「クラリスロマイシン単剤投与は、MAC感染症を悪化させる最大の引き金になります。」
参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_955

肺MAC症(Mycobacterium avium complex感染症)の薬物治療において、クラリスロマイシン(CAM)・リファンピシン(RFP)・エタンブトール(EB)の3剤併用が標準レジメンとして確立されています。 クラリスロマイシンが使いにくい場合には、アジスロマイシン(AZM)への切り替えも選択肢となります。
参考)肺MAC症
重要な原則がひとつあります。
CAM単剤治療は絶対に行ってはならない。 CAMはMAC症に対して唯一、単剤でも有効な薬剤ですが、単剤投与では数ヶ月以内にCAM耐性菌を誘導します。 CAM耐性化は予後不良因子として報告されており、耐性を生じさせないことが治療上の最重要目標のひとつです。
参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_955
病勢が強い症例では、初期にストレプトマイシン(SM)またはカナマイシン(KM)の注射・点滴を併用することがあります。 難治性症例ではアミカシン(AMK)吸入療法の追加も選択肢に含まれます。
参考)肺MAC症
| 薬剤 | 略称 | 投与経路 | 役割 |
|---|---|---|---|
| クラリスロマイシン | CAM | 内服 | 中核的抗菌薬(必須) |
| リファンピシン | RFP | 内服 | 多剤との相乗効果 |
| エタンブトール | EB | 内服 | 耐性化抑制 |
| ストレプトマイシン/カナマイシン | SM/KM | 注射 | 初期強化(重症例) |
| アミカシン吸入 | AMK | 吸入 | 難治性・再治療例への追加 |
「菌が消えてから治療を終了する」という感覚は、実際の医療現場とは大きくズレています。
学会指針では、喀痰培養陰性化後に最低12ヶ月間の治療継続が必要とされています。 つまり、培養が陰性になってからがスタートラインではなく、まだ治療の折り返し地点にすぎません。
参考)知って得する病気の話_肺非結核性抗酸菌症について(呼吸器科)…
空洞を有する症例では、さらに長期の継続が推奨されます。 総計2〜3年の治療期間になることも珍しくありません。
参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_955
これは患者への説明でも重要です。「薬を飲んで楽になったから終わり」ではない、ということです。
多くの医療従事者は「診断がついたら即治療」と考えがちです。しかし実際には、そうではありません。
肺MAC症は、患者によっては治療しなくてもほぼ無症状で経過することがあります。 特に結節気管支拡張型の場合、画像変化や症状が乏しい段階では、経過観察を選択することが合理的な戦略になりえます。
この「治療しない」という判断は、患者の年齢・基礎疾患・症状・画像所見・患者本人の意向を総合的に評価した上で行われます。それぞれに個別化された医療の視点が必要です。
副作用が出たとき、安易に治療を中断してはいけません。これが現場での大きな落とし穴です。
副作用が起きても、減感作療法などの工夫によって2剤以上の治療継続を目指すことが推奨されています。 主な副作用と対処のポイントは以下の通りです。
参考)https://www.jmedj.co.jp/blogs/product/product_955
副作用の程度によっては一時的な休薬・減量が必要ですが、可能な限り多剤維持を目指すことが治療効果の維持に直結します。治療を「あきらめない」姿勢が患者の予後を左右します。
参考:副作用管理を含む薬物療法の詳細については、日本結核病学会・日本呼吸器学会合同の「肺非結核性抗酸菌症診療マニュアル」が包括的な指針を提供しています。
2025年末、注目すべき研究結果が発表されました。
現行ガイドラインは結核治療を模範とした3剤以上の同時多剤投与を推奨していますが、この標準療法には「毒性・アドヒアランス不良・低い治癒率」という3つの課題が内包されています。 これらの課題を背景に、単剤逐次投与(薬剤を順番に切り替える方法)が多剤併用と同等の効果を示す可能性が示唆されています。
同等の効果があるということですね。
これが臨床的に検証されれば、治療の忍容性が大きく改善される可能性があります。特に副作用で多剤継続が困難な患者にとっては、朗報になりえます。ただし現時点では研究段階であり、標準治療を変更する根拠としては不十分です。
また、近年はマクロライド系薬への薬剤耐性の問題が深刻化しています。 マクロライド耐性MAC菌が増加しており、標準治療が効きにくい症例も増えてきています。難治例に対する新薬の開発や、アミカシン吸入製剤「アリケイス」のような新剤形の登場が、この領域に新たな選択肢をもたらしつつあります。
参考)せきや痰が長引く場合は要注意! 国内で急増中の「肺MAC症」…
参考:アミカシン吸入製剤(アリケイス)の詳細な使用ガイド
アリケイス治療ガイド(患者向けPDF、治療の流れを詳細解説)
参考:肺MAC症の患者数増加と治療の課題についての解説
非結核性抗酸菌によるやっかいな感染症の治療法を見つけたい(名城大学)
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