴とする心電図所見であり、1,000人に1人程度の頻度で認められます。つまり決して稀ではありません。しかし心室早期興奮を呈する患者の多くは頻脈性不整脈をきたすことなく、生涯無症状のままです。
年齢は症状出現のリスク因子になります。あるコホート研究では40歳未満の無症候性WPW症候群の患者の約1/3が最終的に症状を呈した一方で、診断時に40歳以上であった患者では症状を呈したケースはなかったと報告されました。40歳が条件です。
無症候性であっても心房細動のリスクを伴うため、定期健診やスポーツ心電図で偶然デルタ波が見つかった場合には精密検査が必要です。心房細動はWPW症候群の患者で比較的多く(20~30%)合併します。
関連)https://cloud-dr.jp/medical-navi/disease/1356/
無症候性WPW症候群の管理には、リスク評価のために電気生理学的検査を検討する場合があります。特に若年者や競技スポーツに参加する患者では、突然死リスクの層別化が重要になります。
マーブル色の医学的な結晶知:無症候性WPW症候群の疫学データと長期予後の詳細
WPW症候群で最も頻度が高く合併しやすい頻脈性不整脈は房室回帰性頻拍(AVRT)で、約80%を占めます。AVRTでは副伝導路が旋回路の一部として利用されます。
AVRTには順方向性(orthodromic AVRT)と逆方向性(antidromic AVRT)の2つのタイプがあります。順方向性AVRTがAVRTの約90%を占めます。
関連)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_20958
順方向性AVRTでは、心房→房室結節を順伝導→心室→Kent束を逆伝導→心房の順で興奮が旋回します。頻拍中の心電図の特徴として、幅の狭いQRS波(narrow QRS頻拍)が規則正しく出現し、QRS直後に逆伝導のP波を認めます。つまりデルタ波は認めません。
関連)https://www.shouman.jp/disease/details/04_06_006/
頻拍レートは速く(150-220/分)なります。WPW症候群の症状は発作性上室性頻拍(PSVT)による症状で、「突然脈が速くなり」「突然停止する」ことが最大の特徴です。動悸や息切れが一般的です。
安静時心電図でWPW症候群のΔ波を認めない例で、逆伝導のみの副伝導路による頻拍(房室回帰頻拍)を認めることがあり、これを潜在性WPW症候群と呼びます。潜在性例では順行性伝導がないため、安静時にはデルタ波が出現しません。
関連)https://www.shouman.jp/disease/details/04_06_006/
房室回帰性頻拍の根治にはカテーテルアブレーションが有効で、副伝導路(Kent束)を標的にします。頻拍を根治させることができるのが最大の利点です。
関連)https://kompas.hosp.keio.ac.jp/disease/000400/
WPW症候群に心房細動が合併すると、偽性心室頻拍(pseudo VT)という危険な状態になります。心房細動時のQRS幅は広く、心拍数は200/分以上となります。いいことではありません。
関連)https://med.toaeiyo.co.jp/contents/cardio-terms/disease/3-51.html
心電図は幅広いQRS頻拍(wide QRS tachycardia)でRR間隔が不規則になり、明瞭なデルタ波を認めます。これがWPW症候群に伴う心房細動(偽性心室頻拍)の特徴です。
関連)https://note.com/li_fe_igaku/n/nf6a5a8cb3cf0
この状態は心室細動に移行する可能性があり、突然死の原因となることがあります。WPW症候群は心室早期興奮による特異的な心電図を有し、その頻拍発作である発作性心房細動は、まれに心室細動へ移行し突然死の原因となることがあります。厳しいところですね。
関連)https://med.toaeiyo.co.jp/contents/cardio-terms/disease/3-51.html
心房細動合併時には、副伝導路を介して極めて速い心室応答が生じるため、通常の心房細動とは異なる対応が必要です。特に房室結節抑制薬(ベラパミル、ジルチアゼム、ジゴキシン)は副伝導路の伝導を促進し、心室細動を誘発する危険があるため使用を避けます。
頻拍発作が繰り返される場合や、失神・心停止の既往がある場合は、治療介入が強く推奨されます。カテーテルアブレーションによる副伝導路の焼灼が根治治療となります。
関連)https://cloud-dr.jp/medical-navi/disease/1356/
合併リスクの評価には、電気生理学的検査で副伝導路の不応期を測定することが有用です。不応期が短い(250ms未満)場合、心房細動合併時に極めて速い心室応答を来す可能性が高く、突然死リスクが上昇します。このような高リスク例では、無症候性であってもアブレーション治療を検討します。
東亜栄養循環器用語ハンドブック:WPW症候群の頻拍発作と偽性心室頻拍の詳細な病態生理
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