WAGR症候群の子どもは50%がウィルムス腫瘍を発症します

ウィルムス腫瘍(腎芽腫)は小児の腎原発悪性腫瘍の90%を占める最も頻度の高い腎悪性腫瘍です。小児悪性固形腫瘍全体では神経芽腫に次いで発生頻度が高く、15歳未満の小児がん全体の約4~5%を占めています。
関連)https://mgen.ncgm.go.jp/disease/88
日本における年間発生頻度は約70~100例と推測され、米国の年間約500例と比較して人口比を考慮しても発生率が低い傾向にあります。毎年約50例が日本小児外科学会悪性腫瘍委員会に登録されているという報告もあります。
関連)https://www.shouman.jp/disease/details/01_05_030/
発症年齢は75%が5歳未満で診断され、約半数が3歳までに発症します。性別ではやや女児に多い傾向が認められます。つまり乳幼児期の腎腫瘍では最優先で鑑別すべき疾患です。
関連)https://ganjoho.jp/public/cancer/kidney_tumor/about.html
米国では15歳未満の小児100万人当たり年間約7例の発生率となっています。これは東京都の15歳未満人口約150万人に換算すると年間10例程度の発生数に相当します。
関連)https://minerva-clinic.or.jp/genetictesting/genetic-disease/a/wilms-tumor/
ウィルムス腫瘍は腹部腫瘤の触知により発見されることが最も多く、これが典型的な初発症状となります。通常は他に症状のない一見健康な小児に腹部腫瘤として現れるのが特徴的です。
関連)https://grj.umin.jp/grj/wtp.htm
腹痛、発熱、貧血、血尿、高血圧といった症状が罹患児の25~30%にみられます。これらの症状はすべての患者に出現するわけではありません。高血圧が小児に認められた場合、腹部腫瘤の有無を確認することが重要です。
関連)https://mgen.ncgm.go.jp/disease/88
腫瘍はかなり大きく成長するまで発見されない場合がありますが、大半は他の部位に転移する前に発見されます。早期には無症状のことが多いですね。
関連)https://www.childrenscancers.org/57
腹部腫瘤の大きさは症例によって様々ですが、触診で容易に触知できるサイズに達していることが一般的です。定期健診での腹部触診が早期発見につながる可能性があります。
ウィルムス腫瘍は組織学的検査評価でのみ確定診断が可能であり、画像検査だけでは確定できません。生検または手術で得られた検体による病理診断が必須となります。
関連)https://mgen.jihs.go.jp/disease/88
画像診断では腹部超音波検査とCT検査が主体となります。超音波検査は非侵襲的で小児に適用しやすく、スクリーニングや経過観察に有用です。CT検査では腫瘍の広がりや転移の評価が可能です。
関連)https://cancerinfo.tri-kobe.org/summary/detail_view?pdqID=CDR0000062789
特徴的な画像所見として、石灰化は少なく5~9%にのみ認められます。これは他の腎腫瘍との鑑別点となります。石灰化が多い場合は他の疾患を考慮すべきです。
関連)https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.11477/mf.1413902570
ハイリスク群のスクリーニングでは、少なくとも8歳になるまで3ヵ月ごとに腹部超音波検査を実施することが推奨されています。ベックウィズ-ヴィーデマン症候群やWAGR症候群などの過成長症候群を持つ小児が対象です。
関連)https://cancerinfo.tri-kobe.org/summary/detail_view?pdqID=CDR0000062789
腎芽腫の病期分類は手術または生検で得られた結果を基本として、I期からV期に分けられます。浸潤・転移の有無(腫瘍の広がり)によって病期が決まり、病期ごとに標準的な治療が実施されます。
関連)https://ganjoho.jp/public/cancer/kidney_tumor/treatment.html
I期およびII期の予後良好な組織型の患者に対する治療は18週間で十分であり、III期およびIV期の患者に対しては6ヵ月の治療が行われることがあります。以前は15ヵ月の治療が行われていましたが、治療期間の短縮が可能になっています。
