在宅酸素療法適応基準と厚生労働省が定める対象疾患と保険点数

在宅酸素療法の適応基準は厚生労働省が厳密に定めていますが、PaO2の数値だけで判断していると導入機会を逃すケースがあることをご存知ですか?

在宅酸素療法の適応基準・厚生労働省が定める対象疾患と保険点数

SpO2が88%以上でも、あなたがHOTを処方しないと患者が毎月7,680円分の医療費を自費で払い続けます。


在宅酸素療法(HOT)適応基準 3つのポイント
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数値基準

動脈血酸素分圧(PaO2)が55mmHg以下、または60mmHg以下で睡眠時・運動時に著しい低酸素血症を認める場合が保険適用の対象。SpO2換算で88%以下が目安。

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対象疾患

高度慢性呼吸不全(COPD・間質性肺炎など)、肺高血圧症、慢性心不全、チアノーゼ型先天性心疾患の4カテゴリが厚生労働省告示に明記されている。

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診療報酬点数

在宅酸素療法指導管理料は2,400点。酸素濃縮装置加算4,000点などを合わせると月に最大7,671点(76,710円)が算定できる。


在宅酸素療法の適応基準:PaO2とSpO2の数値を正確に理解する


在宅酸素療法(HOT:Home Oxygen Therapy)の保険適用基準は、厚生労働省告示に基づいて明確に定められています。 核心となる数値は動脈血酸素分圧(PaO2)55mmHg以下という閾値です。


関連)https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/ip/studygroup/k13djp00000001hn-att/k13djp00000001s6.pdf


ただし、この数値だけが基準ではありません。


PaO2が55mmHgを超えていても、60mmHg以下かつ睡眠時または運動負荷時に著しい低酸素血症を来す場合も保険適用対象になります。 この「60mmHg以下+負荷時低酸素血症」の条件は、安静時のSpO2だけを測定している現場では見落とされやすいポイントです。見落としに注意が必要です。


関連)https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/ip/studygroup/k13djp00000001hn-att/k13djp00000001s6.pdf


SpO2での換算目安は88%以下が基準とされています。 パルスオキシメーターが普及した現在、SpO2 88〜90%前後の患者に動脈血ガス分析を施行し、PaO2の正確な値を把握することが適応判断の第一歩となります。


関連)https://www.jrs.or.jp/citizen/faq/q29.html


以下に数値基準を整理します。
























PaO2(mmHg) SpO2換算目安 保険適用条件
55以下 88%以下 安静時のみで適用
55超〜60以下 88〜90%前後 睡眠時または運動負荷時の著しい低酸素血症が確認された場合に適用
60超 90%超 原則として保険適用外


PaO2が60mmHgを境界域にある患者では、6分間歩行試験や夜間のSpO2モニタリングが適応判断を左右します。これが条件です。


関連)https://gm-katayama-clinic.com/blog/hot


<参考:動脈血ガス分析の基準値と臨床的意義(日本呼吸器学会)>
日本呼吸器学会|在宅酸素療法についてのQ&A(保険適用基準の解説)


在宅酸素療法の対象疾患:慢性呼吸不全以外にも4カテゴリが存在する

「HOT=COPD」というイメージを持っている医療従事者も少なくありませんが、厚生労働省の告示では対象疾患は4つのカテゴリに分かれています。 これは意外ですね。


関連)https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/ip/studygroup/k13djp00000001hn-att/k13djp00000001s6.pdf


厚生労働省が定める保険適用の対象疾患カテゴリは以下の通りです。



各カテゴリで適応の厳密な要件が異なります。 特に慢性心不全の場合、「心不全の治療を最大限に行った上でなお低酸素血症が残存する」という条件が加わることが多く、内科的加療の十分な実施が前提です。


関連)https://www.lab.toho-u.ac.jp/med/omori/ip/studygroup/k13djp00000001hn-att/k13djp00000001s6.pdf


また、間質性肺炎(特発性肺線維症:IPF)は、COPDと比較して安静時PaO2が基準以上でも労作時に急激に酸素が低下するケースが多く、基準の数値だけで判断すると適応を見逃す危険性があります。 労作時のモニタリングが重要だということです。


関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.34433/J00697.2023029169


最近では、2024〜2026年の診療報酬改定で在宅ハイフローセラピー(在宅高濃度酸素療法)が新たな保険適用として登場しました。 これは常時FiO2 60%以上を必要とする重度の低酸素血症患者が対象で、従来のHOTとは区別されます。 新しい選択肢が増えたということです。


関連)https://snow-ce.blogspot.com/2026/03/2026.html


<参考:肺高血圧症・慢性心不全へのHOT適応についての詳細>
在宅酸素療法(HOT)の目的・適応・効果・注意点(医師監修)


