あなたの「脱水だけ」は危ないです。

赤血球増多症の原因を最初に整理するなら、相対的赤血球増加症と絶対的赤血球増加症に分けるのが基本です。相対的は実際の赤血球量が増えていないのに、脱水や血漿量低下でヘモグロビンやヘマトクリットが高く見える状態です。つまり見かけの増加です。
絶対的赤血球増加症は、本当に赤血球量が増えている群です。この中に、骨髄増殖性腫瘍としての真性多血症と、低酸素血症やEPO過剰産生に伴う二次性赤血球増加症が入ります。分類をここで外すと、その後の検査もずれやすいです。
実臨床では、健診の「Hb高値」をそのまま多血症と受け取ってしまう場面があります。しかしWHO基準では、男性はヘマトクリット49%超またはヘモグロビン16.5g/dL超、女性はヘマトクリット48%超またはヘモグロビン16.0g/dL超が目安です。結論は基準確認です。
参考になる基準値と3分類の整理です。
https://www.ncgg.go.jp/hospital/iryokankei/letter/101.html
真性多血症は、造血幹細胞側の異常で赤血球産生が過剰になる病態です。済生会の解説では、真性多血症のほとんどの症例でJAK2遺伝子変異がみられるとされ、国立長寿医療研究センターの解説でも95%にJAK2変異が認められるとされています。ここが大きな分岐です。
見逃したくないのは、赤血球だけでなく白血球や血小板の増加を伴うことがある点です。顔面紅潮、結膜充血、皮膚瘙痒、脾腫、肢端紅痛症などが並ぶと、単なる脱水では説明しにくくなります。つまり骨髄由来です。
さらに真性多血症では、過粘稠により脳梗塞、心筋梗塞、下肢静脈血栓症などが初発となることがあります。国立長寿医療研究センターは、60歳以上または血栓症既往ありを高リスクとしており、瀉血はヘマトクリット45%未満を目標に行うとしています。血栓予防が原則です。
JAK2、骨髄、血栓リスクまで一度に確認できる参考です。
多血症 (たけつしょう)とは
二次性赤血球増加症では、EPO増加が中心の仕組みです。低酸素血症があると腎でEPOが増え、骨髄が刺激されて赤血球産生が進みます。ここは教科書通りです。
原因として重要なのは、呼吸不全、心不全、睡眠時無呼吸症候群、慢性の低酸素血症です。済生会は低酸素血症の原因として呼吸不全や心不全、睡眠時無呼吸症候群を挙げ、長寿医療研究センターは二次性の代表として喫煙と慢性低酸素血症を示しています。低酸素評価が条件です。
EPO産生腫瘍も忘れにくいように整理しておくべきです。済生会では、腎細胞がん、肝細胞がん、髄膜腫が具体例として示されています。画像検査に進む理由が見える名前です。
この場面での対策は、原因を絞ることです。低酸素の見逃しを減らしたいなら、SpO2確認と睡眠時無呼吸の問診を先に行い、その後にEPOや画像検査へ進むと無駄が少なくなります。順番が大事ですね。
喫煙は「ついでに聞く項目」ではありません。国立長寿医療研究センターは、二次性赤血球増加症で最も多いのは喫煙によるものと明記しており、一酸化炭素とヘモグロビンの結合で酸素供給が低下し、その代償として赤血球増多が起こると説明しています。意外に重い論点です。
一方、相対的赤血球増加症の原因としては、脱水、血漿量低下、ストレス多血症が挙げられます。済生会も、相対的多血症の原因として脱水、ストレス、喫煙を記載しています。脱水だけでは終われません。
医療従事者でも、夏場の再検で改善した経験から「今回も脱水だろう」と寄せてしまうことがあります。しかし喫煙者で高値が続く、あるいはSpO2低下やいびき歴が重なるなら、二次性の精査に寄せるほうが安全です。あなたなら問題ありません。
この場面で役立つのは、問診の固定化です。喫煙本数、禁煙歴、いびき、日中傾眠、利尿薬、飲酒、発熱や下痢の有無をテンプレート化しておくと、再現性の高い初期評価につながります。これは使えそうです。
参考)二次性赤血球増多症 - 11. 血液学および腫瘍学 - MS…
原因検索を効率化するなら、問診と身体所見のあとに、JAK2とEPOをどこで使うかを意識すると整理しやすいです。済生会では、喫煙歴、睡眠時無呼吸、呼吸器疾患、心疾患の確認、脱水と脾腫の評価、SpO2、血清EPO、JAK2変異確認、必要時の骨髄検査や画像検査が挙げられています。順序立てが重要です。
真性多血症を考えるなら、低EPOとJAK2変異、さらに骨髄所見が支えになります。二次性を考えるなら、高EPO、低酸素の背景、喫煙やOSA、腫瘍の存在が軸です。つまり分岐の軸は2本です。
参考)真性多血症 診断の手引き - 小児慢性特定疾病情報センター
独自視点として強調したいのは、「検査値の高さ」より「背景の整合性」を見ることです。例えばヘマトクリット高値でも、白血球や血小板も増えて脾腫があるなら真性多血症寄りですし、喫煙と日中傾眠が前面なら二次性寄りです。数値だけ覚えておけばOKです。
見逃し回避のための実務的な一手もあります。初診や健診後対応で迷いやすい場面では、血液内科紹介の前に「Hb/Htの再確認、SpO2、喫煙歴、いびき歴、EPO、JAK2候補」を1枚メモにしておくと、紹介状の質が安定します。紹介の質が患者の時間短縮につながります。
参考)https://www.msdmanuals.com/ja-jp/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%A0/13-%E8%A1%80%E6%B6%B2%E3%81%AE%E7%97%85%E6%B0%97/%E9%AA%A8%E9%AB%84%E5%A2%97%E6%AE%96%E6%80%A7%E7%96%BE%E6%82%A3/%E8%B5%A4%E8%A1%80%E7%90%83%E5%A2%97%E5%A4%9A%E7%97%87
チオビタドリンク 100ml×50本 [指定医薬部外品]