関連)https://cancerinfo.tri-kobe.org/summary/detail_view?pdqID=CDR0000062789&lang=ja
組織学的分類では予後良好型と予後不良型に分類され、これが治療方針の決定に重要な役割を果たします。予後良好型が大部分を占めます。
片側性(片側のみ)が通常ですが、約5~7%が両側性に発生します。両側性の場合は治療戦略が異なり、両側の腎機能を温存する工夫が必要です。同時性かつ両側性の腫瘍が症例の約5%にみられます。
ウィルムス腫瘍を発症する素因が有意に高い小児として、ベックウィズ-ヴィーデマン症候群、WAGR症候群、Denys-Drash症候群、散発性無虹彩症などが知られています。これらの症候群を持つ患者では定期的なスクリーニングが必要です。
関連)https://cancerinfo.tri-kobe.org/summary/detail_view?pdqID=CDR0000062789
WAGR症候群の子どもは約50%がウィルムス腫瘍を発症するという高いリスクがあります。これはWT1遺伝子の突然変異によって引き起こされ、WAGR症候群を引き起こす遺伝子異常の領域内にこのWT1遺伝子が存在します。
リスクが高い症候群の小児に対しては、少なくとも8歳になるまで3ヵ月ごとに超音波検査によるスクリーニングを実施することが推奨されます。早期発見が治療成績の改善につながります。
関連)https://grj.umin.jp/grj/wtp.htm
一方でCDKN1C遺伝子の病的バリアントがみられる小児にはウィルムス腫瘍の定期検査は不要とされています。遺伝子型によってスクリーニング方針が異なるということですね。
関連)https://grj.umin.jp/grj/wtp.htm
これらの遺伝性症候群を診断した際には、小児腫瘍専門医と遺伝カウンセリングの連携が重要です。家族への説明と定期的なフォローアップ体制を構築することで、早期発見・早期治療が可能になります。遺伝学的検査の適応についても個別に検討する必要があります。
ウィルムス腫瘍の予後は近年著しく改善しており、適切な治療を受けた場合の全生存率は約90%に達します。これは小児がんの中でも治療成績が非常に良好な部類に入ります。
関連)https://www.apollohospitals.com/ja/diseases-and-conditions/wilms-tumor
早期に診断され適切な治療を受けることが高い治癒率を得る鍵となります。腫瘍の進行度や小児の全般的な健康状態など、様々な要因によって予後は異なります。治療法の進歩により治癒率はさらに改善傾向にあります。
関連)https://kateinoigaku.jp/disease/24
再発は診断後2年以内に起こることがほとんどです。この期間の注意深い経過観察が必要ですね。
関連)https://www.mypathologyreport.ca/ja/diagnosis-library/nephroblastoma-wilms-tumor/
治療成績の向上により、現在では治療期間の短縮も可能になっています。I期およびII期の予後良好な組織型では18週間の治療で十分であり、III期およびIV期でも6ヵ月の治療が標準となってきています。以前の15ヵ月と比較して大幅な短縮です。
関連)https://cancerinfo.tri-kobe.org/summary/detail_view?pdqID=CDR0000062789&lang=ja
長期生存者に対しては、治療後の晩期合併症のモニタリングが重要です。化学療法や放射線療法による心血管系、腎機能、二次がんなどのリスク評価を継続的に行う必要があります。定期的な診察と検査を怠らないことが大切です。
関連)https://kateinoigaku.jp/disease/24
小児慢性特定疾病情報センター - ウィルムス腫瘍の詳細情報
診断基準や医療費助成制度についての公的情報が掲載されており、患者家族への説明資料として活用できます。
国立がん研究センター がん情報サービス - 腎芽腫(ウィルムス腫瘍)
治療方針や病期分類に関する最新のエビデンスに基づいた情報が整理されており、医療従事者向けの参考資料として有用です。
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