在宅酸素療法の診療報酬:算定点数と月間費用の内訳

HOTを導入した場合の診療報酬は、指導管理料に各種加算を合わせた構成になっています。 点数の組み合わせで月間算定額が大きく変わります。


関連)copd/oxygen/07.html">https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/copd/oxygen/07.html


主な算定項目と点数は以下の通りです(1点=10円)。







































算定項目 点数 月額換算(10円/点)
在宅酸素療法指導管理料 2,400点 24,000円
酸素濃縮装置加算 4,000点 40,000円
携帯用酸素ボンベ加算 880点 8,800円
呼吸同調酸素供給器加算 291点 2,910円
在宅酸素療法材料加算 100点 1,000円
合計(酸素濃縮器+携帯ボンベ) 7,671点 76,710円


患者の自己負担は負担割合によって異なります。 1割負担であれば月約7,680円、3割負担では月約23,000円前後が目安になります。


関連)https://kaigo.homes.co.jp/manual/healthcare/medical_practice/HOT/


なお、酸素濃縮器は電気代が別途発生します。 機器のランニングコストも含めて患者に事前説明しておくと、導入後のトラブルを防げます。それが大切です。


関連)https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/copd/oxygen/07.html


液体酸素を使用する場合は酸素濃縮装置加算の代わりに設置型液体酸素装置加算(3,970点)が適用されます。 携帯型液体酸素との組み合わせで、長時間外出する活動的な患者に向いているという特徴があります。


関連)https://www.erca.go.jp/yobou/zensoku/copd/oxygen/07.html


<参考:HOTの診療報酬詳細>
環境再生保全機構|在宅酸素療法の社会保険適用基準と費用(詳細な点数表)


在宅酸素療法の適応基準と保険適用基準の乖離:現場で知っておくべきグレーゾーン

重要なポイントがここにあります。現行のHOT保険適用基準はCOPD患者のデータをベースに設計されたものであり、他疾患への適用には医学的な適応判断と保険上の適応基準に乖離が生じている場合があります。


関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.34433/J00697.2023029169


具体的には以下の3つのシチュエーションが臨床上の問題になりやすいです。


  • 📌 間質性肺炎の患者:安静時PaO2が60mmHgを超えているが、6分間歩行後に急激にSpO2が低下する。保険適用基準ギリギリで、負荷時データが必要になる
  • 📌 肺癌の終末期患者:がんによる二次性の呼吸不全で基準を満たすが、「高度慢性呼吸不全例」の枠組みで適用可能かの判断が主治医に委ねられる
  • 📌 慢性心不全の患者:最適な内科的治療を行った後でも低酸素が残存しているかどうかの文書化が算定の際に重要になる


つまり、数値が基準を満たすかどうかだけでなく「どの疾患カテゴリに属し、その条件を文書として残しているか」が保険審査対応上の鍵になります。


関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.34433/J00697.2023029169


カルテへの記載として、①適応疾患名、②導入時のPaO2値、③睡眠時・運動負荷時の低酸素の有無、④処方した流量と時間を明記しておくと、審査対応がスムーズです。これが原則です。


<参考:HOT保険適用基準と実際の医学的適応の乖離に関する論文>


在宅酸素療法の導入フローと医療従事者が確認すべき安全管理の要点

HOTの導入は「適応の判断」で終わりではありません。導入前から導入後のフォローアップまでを一貫して管理することが、医療従事者に求められる役割です。


関連)https://gm-katayama-clinic.com/blog/hot


導入から管理までの標準的なフローは次のとおりです。


1. 適応評価:動脈血ガス分析による PaO2 確認、6分間歩行・夜間SpO2モニタリング
2. 処方・機器選択:安静時・労作時・睡眠時の必要流量を設定。酸素濃縮器か液体酸素かの選択
3. 患者・家族への指導:使用方法、緊急時連絡先、火気厳禁の徹底
4. 診療報酬の算定:指導管理料・各種加算の記録と請求
5. 定期的なフォローアップ:月1回の外来受診が原則。流量の再評価と機器のメンテナンス確認


特に安全管理で最も重要なのが火気厳禁です。 高濃度酸素吸入中に喫煙すると、チューブや衣服に引火して重度の火傷や住宅火災の原因になります。 これは厳しいところですね。


関連)https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000003m15_1.html


厚生労働省は、酸素濃縮装置等の使用中は装置の周囲2メートル以内に火気を置かないことを明確に指示しています。 HOT導入時の患者指導では、この「2メートルルール」を具体的に伝えることが事故防止につながります。


関連)https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000003m15_1.html


また、患者が「少し調子が良くなったから」と自己判断で流量を下げるケースがあります。これは禁物です。流量変更は必ず医師の指示に基づいて行うように指導することが、不適切な管理を防ぐ重要な一歩になります。


<参考:火気の取扱いに関する厚生労働省の指示>
厚生労働省|在宅酸素療法における火気の取扱いについて(公式通知)




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