気管支拡張症では、気管支が拡張し元に戻らないため、気管支の浄化機能が低下します。その結果、黄色や緑色の粘性の強い痰が大量に出ることが特徴です。また、咳や血痰、呼吸困難、発熱、胸の痛みもよくみられます。これらの症状は慢性の炎症と感染の繰り返しによるもので、患者の生活の質に大きな影響を与えます[1][3]。
気管支拡張症の原因は多岐にわたり、先天的なものや乳幼児期の重度の呼吸器感染症、肺結核や塵肺、肺化膿症の後遺症として発症することがあります。気管支の慢性的な炎症により気管支壁が破壊され、不可逆的な拡張が生じます。好中球を中心とした炎症細胞の浸潤が病態の中心であり、これが慢性炎症を促進します[6]。
治療は症状の緩和と進行抑制が目的で、去痰薬による痰の排出促進、抗菌薬による感染症の予防・治療、吸入ステロイドや気管支拡張薬の使用が一般的です。マクロライド系抗生物質の少量長期投与は炎症抑制効果も期待されます。血痰や喀血がある場合は止血剤の投与や、重症例では気管支動脈塞栓術や外科的切除が検討されます[1][3][5]。
体位排痰法や胸部理学療法(胸部軽打法など)は気管支内の分泌物を除去し、感染リスクを減らします。ネブライザーを用いた吸入療法も効果的です。呼吸リハビリテーションは呼吸機能の維持・改善に寄与し、息切れや呼吸困難の軽減に役立ちます。これらは治療の重要な柱であり、患者のQOL向上に貢献します[1][4][5]。
気管支拡張症は完治が難しいため、患者自身による日常的な自己管理が不可欠です。具体的には、定期的な痰の排出、感染症の早期発見と対処、禁煙や環境の整備による刺激物の回避が推奨されます。また、ワクチン接種(インフルエンザ、肺炎球菌など)による感染予防も重要です。これらの対策は医療機関での治療と併せて症状の悪化防止に大きく寄与します。医療従事者は患者教育を通じてこの自己管理支援を強化すべきです。
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