ラモトリギンの最も重要な禁忌は、本剤の成分に対する過敏症の既往歴がある患者への投与です。この禁忌の背景には、致命的な皮膚障害のリスクがあります。
特に注意すべき皮膚障害として以下が挙げられます。
2014年9月から12月の4ヶ月間だけで、ラモトリギンによる重篤な皮膚障害により4例の死亡が報告されました。これらの症例はいずれも用法・用量が遵守されておらず、皮膚障害発現後も投与が継続されていました。
重篤な皮膚障害の早期発見のため、以下の症状に注意が必要です。
これらの症状が認められた場合は、直ちに投与を中止し、適切な処置を行う必要があります。
ラモトリギンは多様な神経精神疾患に対して効果を発揮する抗てんかん薬です。具体的な適応症は以下の通りです。
てんかんに対する単剤療法
他の抗てんかん薬との併用療法
双極性障害
ラモトリギンの作用機序は、電位依存性ナトリウムチャネルの阻害による神経細胞の過剰興奮抑制です。また、グルタミン酸の放出を抑制することで、てんかん発作や双極性障害の気分変動を制御します。
日本国内では約37万6000人の患者に使用されており、その有効性は多くの臨床試験で確認されています。
ラモトリギンは維持用量に向けて漸増が必要な薬剤であり、併用薬に応じて投与スケジュールが大きく異なります。
バルプロ酸ナトリウム併用時の注意点
バルプロ酸はラモトリギンのグルクロン酸抱合を阻害するため、血中濃度が上昇します。そのため、通常の投与量では中毒症状を引き起こす可能性があります。
併用薬別の血漿中濃度データ。
小児における投与
小児では重篤な皮膚障害の発現率が成人より高いことが示されています。体重あたりの投与量で管理し、より慎重な経過観察が必要です。
小児の併用薬別投与量。
投与スケジュールの遵守は皮膚障害の予防において極めて重要であり、2015年のブルーレター発出後、用法・用量の厳格な遵守が強く求められています。
ラモトリギンの薬物動態は個体差が大きく、特に肝機能障害患者では注意深い用量調整が必要です。
健康成人における薬物動態パラメータ
肝機能障害時の薬物動態変化
肝硬変患者では血漿中濃度が著明に上昇し、半減期が延長します。
Child-Pugh分類Cの重度肝硬変では、健康成人の約3.6倍の血中濃度となるため、大幅な用量減量が必要です。
グルクロン酸抱合による代謝が主要な消失経路であるため、肝機能の評価は治療開始前および治療中の定期的な実施が推奨されます。
ラモトリギンの副作用は皮膚障害以外にも多岐にわたります。長期投与における安全性管理は治療継続の重要な要素です。
主要な副作用(頻度別)
高頻度(5%以上)。
中頻度(1-5%)。
低頻度(1%未満)。
妊娠・授乳期への影響
動物実験ではラットにおいて胎児への移行が確認されています。ラモトリギンはジヒドロ葉酸還元酵素に対して弱い阻害作用を有するため、妊娠中の投与では胎児奇形のリスクが懸念されます。
ヒト最大用量400mg/日の0.12倍以上の投与量で以下の影響が報告されています。
長期投与時のモニタリング
長期投与では以下の項目の定期的な評価が推奨されます。
特に治療開始から8週間以内は皮膚障害の発現リスクが高いため、患者・家族への十分な説明と緊密な経過観察が不可欠です。
PMDAの安全性速報:ラモトリギンの重篤な皮膚障害に関する詳細な症例報告と対策
愛媛大学医学部附属病院:ラモトリギンの適切な処方と投与スケジュール管理